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01月03日

【後藤健生コラム】「アジアのバルセロナ」完勝だったG大阪の天皇杯

元日に行われた天皇杯決勝で、ガンバ大阪が名古屋グランパスに快勝して2連覇を飾った。昨シーズンの優勝は、クラブ・ワールドカップでの激闘の後で激しい疲労を抱えた中での戦いで、しかも負傷者続出、満身創痍の状態での精神力の勝利。これまでのG大阪にはなかった「勝負強さ」を見せ付けた勝利だったが、今シーズンの優勝は圧勝だった。

不安材料といえば、準決勝のベガルタ仙台戦で加地亮が出場停止で安田理大を右で起用したこと。そして、正副2人のGKが故障で使えず、経験のない木村敦志を使わざるを得なかったことくらいか。準決勝、決勝と狙い通りの勝利だった。西野監督も、準決勝の後から「準決勝、決勝と2試合トータルで考えている」と、決勝を見据えた戦いであることを明らかにしていた。

何がすばらしかったかといえば、まず、すべての得点が、ドリブルを交えながらパスをつないで生み出した美しいゴールばかりだったことだ。

準決勝の1点目こそ、安田のクロスを相手GKがはじくところをルーカスがオーバーヘッドで決めた個人能力によるものだったが、準決勝の決勝点や決勝戦の先制点などは、ワンタッチのパスが小気味良くつながって、最後は余裕を持って狙い済ましたシュートで決めたもの。そして、最後は遠藤の個人技を見せ付けての3連続ゴールでフィニッシュした。

西野朗は、選手時代から「美学」にこだわる選手だった。いや、もっと言えば「美学」にこだわりすぎる選手だった。

「美学」を捨てて、結果を求めれば、もっとたくさんの得点を生み、日本代表でも大活躍できたことだろう。昨年、当時の日本代表監督だった二宮寛さんに話を聞く機会があったが、やはりそのようなことをおっしゃっていた。

その「美学」にこだわる姿勢は、監督になってからもまったく変わらなかった。

一度だけ、その「美学」を捨てて、結果にとことんこだわったのがアトランタ・オリンピックのブラジル戦だったのだろうが、見事に結果を出したにも関わらず各方面から批判を浴びることになり、以降、監督としての西野は、自分の「美学」を捨てることはなかった。「いくらなんでも、ここはパワープレーで行くべき」と思われるときでも、徹底して「美学」にこだわった。

その西野監督も、さすがに決勝戦後の記者会見では満足の表情を浮かべた。

徹底してパスをつなぎ、相手の守備の組織をこじ開け、決定的なスペースを作って、最後にフリーの選手が確実にシュートを決める。これだけ美しいサッカーをするチームは、世界中どこをさがしてもめったにないだろう。レベルの差を承知で敢えて言わせてもらえば、この天皇杯でのガンバ大阪はバルセロナのようであった。攻撃面でも、もちろんすばらしかったが、決勝戦で名古屋が徹底してケネディの頭という武器を使ってきたのに対抗した守備も見事だった。

先日、スカパー!のワールドカップ特番で、元清水エスパルス監督のゼムノビッチさんと一緒になった。番組の中でもちょっと触れたのだが、収録の合間に旧ユーゴスラビアのサッカーについて、ちょっと突っ込んだ話をした。旧ユーゴスラビアのどの国にも長身FWがいるようだが、「あれは最近の傾向なのだろうか、昔からの旧ユーゴスラビア時代からの伝統なのだろうか?」という話題だった。ゼムノビッチさんによれば、あれはかなり古くからの傾向だということで、いろいろ実例も含めて教えてもらった。実例といえば、僕たちはイビチャ・オシム監督がクラブ(ジェフ千葉)でも代表でも、巻誠一郎を重用したことを知っている。

そして、ケネディという武器を獲得したストイコビッチ監督もまったく例外ではなく、その最高の武器を生かすためにチームを作り変えてしまった。

天皇杯決勝でも、右に玉田圭司、左にマギヌン(途中からマギヌンを中でプレーさせ、アウトサイドには小川佳純を出した)を置いて、サイドからえぐっては、徹底的にケネディへのクロス攻撃を使い続けたのだ。ストイコビッチのような小柄でテクニックに優れた選手だった人でも、やはり、高さのあるセンターフォワードを好んで使うのが、旧ユーゴスラビアの伝統なのであろう。天皇杯のハーフタイムに、ゼムノビッチさんと挨拶をしながら、「この間のお話の通りですね」と笑った。

実際、その威力は相当のものだった。40分の名古屋の同点ゴールもケネディの高さが2度にわたって生きたものだった。前半の最後から後半の立ち上がりにかけて、名古屋が押し込んだ時間帯があったが、あれだけ押し込まれて、ケネディというサイズのある選手が飛び込んでいけば、並みのチームだったら持ち堪えられなかったはずだ。だが、ケネディのミスやペナルティーエリア内で玉田が倒れた場面など、G大阪にとっての幸運もあったが、それでもあそこで踏みとどまって、最後の時間帯、名古屋の攻めの圧力が減ったのを見極めて3点を叩き込んだ試合運びは、まさに王者にふさわしいものだった。

ケネディを狙ってくる名古屋の攻めに対処するために、西野監督は「ラインを落とすな」ということを強調したという。

ケネディ相手では競り負ける可能性は高い。ゴール前で競り負けたらゴールに直結するが、ゴールから離れたところなら競り負けてもカバーできるというわけである。そして、ラインを上げるためにも、外からいいタイミングでクロスを上げさせないことが大切なポイントになる。相手のMFに対する守備も大きな焦点だったし、ボランチが相手のサイドの選手にプレッシャーをかけることで、クロスを入れさせないようにする。それが、G大阪の守備の考え方だった。

そして、それを忠実にこなしたのが、ボランチの遠藤保仁と明神智和の2人だった。

前半から、中盤で遠藤が相手のパスコースを読みきってカットする場面が何度もあった。あれだけの強い守備ができれば、遠藤のボランチはワールドカップでも十分に通用するだろう。そして、「遠藤の守備」とともに、「明神の攻撃」も冴えた。相手のMFに体を寄せてボールを奪う技術。それは、もう、明神のストロングポイントであるが、この決勝戦ではボールを奪ってから攻めに出る鋭さが光っていたのだ。

最後の3点に遠藤や明神が何度も絡んでいたのは、サッカーの神様からのご褒美だったのだろう。

*****

最後になりましたが、あけましておめでとうございます。ワールドカップイヤーの今年もよろしくお願いします。

後藤 健生 01月03日00:21

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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