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06月25日

【後藤健生コラム】韓国の新星、寄誠庸(キ・ソンヨン)が輝いた鹿島戦

小笠原退場で流れは変わり、鹿島はまたもベスト8を逃す

AFCチャンピオンズリーグのラウンド16屈指の好カード、鹿島アントラーズ対FCソウルの試合は延長・PK戦にもつれ込み、鹿島はACL準々決勝進出を逃した。試合は、鹿島のベテラン小笠原満男とソウルの新鋭、寄誠庸(キ・ソンヨン)の両チームのボランチ対決でもあった。

小笠原は30歳になったが、「脂が乗り切った」というにふさわしい最高の状態。ちょっとしたこぼれ球でも、間髪を入れずに味方のプレーヤーに正確に渡す、その視野の広さと正確なキック技術は群を抜いている。守備の仕事もしっかりこなせるようになって、まさにスーパーなMFである。前半のロスタイム、野沢拓也からのパスを受けた小笠原は、ペナルティーエリア内にグラウンダーのパスを流し込み、相手DFがあわててクリアしたボールをワンタッチで野沢に返す。そうした意外性を何度も演出した。

一方の寄誠庸はまだ20才だが、韓国代表でも中盤の組み立てを任され、韓国サッカー界の期待を集める若手有望株だ。ボランチの位置から、右足の正確なキックで長いパスを通し、FKやCKもすべて任されている。そして、鹿島との試合でもスタートは、金漢潤(キム・ハンユン)と組んでボランチを務めていたが、後半の1点を追う場面ではポジションを上げてプレー。さらに、延長に入るとワンボランチとして後方からの長いパスでチーム全体を操った。

ソウルは3バックで臨んだが、両サイドの外国人MF(右のケビン・アッチと左のアジウソン)はほとんど攻撃には参加せず、鹿島の攻撃を警戒して低い位置にとどまり、事実上5バックのような布陣。だが、トップのダムヤノビッチとシャドーストライカーの李青龍(イ・チョンヨン)と李勝烈(イ・スンヨル)の3人に寄誠庸を加えたアタッカー陣は強力で、シンプルではあるが効率的な攻撃をしかけてきた。もし、両サイドMFが攻めに出てきたらかなりの脅威となったことだろうが、あの2人はプレースタイルとして、もともと純粋なフルバックなのだろう。

前半は、ほぼ互角の戦いが続き、両チームとも相手DFのミス絡みで1点ずつを取り合って1−1のまま終了。勝敗は後半に持ち越された。

そして、後半に入って5分で鹿島がリードする。左サイドで本山雅志がドリブルで持ち込んで、ケビン・アッチがこのドリブルを止めてCK。小笠原が蹴ったキックを岩政大樹がヘディングで狙ったが、GKの金鎬俊(キム・ホジュン)の正面を衝き、再びCK。2回目のCKでは、その岩政を囮に使って、裏から現れた青木剛が決めた。

2−1と優位に立った鹿島は、その後もゲームをしっかりコントロールしながら3点目を狙う。だが、64分には中盤で不用意なファウルを犯した小笠原が退場になってしまった。前半27分の1枚目のイエローカードは、中盤で「ここで抜かれるとピンチ」という場面での意図的なファウルだったから、むしろ「よく止めた」と褒められるプレーだったが、すでに警告を受けている状況の中で、中盤でまったく不要なファウルを犯してしまったわけで、小笠原には弁明の余地のない判断ミス。

「1人少ない状況は初めてではない」(オリヴェイラ監督)としても、まさにチームの中心である小笠原の退場はゲームの行方を大きく変えてしまった。FWの興梠慎三に代えて中田浩二を投入。守備面では小笠原のいたスペースを埋めることはできたが、試合出場機会が少ない中田にはそれ以上の働きは期待できず、試合は次第にソウルのペースとなっていく。

もっとも、これは「1人少ないから」という理由より、「1点リードされているチームが攻撃的にプレーする」という状況に思えた。10人と11人という状況になったものの、鹿島は人数的な不利をそれほど感じさせず、なんとかこのまま逃げ切れるかと思われた。もともと、「リードしているチームが1人少ない」というのは決定的に不利な状況とは言えない。

しかし78分、鹿島はついに同点に追いつかれてしまう。バイタルエリアでパスを回されて思わず犯したファウルでFKを与えてしまう。そして、これを寄誠庸が得意の右足インサイドで回転をかけるボールで狙い、3人の壁の横を巻いたボールが、鹿島のゴール右隅に決まった。その後の時間帯は、勝ち越しを狙ったソウルの猛攻を鹿島が耐え、鹿島にもカウンターから何度かの決定機があり、スリリングな攻め合いとなった。

だが、延長に入ると1人少ないはずの鹿島が攻撃に出て、圧倒的に攻め込むという意外な展開となる。ソウルのギュネス監督は「1人多いので気が緩んだのでは……」と言うが、フィジカル的な強さで日本を上回る韓国選手たちだが、じつは持久力の面では日本の選手たちに劣っているのだ。

こうして、延長では決着がつかず、勝敗の行方はPK戦に持ち越しとなったのだが、特筆すべきは小笠原の退場以降、アディショナルタイムを含めて60分以上ワントップとして奮闘したマルキーニョスの健闘だろう。ふつう、どんな試合でも運動量を要求されるトップの選手が交代する場面は良く見かける。まして、1人少なくなってしまうと、前線で相手ボールをチェイシングし、後方からのロングパスをなんとか収めて味方につなぐなど、ワントップでプレーする選手の負担は大きくなる。だが、オリヴェイラ監督は、MFの本山や野沢を交代させたが、マルキーニョスはトップに置き続け、マルキーニョスも最後までその任務を見事に遂行したのだ。

そのまま試合はPK戦に突入。オリヴェイラ監督が大声で気合を入れて臨んだ鹿島だったが、中田と増田のキックが相手GKの金鎬俊にセーブされる苦しいスタートとなる。だが、曽ケ端準が2本を止め、5人を終えた時点で3−3の同点となり、PK戦はサドンデスの6人目に突入することになった。ところが、鹿島は6人目のキッカーを決めるのに手間取って、センターサークル内にいるアシスタント・レフェリーに促されてようやく青木が進み出るという大失態を犯す。

この瞬間、サッカーの神様は当然のように鹿島を見捨てた。

後藤 健生 06月25日19:55


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後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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