週末は、訳あって天皇杯の試合を見逃した。安定感と勢いを兼ね備えた仙台の快進撃がどこまで続くか楽しみではあるが、とうとうまたも無冠に終わってしまった川崎Fのことはちょっと心配である。
で、天皇杯の試合が見られなかったので、先週の1回戦に続いて、Jユースカップの2回戦を見てきた。
ガンバ大阪ユース対ジェフ千葉U18のカード。ともに、多くのJリーガーを輩出し、育成には定評のある(あった?)クラブ同士の顔合わせだった。個人能力にはかなりの差があり、早い判断と正確なパス技術でG大阪がゲームを支配し続ける。なにしろ、試合の会場はG大阪の練習グラウンドであり、G大阪には完全なホームの利もある。ボールポゼッションの数字などは出ないが、おそらく65%対35%といったところだったろうか。
右のMFの望月がうまいタイミングで開いて右サイドバックの山田からのパスを受けて展開する動き。中盤での水野の神出鬼没なポジション取りなど、G大阪には見るべきプレーも多い。一方の千葉の方は、劣勢の中でもよく守って、大型のツートップ(奥田と高橋)へのロングボールで打開を図る。ツートップの動きや難しいボールを支配するテクニックなのは見るべきものがあるが、縦への単純なボールばかりなので、簡単に撥ね返されてしまう。
そんな展開が続き、要するに試合はG大阪ペースで進むのだが、なかなかチャンスには結びつかない。とにかく、ゴール前へのトライが少ないのだ。トップの選手も、最前線に張っているのではなく、すぐに中盤に降りてきてパス回しに参加したがり、結局ゴール前での人数が少なくなる。ゴール前に強引にボールを入れていくようなプレーもほとんどないまま前半が終了。
後半の立ち上がりに千葉が、サイドに大きく開いてクロスを放り込んで3回ほど大きなチャンスがあったが、その後は再び前半と同じような展開。「このまま、何十分試合が続いても、なかなか点も入らないだろうなあ。雨も降ってきて寒くなったのに、延長戦は勘弁して欲しい……」と思っていたら、62分に相手のパスをカットした平川が、すぐにトップの原口に出し、そのまま原口が決めて、G大阪があっけなく先制点を決めた。ダイレクトプレーの典型のような得点だった。
しかし、先制点が入ったことで少しはゲームが動くかと思ったが、それ以後も同じような展開で、さすがに1点差のゲームだけに、終盤になって千葉が攻撃をしかけはしたが、結局そのまま1−0でG大阪が逃げ切った。中盤で相手を上回って、完全にボールを支配していたG大阪は、勝つには勝ったものの、結局、相手の守備を崩し切ったようなチャンスはつくれないまま、試合が終わってしまった。あれで、選手たちは満足できたのだろうか? あるいは、試合が行われたのが練習場ということで、ゴール裏のフェンスの後ろに陣取って熱心に応援を続けてくれたサポーターは楽しむことができたのだろうか? どうして、もっと積極果敢にゴールを狙ってみないのだろうか?
いろいろと疑問を感じざるを得ない90分間だった。たしかにうまい選手はいるし、中盤でワンタッチのパスがつながるような場面も何度か目にした。しかし、だからこそ、もっと積極的にゴールを狙うプレーができたはずなのだ。サッカーの試合というのは「相手より1点でも多くゴールを奪って、勝利するため」に行うものである。これは、どんなにオフサイドルールが変更されようと、将来、選手の数が9人ずつに減ったとしても、四角いボールが使われるようになっても変わらないであろう、サッカーというスポーツの本質である。「将棋は、相手の王を詰めることが目的だ」というのと同じくらい大事なことだ。
ポゼッションというのは、ゴールを奪うことの「手段」なのであって、絶対に「目的」ではないのだ。「同点の場合はボール支配率の高い方が勝ち」というルールもない。そういう目的を忘れてプレーしていては、優れたストライカーは育ってこないし、同時に強いストッパーも生まれない。結局、テクニックのあるMFたちがテクニックを披露し合うだけの遊びになってしまう。
この試合でもある選手がドリブルに移った瞬間、前にスペースがあり、相手DFが1枚で対応しているような場面があった。すると、ベンチから指導者の声が聞こえてくる(練習グラウンドでの試合で、ベンチのすぐ脇で見ていたから、指示の声はよく聞こえた――選手の声は思ったより聞こえてこない)。「行っていいぞ。行け、行け」と怒鳴るベンチ。それを聞いた選手が、ためらいながら、ドリブルをはじめ、途中で再びパスコースをさがし始める。すると、再びベンチから「行け、行け」という声……。
ユースの、育成段階の選手なのだから、持ちすぎとか、1人で行き過ぎるような独善的なプレーがあっても当然だ。ベンチから「持ちすぎるな!」という声が聞こえても、不思議はない。だが、現実にはドリブル突破をためらう若い選手が目の前にいる……。
そういえば、先週見た1回戦でも、ベンチの指示に驚いたことがあったのを思い出した。後半の30分過ぎのことだった。その試合は、すでに3−1というスコアになっていたのだ。そうしたら、そのリードされていた方の監督が、ベンチの前に出てきて、「バランス、バランス!」と叫んでいたのだ。「2点差を追いかけているので、選手が前がかりになりすぎていたから」ではない。試合開始のときと同じフォーメーションで、選手たちは同じようにプレーしていたのだ。
残り時間が15分を切って、2点差を追っているわけで、そろそろ、DFを退けて、トップを増やすとか、なんらかの思い切った手を打つべき時間帯に差し掛かってきたはずだ。本当なら、育成段階では、もっとリーグ戦形式を増やすべきだと思うが、このJユースという大会も(高円宮杯やクラブユースなどと同じく)ノックアウトトーナメントで行われている。ノックアウト式の大会なのだから、残る時間が少なくなったときのパワープレーの練習としては打ってつけの大会のはずだ。だが、2点差で負けているチームの監督は「バランスを崩すな」と言っているのだ。
育成段階の監督やコーチは、もう一度、なんのために育成部門があるのか、さらに、サッカーというのは何を目的にやっているスポーツなのか、をぜひ考え直してほしい。
後藤 健生 12月14日19:48
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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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