コラム

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02月07日

【日本代表】中国戦、夢のないサッカーでスコアレスドロー

コンセプトに縛られすぎて、ゴールが奪えない

スコアレスドローに終わったベネズエラ戦(大分)から中3日。日本代表は6日に東アジア選手権初戦・中国戦に挑んだ。九州石油ドームに集まったのは2万7009人だったが、味の素スタジアムの観衆は2万5964人。日本サッカー協会の犬飼基昭会長は「代表戦の観衆が2万5000人を切ったら問題だ」と話していたというが、首都・東京での土曜開催で2万5000人を辛うじて超えただけというのは、明らかに黄信号だ。

2006年ドイツワールドカップの惨敗、中田英寿らスターの引退、オシム前監督の志半ばでの病気辞任、岡田武史監督の固定メンバーでのチーム作り、代表よりクラブを優先するサポーターが増えたこと、海外サッカーに特化したファンが多くなったこと…。代表戦観客減の理由を挙げればいくつもある。が、最大の原因は「今の日本代表に夢がない」ということではないだろうか。岡田監督がいくら「ベスト4進出を本気で狙う。世界を驚かせるサッカーをする」と繰り返しても、現状のままでは絵に描いた餅で終わってしまうことは誰でも分かる。チームが確実に前進している実感を見る者に与えるには、点を取って勝つしかない。中国戦はそういう意味でも重要な一戦だった。

この日は期待の新戦力である小笠原満男(鹿島)を控えに回し、前線に大久保嘉人(神戸)、岡崎慎司(清水)、玉田圭司(名古屋)の3トップを配し、中村憲剛(川崎)をトップ下に据える4-2-3-1を採った。岡田監督としては「チームコンセプトに慣れた現状のベスト布陣で勝って自信を取り戻したい」と思ったのだろう。その思惑通り、小兵3トップは序盤から激しく動き回ってサイドを使おうと試みた。中村憲剛がFW陣を追い越す動きを見せたり、遠藤保仁(G大阪)や稲本潤一(川崎)が大きなサイドチェンジでチャンスを作るなど、攻撃のバリエーションは確かに増えた。が、肝心のペナルティエリアのところでFW陣がシュートを打たない。相手をえぐって打てる位置まで行っているのに、中で待っている選手にラストパスを送ってしまう。

岡田ジャパンでは日ごろから4人1組の敵をつけないシュート練習をよくやっている。選手たちはぺナの中でも細かいパスを回してシュートするが、実際の試合ではそんな形は通用しない。指揮官の「意識づけの徹底」が「コンセプトに縛られる選手たち」を作り上げている一面は否定できない。遠藤が「簡単にいうと型にはまったようなプレーが確かに多かった気がするし、意外性のあるプレーをしないと相手もなかなか崩せない。言われたことを言われたとおりにやるっていう日本人の悪い癖が出たと思う」と言えば、佐藤寿人(広島)も「みんなミスをしない意識が高すぎた。特に前半はそう。エリアの中ではトライするところはしないといけない」と苦言を呈するなど、選手自身もコンセプトの呪縛から抜け出さなければいけないことは分かっている。

だが、ピッチ上で実践できない。今回の東アジア選手権は4ヵ月後の南ア本大会に向けての重要な生き残りの場でもある。指揮官の言う基本を無視して勝手なことをしていたら外されかねない…。そんな気持ちもプレーを消極的にしているのかもしれない。忘れないでほしい。選手たちが見据えるべきなのは、岡田監督ではなく、南アで戦うカメルーンであり、オランダであり、デンマークだ。中国戦を見る限りだと「世界基準の相手に一泡吹かせてやろう」という意気込みも工夫も創造性も感じられなかった。

それどころか、イメージの共有もできていない。中国戦の後、稲本が「センタリングを入れても中で3人がボールを待っている状況が多かった。もう少し前のスペースに入っていく工夫が必要だった」と言うように、足元でボールを受けすぎるFW陣に警鐘を鳴らした。が、前線の大久保は「前は前で裏に飛び出そうとしているけどボールがこない。そうなると足元でもらうしかない」と中盤へのジレンマを口にした。前からの激しいプレスをかけて高い位置でボールを奪っても、鋭いショートカウンターが出ないから、わざわざサイドから時間をかけて崩さなければいけなくなる。そのあたりが今の岡田ジャパンの大きな問題点ではないだろうか。

選手たちは今、混乱している。このままでは東アジア選手権3試合未勝利ということもあり得る。最悪のシナリオにならない前に、今こそサッカーの原点に戻るべきだ。「みんな特徴があるし、それを生かしあわなければ意味がない」と遠藤も口癖のように言う。コンセプトにこだわって連動性ばかり追い求めるより、それぞれのよさを出し合ってゴールに向かうこと。そうシンプルに考えた方がゴールに近いのかもしれない。

東アジア選手権残り2試合では「夢のあるサッカー」の一端でもいいから見せてほしい。盛り下がったまま、南ア大会本番に突入することだけは避けなければならない。

元川 悦子 02月07日14:51

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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