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04月05日

【後藤健生コラム】浦和vs.湘南、サイドの選択は反町監督の策略か?

コイントスに勝ったら、どちらのサイドを選択すべきなのか

湘南ベルマーレの反町監督に質問したら、回答を拒否されてしまった。

事の次第は、こうである。浦和レッズとのアウェー。いつもより数は少ないとはいえ、3万6790人が入った埼玉スタジアムでのゲームである。試合前のコイントスに勝った湘南の田村主将は、躊躇なく北側のサイドを選択したのだ。

Jリーグではほとんどのスタジアムで、メインスタンドからピッチに向かって左手側にホームチームのベンチや応援席があり、右側がアウェーとなっていて、選手入場のときには左にホーム、右にアウェーのチームが整列する。そして、両チームの集合写真の撮影が終わると、両チームの主将がコイントスに臨む。まず、アウェー側の主将がコインの裏表を選択し、レフェリーがトスをして、勝った方のチームがサイド(どちらに攻めるか)を決めるのだ。

かつては、トスに勝った方のチームがキックオフを選択してもよかった(その場合は、トスに負けた方のチームがサイドを選んだ)のだが、今はトスに勝ったチームが必ずサイドを選択することになっている。しかし、Jリーグでは、トスに勝った方の主将がそのまま整列していた側のサイドを選択することが多い。だから、たいてい、前半はホームチームが左から右に攻めることになる。つまり、両チームともサポーターの声援を背中に受けて戦うわけである。

ところが、浦和戦の湘南は、トスに勝って、逆サイドを選択したのである。

大勢のカメラマンが慌てて機材を担いで反対サイドに走った。そして、前半、湘南は浦和レッズのサポーターのブーイングを背中に受けてプレーしたのである。J1経験のない選手が多い湘南の場合、「大観衆に慣れていないのが弱点」とも言われているのである。それなのに、わざわざレッズ・サポーターのブーイングを浴びる側を選択したのだろう?それで、「きっと反町監督の策略に違いない」と思って質問したのだが、回答を拒否されてしまったというわけだ。つまり、やはり何かの策略だったのだろう。

サイドを選択する場合、ふつう考えるのは風向きである。風上が有利だから、トスに勝ったチームが風上を選択することが多いが、後半風上になるように、前半は風下を選ぶ場合もあるし、チームによっては風下の方が有利と感じることもある。太陽の位置も問題になる。ゴールの部分で正面から直射日光を浴びるような場合、GKの視野に太陽が入ってキャッチングのミスが起こることもあるから、日差しを避けたいという場合である。前半に太陽を背にした方がいいのか、後半に太陽を背にした方がいいのか。キックオフの時間やスタジアムのピッチの向きによって、考えなくてはならない。

しかも、後半開始はコイントスから1時間以上後のことになるから、その間に風向きが変わったり、曇って太陽が見えなくなったりすることもあるから、天気予報も調べてから選択しなければならない。しかし、Jリーグではたいていがホームチームが左側を選択する。あるいは、トスに勝ってから、GKを呼んで「どっちにする?」と聞いているような場面を見かけることもある。ということは、コイントスのときに、あまり、そうしたことを考えていないようである。

何年か前に、他の監督に、やはり「トスで勝って、なぜ不利に思えるサイドを選択したのか」と質問をしたことがあるが、そうしたらその監督は「今は、どちらのサイドか予め決まってるんでしょ?」と言い出した。つまり、ルールをご存じなかったようなのである。サッカーというのは、確率のゲームである。どんなにすばらしいテクニックを持っている選手たちが、完璧な戦術で戦っても、それで勝てるわけではない。偶然の要素がさまざまに関与してくるのだ。人間ができることは「勝つ確率を高くすること」だけ。

そして、確率を上げるために、まず必要なのは、正確にプレーすること。相手より一瞬でも早く、あるいは少しでも速く走ること。自分を信じて、諦めないこと……。それが正攻法である。だが、勝つ確率を高くするためには、たとえば、風や太陽を利用することも必要なのだ。僕には「どちらのサイドを選択するのか」ということに、どうも日本人は無頓着過ぎるように思えるのだ。

その点、細かいのが反町監督なのだ。トスに勝った場合、どちらを選択するか、必ず試合前には指示しているという。本拠地の平塚競技場は風の強いスタジアムなので、とくにそうした細心の気配りが有効だろう。だが、この日の埼玉スタジアムは、あまり風は吹いていなかった。19時キックオフだったから、もうとっくに日が沈んでいて、太陽の影響はまったくない。では、反町監督は何故左サイドを選ばせたのだろう。まさか、浦和が勝つと思って湘南のゴール裏に集まっているカメラマンに対して意地悪をしたかったわけではないだろう。

おそらく(これは僕の推測である。質問しても答えてくれなかったのだから、ここは推測で何を書いてもいいはずだ)、浦和レッズという格上のチーム相手のアウェーゲームで、反町監督はとにかくまず守って、どこかの時点でカウンターを仕掛けて先制するというゲームプランを持っていたのだろう。カウンターを仕掛けるには、浦和が不用意に攻め込んでバランスを崩す時間帯を狙いたい。そして、浦和の試合を分析すると、浦和が北側のサイドスタンドに詰め掛けた数多くのサポーターを背にして攻めている場合と、逆にサポーター席に向かって攻めている場合と、浦和の戦い方に何か違いを見つけたのではないだろうか。そして、そのためにわざと前半はレッズ・サポーターを背にして戦うことを選択させた……。

もっと具体的に言うと、前半をなんとか0-0で折り返し、攻めている浦和が焦って、サポーターの大声援を背に攻め込んできた瞬間に勝負を懸けたかったのではないか……。まあ、反町監督としては、回答拒否までしたんだから、僕にこんな原稿を書かれるのは、迷惑なことだろう。だけど、せっかくいろいろ策略を弄しているのに、それをあまり気づいてもらえないのも寂しいのではないかと思って、つい書いてしまったのである。

もし、推測がまったく間違っていたら、ソリさん、メールか電話ください!

後藤 健生 04月05日03:09

◆浦和レッズvs.湘南ベルマーレ
・4月5日(月)20:00 J sports 1
・4月6日(火)13:00 J sports 1
★Jリーグ放送予定はこちらから

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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