J1・18クラブ中、監督交代があったのは6チーム。今季からJ1に参入する東京ヴェルディ1969などについては次回に譲るとして、今回はFC東京、横浜F・マリノス、大宮アルディージャという日本人の新指揮官たちに焦点を当ててみたい。

まず最大の注目はFC東京・城福浩監督。ご存知の通り、昨季のU-17ワールドカップ(韓国)で日本代表を率いた熱血指導者だ。U-17代表時代も「中途半端な特徴がある選手より、懸命に走ってくれる選手の方がいい」と話し、フォア・ザ・チーム精神を重視してきた。柿谷曜一郎(C大阪)や水沼宏太(横浜FM)はそんな中から育ってきた。「人とボールの動くサッカー」を標榜するのは当時と同じ。選手たちには骨惜しみしない献身的な走りと素早い攻守の切り替えを求める。それを実践するため、自分のコンセプトに合わない福西崇史(現東京V)や鈴木規郎(神戸)、馬場憂太(千葉)らを次々と放出。羽生直剛のようなガムシャラに走れる選手を集めた。そんな補強を見ても、城福監督の意志の強さがうかがえる。

実際、都城キャンプでも厳しい要求は徹底されたようだ。平山相太や梶山陽平らU-23代表はアメリカ遠征で途中離脱したものの、彼らのような「頭打ち感」の強かった選手が化ければ、チーム全体が大きく変わる可能性を秘めている。もともと東京にいる選手たちは各年代でトップを走ってきたメンバーばかり。ポテンシャルは相当にある。そういう部分を引き出せれば、上位進出もムリな話ではない。

指揮官自身「FC東京が今までやってきたことと大きく軌道修正するつもりでやらないと何も変わらない」と発言。日々、情熱的な始動を続けているようだ。が、現在のところは新外国人のカボレ、エメルソンがフィットせず、チーム作りが遅れている。「U-17の時もそうだったけど、結果はすぐにはついてこない。辛抱しながら地道にやっていくしかない」と城福監督は話しているが、いつになったら意図するサッカーが形になるのか。指揮官の我慢はまだまだ続きそうだ。それでも劇的な化学変化が起きる可能性の今年のFC東京は非常に興味深いといえる。

桑原、樋口両監督はJでそれぞれに指揮を執った経験がある。桑原監督といえば、97年にジュビロ磐田を初の年間王者に導き、かつての黄金時代のベースを作った指導者として知られる。その後は浜松大などで指導をしていたが、Jクラブを率いるのは2004年の磐田以来4シーズンぶりとなる。大らかな人柄で選手たちにはアニキとして慕われ、磐田時代は成功した。が、今年60歳になるだけに、選手との距離は明らかに離れてしまっている。特別なカリスマもないだけに、個性派集団の横浜をまとめるのは大変だろう。

「ここまでキャンプとかで準備を進めてきたけど、痛かったのは中澤佑二と山瀬功治が日本代表に行ってしまい、ほとんど合流できなかったこと。彼らの存在なくして今年のチームは語れない」と指揮官は頭を痛めている。そんな中でも2年目の乾貴士や長谷川アーリア、小宮山尊信ら伸び盛りの選手たちは少しずつレベルアップしている。かつて磐田時代に若手を育てた手腕を新天地でも発揮できれば、桑原監督の掲げる「3位以内で優勝争い」という目標に届くかもしれない。

大宮の樋口監督は横浜で長い間、育成畑を歩いてきた指導者だ。ジュニアユース時代の中村俊輔(セルティック)にも指導した経験を持つ。プロ監督に転身したのは2006年。モンテディオ山形の指揮官になったのが最初だった。しかしその山形では財政難もあって、1年目が8位、2年目が9位。チームの目覚しい躍進を示すことができなかった。そんな実績不足の樋口監督が未経験のJ1の舞台に参戦してきたのは驚きに値する。

大宮は2004〜2006年に率いた三浦俊也監督(現札幌)の後、2007年はピム・ファーべク豪州代表監督の実弟であるロベルト・ファーべク監督が就任した。が、後半戦スタート直前に突然の指揮官交代があり、佐久間悟強化部長が監督になった。その結果、何とかJ1残留を果たしたが、チームの抜本的な改革に着手しなければならない時期にきていた。そこでテクニカルアドバイザーに就任した佐久間氏がS級ライセンス取得時の同期である樋口監督に白羽の矢を立てたのだ。

とはいえ、樋口監督の采配、手腕はまだまだ未知数の部分が多い。チーム関係者は「今年はJ1昇格後、最もいい準備ができた」と話すが、いきなり上位に食い込めるとは思えない。カリスマ性のない樋口監督がチームの中核をなすベテラン選手をどこまで納得させられるのか。頭から結果が出れば結束力は高まるだろうが、逆になった場合は厳しい。いずれにしても3〜4月の成績が指揮官の今後を大きく左右しそうだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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