ワールドカップのファイナルドローから、すでに4日が経過した。僕は、抽選当日にはスカパー!の中継に出演。その後も、日本の対戦相手の話題など何本かの原稿を書き、電話取材なども受けた。「相手は3か国とも格上だ。厳しい」という声が多いようだが、そもそもFIFAランキングで日本より下の国などそれほどないわけで(しかも、そのうちの多くは日本と同じポット2に入っている)、格上ばかりなのは仕方がないことだろう。
オランダが格上なのは間違いない。ポット1の中では南アフリカを除いてすべて格上だが、その中ではスペインやブラジルほど「どうにもならない」感は少ないような気はする。強いけれども、脆さも同居。付け入る隙は多少はありそうだ。そんな印象のオランダだ。同様に、カメルーンもアフリカ勢の中では南アフリカやアルジェリアよりは強いが、身体能力を前面に押し出してくるナイジェリアやコートジボワールよりは相性は良さそう。最後のポット4からも、フランスやポルトガルほど強くはないが、スロバキアやスロベニアより強そうなデンマークが入ってきた。
総じて言えば、最良でも、最悪でもない、「まあ、こんなところだろう」といった組分けだ。少なくとも、北朝鮮が入ったG組よりは勝ち抜けの可能性は高い。考えてみれば、岡田監督が就任以来やってきた「高い位置でボールを奪ってショートカウンター。低い弾道のクロスを入れて、点で合わせる」というスタイルのサッカーは、背が高くて強いDF相手に点を取るためにやってきたこと。つまり、まさに「オランダやデンマークからどうやって点を取るか」という対策を2年間やってきたようなもの。つまり、両国は日本代表にとっては「格好の相手」ということになる。同タイプの相手が2つ入ったことで準備もやりやすくなっただろう。
さて、日本のグループ以外に目を向けよう。
今回の抽選結果は「これまでの大会に比べて平均的に強豪がバラついている」という印象が強い。いわゆる「死のグループ」が見当たらないのだ。ブラジル、ポルトガル、コートジボワールが入ったG組に、もしポット2からアメリカなどが入っていたら「死のグループ」が完成したが、4番目が北朝鮮ではやはり「死のグループ」とは呼べない。
僕が最も注目しているは、FIFAランキングでトップを争っているスペインとブラジルがG組とH組に入ったことだ。
実力的には、この両国が現在世界のトップなのは間違いない。もしホーム&アウェーの総当りリーグを行ったら、おそらくこの両チームが優勝争いを展開することだろう。だが、ワールドカップというのは、複雑なフォーマットに基づいたノックアウトトーナメントなのだ。組み合わせや日程の有利、不利が微妙に作用してくる。
G組の4チームは、大会が開幕してから5日目の6月15日に初戦を迎える。そして、H組の4チームの初戦は翌16日にズレこむ。その16日には、A組の南アフリカとウルグアイなどはもう2試合目を行うのだ。つまり、H組に入ったチームが決勝まで進んだとすれば、26日間に7試合を行わなければならないのだ。逆に、A組のチームの場合は、31日間に7試合ということになる。つまり、H組のチームにとっては、ゲームとゲームの間隔が少なく、日程的にきつくなるのだ。
たとえば、G組の1位で通過したチーム(ブラジル? ポルトガル?)は、グループリーグ最終戦からラウンド16まで、中2日で戦わなければならないのだ。もちろん、この場合、対戦相手のH組2位のチームも同じく中2日だから、直接的影響はないが、その後の準々決勝も中3日、その後も中3日で準決勝……と試合間隔は短く疲労が蓄積していく。この状況を楽にするには、グループリーグの2試合目までに突破を決めて、3戦目を消化試合にするしかないが、厳しい争いになるであろうG組でそこまで楽に勝てるかどうか。しかも、3戦目はブラジルとポルトガルの「直接対決」なのだ。
しかも、決勝トーナメントに入って最初に対戦するH組にはスペインがいるのである。過去のワールドカップを振り返っても、大会の5日目、6日目に初戦を迎えるような日程のチームが優勝した例はない。前回、2006年大会ではE組(初戦は大会4日目の6月12日)のイタリアが優勝したが、これですらすでに例外的なことだった。というわけで、世界最強のスペインとブラジルがともに厳しい日程になったことで、優勝争いはまったく分からなくなってしまった。
同様に僕が注目していたのはE組だった。というのは、E組を1位通過すると、決勝トーナメントに入って準決勝まで3試合すべてを標高ゼロ・メートルの海辺の3都市で戦えるからだ。今回の大会で最大の問題は高地の試合と低地の試合が交互にあることだった。しかも、E組最強の「E1」はグループリーグも2戦目、3戦目を低地で戦えるのだ。
そして、抽選の結果、E1にはなんとオランダが入った。オランダ語で「ネーデルランド」は「低い国」の意味。その低地の国にとって、なんという幸運だったのか! もっとも、日本だってもしE組トップで通過できれば、その後は大きなアドバンテージを持って戦えるのだが……。
ちなみに、高地を得意とするメキシコはグループリーグはすべて高地で戦えるのだが、決勝トーナメントに進むと、2試合は低地で戦わなければならず、大きなアドバンテージを手放すことになる。ただ、A組に入ったことで、メキシコなどは日程的には楽になるし、相手が高地での試合で消耗していくことを考えると、高地の試合が多い南アフリカ大会は上位進出の大きなチャンスだということはできる。
日本は、初戦が高地でおそらく気温も低いブルームフォンテーン。2戦目が海沿いのダーバン。3戦目が再び内陸のラステンバーグという日程になった。高地 → 低地 → 高地という難しい移動となった。しかも、初戦は16時キックオフ。2戦目が13時30分キックオフ。3戦目が20時30分キックオフとなったため、生活リズムの調整にも苦しみそう。本当は、2試合目のダーバンでの試合は初戦と同じ16時キックオフの予定だったのだが、組分け決定後に変更になった。もちろん、日本でのテレビ放映の都合を考えての変更だったのだろうが、これが大きなハンディにならなければいいのだが……
後藤 健生 12月10日10:20
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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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