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October 4, 2017 11:30 AM /

Week 8 - ユナイテッドチャントの差別問題を巡って

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Week 8 -ユナイテッドチャントの差別問題を巡って


問題
●一部のマンチェスター・ユナイテッドサポーターが、先月のエヴァートン戦やサウサンプトン戦で歌ったチャントが話題に。
●その対象は新加入FWのロメル・ルカクだが、内容が人種差別的ではないかという騒ぎに。
●エヴァートン戦の後に炎上して、「Kick It Out」やクラブがチャントをやめるよう要求した。そして本人も「故意じゃないのは良く分かっているけど」やめるようお願いした。
●しかし、サウサンプトン戦でも聞こえたので、ユナイテッドは歌った人を特定するべく、サウサンプトンにセキュリティカメラの映像提供をお願いした。

チャント内容
●Romelu Lukaku
He's our Belgian scoring genius
With a 24-inch penis
●ロメル・ルカク
我々の、ベルギー人の天才点取り屋
ペニスも24インチ(約61cm)だ

歌ったサポーターの意図
●確かに下品の内容だが、見方を応援する立場だし、その男を褒めるつもりで歌った。
●つまり、男性器は大きいほど自慢できる、という考え方で、ルカクの男らしさを褒めているとの発想だ。

問題視される理由
●「黒人=男性器が大きい」というステレオタイプがある。
●人の人種を見て、「○○人だからこの特徴だ」と言うのは、仮に良いつもりであっても、差別であろう。
●ただ、多少の賛否両論もある。

元ユナイテッドMFのPaul Inceは「自分なら笑えた」という
●"I don't think the chant is racist.
「私は、あのチャントがレイシストではないと思う。」
●"I honestly think it's a group of fans that have got carried away and did not expect the backlash they have got.
「一部のファンたちがただ調子に乗っていただけで、こんなに炎上されると思っていなかっただろう。」
●"For a player to hear that sung about themselves, I do think they'd think it was amusing, a bit of a laugh.
「選手として、あんなことを歌われたら面白いと思って笑えるだろう。」
●"If this chant was being sang at me when I was playing, I would just laugh it off and that would be it."
「私が現役時代に同じチャントを歌われたら、普通に笑えたし、それで終わる。」

