コラム

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06月29日

【Jリーグ】自分の能力を最大限生かし始めた平山相太

今季開幕当初はチーム全体がギクシャクし、下位に低迷していたFC東京。しかし日本代表が2010年南アフリカワールドカップアジア最終予選期間中にあったナビスコカップでじわじわと調子を上げ、27日の清水エスパルス戦も2−1で勝利。気づいてみたら勝ち点22の7位。もう少し連勝が続けば、上位3強入りも夢ではないところまで来ている。

石川直宏が日本人得点王となる今季8点目のゴールを上げ、エース・カボレがコンディションを上げるなど、城福浩監督のやろうとしているサッカーは確実に形になりつつある。指揮官も「今季3〜4月は新たなサッカーへの生みの苦しみがあったが、5月以降は手ごたえを感じ、結果もついてきた。今日勝って星を五分に戻したことで反撃の夏をスタートできたと思う」と興奮気味に話していたほどだ。

中でも目を引いたのが平山相太のパフォーマンス。05-06シーズンにオランダ・ヘラクレスで8ゴールを挙げた彼が帰国したのは2006年秋。オランダ語習得に苦しむなどホームシックが原因とされる帰国には、多くの関係者が落胆させられた。その後、鳴り物入りでFC東京に入団するも、鳴かず飛ばずの日々が続いた。2007年には原博実監督(現日本サッカー協会強化担当技術委員)が平山最大の長所である高さを最大限伸ばそうと、毎日ヘディングの練習につきあったが、指揮官がやめると、本人まで自主トレをやめて帰ってしまうようになった。この話を聞きつけた北京五輪代表の反町康治監督(現湘南)もとうとう堪忍袋が切れ、彼を軸としてきた代表チームの攻撃陣を抜本的に見直すことを決断した。こうして表舞台から消えた平山はそれから2年間、チームのレギュラーにもなれずに時間を過ごすことになった。

そういう彼のメンタル面の弱さを城福監督は容赦なく指摘したようだ。「時間がもったいないとバッサリ言われた」と平山は言う。「自分は気持ちのアップダウンが激しく、メンタルが下がっている時は試合どころか、練習にも身が入らなくなってしまう。そういう意味で時間をムダにしていると監督は言いたかったんだと思う」と本人は打ち明ける。

この一言は、痛烈に響いたようだ。加えて今季の東京で、米本拓司や田邊草民ら10代の若手選手が次々と台頭してきた。そのことも危機感を煽ったのだろう。彼も24歳。決してサッカー選手として若いわけではない。「自分から物事を起こさないと何も変わらない」と本人もとうとう気づいたのだ。

原監督時代に中断していたヘディングの練習を再開し、フィジカル的に強くなろうと自分自身を追い込み始めた。最近の彼を見ると明らかに顔も体も締まっている。城福監督は要求の厳しい指導者として知られるが、平山や梶山陽平ら伸び悩みの見られた選手に徹底して負荷をかけたのだろう。それがいい方に転がり始めた。彼のポストプレーには安定感が出てきて、必ずと言っていいほどボールが収まる。「攻撃していて困った時は相太の頭のところに当て、こぼれ球を拾って、裏に走りこんだカボレを狙うという形を徹底的にやれと監督に言われている。相太に当てればいろんな攻撃のバリエーションが作れる。今はチームの拠り所になっているよね。俺は相太と一緒にワールドユース(2003年UAE大会)も戦ったし、もともとすごい能力を持ってることを知ってる。あいつの力はこんなもんじゃない」と今野泰幸も太鼓判を押した。

ポストプレーで攻撃の起点になるだけでなく、得点も狙いに行くようになった。以前は自分のエゴを前面に押し出し、スピードもないのにムリなドリブル突破を仕掛けたり、強引に前へ行こうとしたりと、明らかに空回りしていたが、今は流れの中からゴールに向かっている。「自分のスタート位置が1つ下がったことで、空いているスペースや周りの選手の動きがよく見えるようになってきた。自分は周りに生かされるタイプの選手。自分で何か打開できる選手じゃない。だから周りとの連係の中で生きなきゃいけないと分かった。やるべきことがすごく整理された」と平山も話していた。

J1再開となった20日の柏レイソル戦では目の覚めるような左足シュートを決めるなど、結果もついてくるようになった。このまま彼のパフォーマンスに磨きがかかってくるようなら、もう二度とないと思われた日本代表への道も開けてくるかもしれない。そんな期待がわずかでも持てたことは大きい。

国見時代の平山は「10年に一度の逸材」と言われ、将来を嘱望される選手だった。2回のワールドユースに出場させた大熊清監督(現日本代表コーチ)も「富士山のようなスケールの大きなストライカーになってほしい」と期待を込めて話したくらいだ。その後は予期せぬ停滞を余儀なくされたが、ここから遅れを取り戻せば、まだ表舞台で輝く可能性はある。そうなるか否か。それは彼の今後の意識とプレーにかかっている。

元川 悦子 06月29日21:20


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元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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