コラム

  • RSS

06月18日

【後藤健生コラム】オーストラリア戦の敗戦から見えてきたもの

守りの強化なくして、W杯での勝利はあり得ない

先日のカタール戦の前に、ジェレミー・ウォーカーが「ワールドカップでの日本のキーマンは誰だと思うか?」と訊くから、「そりゃ、中澤だろう」と言うと、ジェレミーも完全に同意してくれた。メルボルンでのオーストラリア戦では、その中澤佑二が発熱して欠場。岡田武史監督は代役として山口智ではなく、阿部勇樹を出場させた。

試合は、日本が先制したが、後半に逆転を許しての敗戦。闘莉王が先制点を決めて「勝てるチャンスがあったから」という意味では「残念な」、「口惜しい」ゲームではあったが、やはり、予選突破を決めた後の消化試合であって、口惜しさも緩いものでしかなかった。なにしろ、その中澤をはじめ、中村俊輔、遠藤保仁、長谷部誠と、現在の日本代表の中心と言うべき選手がゴソッと抜けた試合だった。むしろ、「このメンバーでよくも惨敗しなかったもの」と考えることもできる。

もっとも、相手もフルメンバーというわけでもなく、日本が警戒する長身のケネディもまったくの不調で、あれではもうヨーロッパではできない。Jリーグ入りが噂されるのも納得の出来だった。まあ、それでも、勝負がかかった試合としての面白さ(たとえば、オーストラリア戦の後にあったサウジアラビア対北朝鮮のような)はなかったものの、オーストラリアと日本の試合はそれなりに楽しめた。

とくに後半に入ってオーストラリアが1点を追って激しさを前面に出して攻めてきた時間帯は見ごたえがあった。オーストラリアが本気でボールを奪い、本気で放り込んでくる場面は、アジアではこの相手とでなければ体験できない迫力を感じる。いわば、「擬似ヨーロッパ」である。ああいう場面で戦えなくては、本物のヨーロッパにも通用しない。

この日のオーストラリアの2ゴールは、(またしても)ケイヒルをつかまえられなかったところから生まれた。たしかにFKやCKの場面で相手の裏に入って点を取るのはケイヒルの得意技である。エバートンでもああいった形から何度も貴重なゴールを決めているのだから、日本が失点してしまうのも仕方のないことではあるが、だからこそ、ケイヒルには徹底的にマークを付けておかなければいけないはずだ。それなのに、阿部勇樹は、どうして、ああも簡単にケイヒルを放してしまうのだろう?

完全に裏を取られたとか、ケイヒルが視界から消えていたわけではない。最初はケイヒルを捕まえに行きながら、最後は放してしまうのだ。とくに逆転を許した2点目、ゴール前の混戦から抜けてきたところにケイヒルが走りこんできて決めたわけだが、最初はケイヒルにはぴったりと阿部がついていた。ボールも、ケイヒルも視野の中にあったはずだ。それなのに、簡単にフリーにしてしまう。

この数年を思い返しても、阿部のミスから失点した場面が、いったい何回あったか!オーストラリアとの試合でも、2失点の場面以外にも、競り合いのところで競りに行かずにむざむざ相手にボールを渡してしまってタッチラインに救われた場面もあった。ミスなら仕方がない。あるいは競り合いで負けるのも仕方がない。ファウルを犯してFKやPKを与えることも仕方のないことだ。だが、競りに行くべき場面で競りに行かずに逃げてしまうのでは、フットボーラーと名乗る資格はない。ワールドカップ本大会では、オーストラリアなんかよりも、はるかに強くて、上手くて、ズル賢い相手と戦うわけである。

日本という国は、「攻撃こそベスト」と考えるすばらしいサッカー文化のある国だから、「あと1年でヨーロッパなどの強豪に勝てるようになるか? 点を取れるようになるか?」という議論が盛んであるが、その前に「日本の守りが通用するのか?」も考えなくてはならない。

「前からプレッシャーをかけてボールを奪いに行く」というのが、現在の日本代表の守備コンセプトである。そういう守備で高い位置でボールを奪うことでしか攻撃の展望が開けないし、最終ラインで勝負したら負けるのは分かりきっているから、岡田監督の考え方自体は正しい選択だと思う。そして、そのコンセプトをとことん突き詰めて行くことも大事なことだ。だが、どんなに習熟したとしても、高い位置からのプレッシャーで90分間守りきれるはずはない。オーストラリアや、ウズベキスタンや、カタール程度の相手に対しても、そういう守り方が機能しない時間が長かったのだ。これからの1年は、そのコンセプトを徹底することとがまず大事だが、同時に、それが機能しなくなったときにどう守って、どう攻めるのかを考えなければならない。

日本のDFラインが世界の強豪FWと対峙して止められるのか?

中澤と闘莉王のラインがそろっていれば、アジア相手なら鉄壁かもしれない。闘莉王1人で戦ったオーストラリア相手でも、流れの中からは簡単には破られなかった。だが、世界のトップクラスの国の攻撃力を中澤と闘莉王がすべて跳ね返せるとも思えない。相手は、守備に弱点のある内田篤人が攻撃参加した背後のスペースを狙ってくるだろうから、そのスペースをカバーしながら中央を守り切ることは不可能だろう。やはり、本番では中澤、闘莉王の前に、守備の強いMFを置き、守りの局面ではスリーバック気味にして守るしかないのではないか……。

98年のフランス・ワールドカップでも、予選では4バックで戦った岡田監督は本番前にはまずスリーボランチを模索し、最終的にはスリーバックを選択した。「攻撃がベスト」のナイーブなサッカー文化を持つこの国の中で岡田武史は生粋のリアリストである。ベスト4を狙うには守備が大事なのは重々承知していることだろう。

オーストラリア相手にも今野泰幸はボールの奪い合いで勝っていた。両サイドバックに内田と長友を置いて、攻めの起点とするのなら、中盤での攻撃の人数を1枚削っても、中盤の底に今野を置くべきなのはないだろうか?

後藤 健生 06月18日18:22


★プレミアリーグ関連番組 放送予定
6月18日(木)22:00 08/09 プレミアリーグ・ワールド2009 #3 J sports 2
6月20日(土)18:00 08/09 プレミアリーグ 総集編 #1 レビュー・オブ・ザ・シーズン J sports Plus
6月21日(日)22:00 08/09 プレミアリーグ 総集編 #2 ゴール・オブ・ザ・シーズン J sports Plus

※リピート放送もあります。詳しい放送予定はプレミアリーグ特集ページから

※シーズンオフ中の移籍情報や現地ニュースを更新中!
スポナビブログ『J SPORTSプレミアリーグナビ』はこちらから

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

おすすめ番組

2010 J1 第2節-3 

ベガルタ仙台 vs. 大宮アルディージャ
3月16日 15:00〜17:00
J sports 1

09/10 プレミアリーグ 第30節-2 

サンダーランド vs. マンチェスターC
3月16日 17:00〜19:00
J sports 2

本サイトで使用している文章・画像等の無断での複製・転載を禁止します。
Copyright© 2003 - 2006 J SPORTS Broadcasting Corporation All Rights Reserved. No reproduction or republication without written permission.