出典:The Sun紙


記事を深読み:良いステレオタイプは存在しない
Marina Hyde、The Guardian紙
※ 第1段落は皮肉で、このようなチャントを平気で歌う人の立場を取っている。
●Why is it racist to say Jews are careful with their money? Why is it racist to say Asians are good at maths? Why is it racist to say black men have 24-inch penises? Guys, these are compliments! Your lot are never satisfied, are they?
ユダヤ人がお金に繊細、と言ってなぜ人種差別なのか?アジア人が計算が得意、と言ってなぜ人種差別なのか?黒人男性のペニスが24インチ、と言ってなぜ人種差別なのか?みんな、これは褒め言葉なのよ!いくら褒められたって褒められ足りないでしょ?
●And so to some Manchester United fans' chants about their striker Romelu Lukaku, which a totally encouraging number of people simply cannot see are racist. To be super-clear (and apologies to those who realised this in 1964 or whenever): any assumption about someone made solely on the basis of that person's race is racist. It may also be banter ? but it is racist banter.
マンチェスター・ユナイテッドのファンによる、ストライカーのロメウ・ルカクへのチャントにも同じことが言え、人種差別的な要素など感じてもいない人が思ったより多くいるようだ。ハッキリさせておくと(1964年とか昔からちゃんと気付いている人には申し訳ないが)、人種だけ見て何らかの推測をすることが人種差別だ。冗談でもあるかもしれないが、それは人種差別的な冗談だ。
●As huge amounts of psychological research have found, the trouble with supposedly positive stereotypes is that they tend to be accompanied in the minds of those who hold them by distinctly less complimentary ones. Time and again research papers have showed you couldn't have one without the other: people who saw Asians as great at maths also thought they were cold and remote, and terrible drivers.
心理学の側面から相当数の調査が行われてきたが、表向き前向きな偏見の問題点は、それらが大抵、より見下した気持ちを伴いがちだという点だ。過去を辿っても、研究の数々はその一方だけを持つことはできない、と示してきた。アジア人を見て計算が得意だと見る人々は、同時に彼らのことを冷たく、疎遠で、運転が下手だ、と見ているのだ。
●And so with the Lukaku chant. I'm afraid we have to ask ourselves something about those Manchester United fans chanting their great big compliment at Lukaku: what's the likelihood the only stereotype those people hold about black people is that they have enormous penises? Honestly, what are the chances? Zero, is the answer to that, whether or not they even realise it.
ルカクのチャントも同様だ。マンチェスター・ユナイテッドのファンはルカクを褒め称えているのだ、と言うが、いま一度自分に問いかけてみるべきだ。黒人は巨大なペニスの持ち主だ、という偏見しか本当に持っていないのか?正直なところ、その可能性はどの程度だ?自分の偏見の有無を認識しているかにかかわらず、ゼロ、がその問いへの答えだ。
●This is why it is so unreasonable to expect people to laugh along with what may seem to those indulging in it to be "just banter" ? be they the subject of the chant himself, or other black people who hear it or hear of it. Not all of them may declare they have a problem with it but the ones who do have a very real and serious problem with it. Why should they be expected to laugh gratefully as you tell them they have a huge penis, when inside they may be well aware you also probably think they're lazy and more predisposed to criminal behaviour?
それが、「ただのネタ」と勝手に言っている面々と一緒に笑って済まそうというのが、なぜそんなに不合理なのか、という理由だ。問題がチャントそのもののことであれ、直接でも間接的にでもそれを耳にした他の黒人の人々の事であれ、だ。必ずしも全員がそれを問題視するわけではないだろうが、問題視する人々から見れば、これは非常に深刻な問題だ。巨大なペニスの持ち主と言われて、なぜ優しく笑ってなければならないのか?ましてや、心の内で彼らは、皆が自分たちのことを怠惰で犯罪を犯しがちな傾向があると考えている、と感じているのに?
●Prejudice masquerading as praise may appear superficially more appealing than prejudice without disguise. But only superficially.
賞賛の仮面をまとった偏見は、偽りなき偏見よりも表向き魅力的に見えるだろう。ただし、表向きだけだ。

出典:https://www.theguardian.com/football/blog/2017/sep/19/manchester-united-racial-stereotyping-romelu-lukaku-song
翻訳: 桐谷 圭介


その要点
●ポジティブな(褒めるつもりの)ステレオタイプなら許す、というと、一般化・ステレオタイプ化そのものを許すことになってしまう。
●一般化・ステレオタイプ化しても良い、という考え方が存在する上では、故意だろうが無意識のうちだろうが、ネガティブなステレオタイプも必ず生まれてしまう。
●それはレイシズムの基である。
●つまり、ポジティブな(褒めるつもりの)場合でも、人の人種を見て一般化・ステレオタイプ化するのもレイシズムの一種である。

補足:文化的背景
●現在、欧米では人種差別や外国人嫌悪に関連する問題がいくつかある。
●例えば、失業率の原因がオートーメーション(自動化)やリーマンショック後の不景気にあるにもかかわらず、「仕事がなくなったのは移民のせいだ!」という軽い考え方に囚われ、極端な政治に行ってしまう流れもある。
●それがBrexitの原因の一つと言えるし、アメリカでは白人至上主義者の台頭を背景にトランプ大統領当選もあった。
●そのアメリカでは、黒人が警察などに差別的な扱いをされるという主張があり、最近抗議など続いている。
●アメフトの試合などで、選手たちの抗議だけではなく、トランプ大統領の反応も益々話題になっている。
●その現状の中、軽い気持ちで一般化・ステレオタイプ化を許すのは危険だ、という危機感を持つ人も多い。
●それもあり、ルカクのチャントについても、大事になる前に問題の芽を掴み取るべき、という敏感なスタンスをサッカー界が取った。

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