3月15日(月)24:00 横浜F・マリノス vs. 湘南ベルマーレ J sports 1
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J1第2節は最大の注目カードである横浜F・マリノス対湘南ベルマーレを取材した。もちろん中村俊輔のJリーグ復帰を見るためだ。日本代表エースの7年半ぶりの凱旋は大いに盛り上がり、日産スタジアムには3万2000人を超える大観衆が集結。メディアも普段の2〜3倍は集まり、さながら日本代表戦のような熱気に包まれた。
試合結果はご存知の通り、3-0で横浜が完勝した。10年ぶりにJ1復帰を果たした湘南と横浜の実力差は歴然としており、湘南はモットーとする激しいプレスとアグレッシブな攻撃を見せられなかった。反町康治監督も「J1の洗礼を受けた。顔を洗って出直してきます」と潔く負けを認めていた。
この日の俊輔はまず鋭いCKで栗原勇蔵の先制点をアシスト。ボールを持って中盤でタメを作り、チーム全体を落ち着かせた。時には右サイドで湘南の左サイドバック・島村毅をゆっくりした切り替えしでかわし、鋭い動き出しで右サイドバック・阪田章裕の背後を簡単に取るなど、個人能力の高さも示した。相手がJ1に上がってきたばかりの湘南ということもあったが、俊輔と対峙する選手たちとのレベル差はあまりにも大きかった。
2001年に俊輔と一緒に横浜でプレーした田原豊は「俊さんは足元の技術がしっかりしているし、いい判断もできる選手だと改めて感じた。いるだけで流れやテンポ、リズムを作っていける。前にルックアップしてボールを持った時が一番脅威になるんで、ヘッドダウンさせようと話していたけど、いいボールを出されてしまった。こっちも早いプレスを心がけたけど、トラップする前に判断してるから。世界で磨いてきた状況判断力はやっぱり違った」と舌を巻いた。
俊輔と97年正月の高校選手権準決勝で激突した経験のある坂本紘司も「相手はプレスをかけても外してプレーする力がある。飛び込んだらワンツーとかされるし、少し間を空けると今度はパスが出てくる。対応の難しさを肌で感じた」と言う。湘南の面々にとっては、「中村俊輔」という名前だけで大きな重圧になっていたのかもしれない。
そんな状況だから、俊輔は5割のフィジカルコンディションでも十分効果的なプレーができた。出場機会を得られなかったリーガエスパニョールとJリーグの果てしない差を本人も実感したに違いない。それでも彼はあくまで「世界標準」を脳裏に焼きつけながらプレーするという。湘南戦後もしきりにこんな話をしていた。
「今まで海外でやってきた感覚を忘れちゃいけない。その感覚をどう落とさずにやるか。それが難しい。今はJに慣れるプレーをすることも大事だけど、それプラス、海外リーグやチャンピオンズリーグのDVDを見たり、エスパニョールで出れなかった時に監督に言われたことを思い出しながらやること。相手を日本の若手だと思わずに、オランダやセリエAの選手だと思ってやらないと。ワールドカップまであと3ヶ月しかないんだから」
こんな話を聞いていて、俊輔が南アワールドカップでドイツでのリベンジを果たすためにもスペインに留まった方がよかったのではとさえ思えてきた。もちろん、公式戦に出なければゲーム体力が低下する。3日のバーレーン戦(豊田)を見ても、一瞬のひらめきや工夫は圧巻だったものの、ミスが多く本調子でないことは明らかだった。この湘南戦でも後半途中から運動量が激減した。コンスタントに試合を重ねていないと、そういう弊害が出てくる。古巣・横浜に戻れば定位置は約束されているから、今から2ヶ月でフィジカル面は確実に向上するだろう。
けれども、残念なことに、対戦相手の力が違いすぎる。俊輔がどれだけ高い意識を持っていても、敵が簡単に1対1で負けてくれるような環境で自分を磨くのは難しい。再びワールドカップの場で世界のスピードやプレッシャーを感じて戸惑うことになりかねない。「スペインで毎日タフな練習と紅白戦をしていた方がプラスになる」とかつての日本代表監督・トルシエも話していたが、それは確かに一理ありそうだ。
俊輔には今年1月、セルティック時代の恩師・ストラカンが指揮を執るイングランド・チャンピオンシップのミドルスブラからのオファーが届いたが、それを受けていた方が世界基準には近かったようだ。スペインとJの中間レベルを模索した方が彼にとってはプラスだった…。そう痛感させられた。といっても、条件が整わず、最終的には横浜復帰という結論に至ったのだから、今の環境で最大限のことをやるしかない。本人も現実を理解しているから、前向きな発言を繰り返すのだ。その努力が少しでも報われ、南アで目に見える成果が出ればいいのだが。
俊輔復帰から見えたもう1つの問題点は、Jリーグのレベルが低すぎることだ。90年代のように有名外国人や実績のある外国人監督が来なくなったうえ、チーム数を増やしたことで選手のレベルも平準化してしまった。もしもJのレベルがもう少し高ければ、彼がそこまでラクにやれるはずはない。そのあたりも今回、深刻に受け止めるべきだろう。
元川 悦子 03月14日22:14
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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