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02月12日

【後藤健生コラム】課題もはっきりしてきたオーストラリア戦

オーストラリア戦は、日本が90分間にわたってゲームを支配した。右サイドを中心に何度も相手の守備を崩してチャンスを作り、中澤がワントップ気味のケイヒルを封じ込めてほとんど危ない場面を作らせなかった。

もっとも、そういう展開になったのは、オーストラリアが予想以上に慎重だったからでもある。4人のDFラインの前に3ボランチで守備ラインを敷き、日本にボールを持たせた上で、ゴール前のスペースをしっかり埋め、攻撃はカウンターに徹していた(日本が無理に深追いしていたら、カウンターでやられていた可能性も高い)。ともに、現時点で他の3か国を勝点で上回っており、0−0の引き分けは予選突破のための星勘定としても両者ともに納得できるところだ。とくに、アウェイで、しかも勝点で日本を上回っているオーストラリアとしては、守備的な戦いは当然の選択だったろうが、しかし、あそこまで押し込まれるのは想定以上でもあったはず。よほど、コンディションが悪かったのでもあろう。

オーストラリアはこれが3試合目のアウェイだったが、これまでのアウェイはウズベキスタン(タシケント)とバーレーン(マナマ)での試合。どちらも、ヨーロッパからなら5〜6時間程度のフライトであり、今回の横浜のような長距離移動は初めての経験だった(彼らにとっては、じつはホームゲームが最も過酷な移動となる)。もっとも、「日本はホームなのだからコンディションがいいのは当然」というわけではなかった点も注意しておきたい。つまり、2月11日は日本のサッカー界にとってはシーズンオフ中なのである。

ジーコ監督時代にも、トルシエ監督時代にも、2月にまともなゲームができたことはこれまで一度もなかった。昨年の3次予選のタイ戦(2月6日)も、けっしていい内容のゲームではなかった。それに比べて、オーストラリア戦の日本はすばらしい仕上がりぶりだった。これは、岡田監督以下、日本人スタッフの努力の賜物だ。日本人選手の身体的な特性を知り尽くしている彼らは、指宿キャンプからコンディショニングに取り組んできた。天皇杯で準決勝まで戦ったチームの選手は招集を免除し、イエメン戦のあとにそれらの選手を取り込み、さらに調整が遅れていた遠藤と闘莉王をフィンランド戦で復帰させ、オーストラリア戦直前に欧州組が合流するという、まるでパズルのようなチーム作りが功を奏した。

日本がGKを除いてベストメンバーを揃えることができ、しかも、良好なコンディションで試合ができたことによって問題点(=課題)もはっきりした。2006年のドイツ・ワールドカップでは、日本はコンディショニングに失敗した。それが、最大の敗因だったし、そういう負け方をしてしまったのでは、結局「何が真の課題だったのか」がわからなくなってしまうのだ。その点、今回のオーストラリア戦では、「現時点で日本代表に何ができて、何ができないのか」ということが実にはっきりと理解できた。

「できたこと」の(1)は、右サイドからのパスをつないだ狙い通りの攻めである。サイドバックの内田が積極果敢に攻め上がり、中村俊がそれをサポート。そこに長谷部も加わっての攻めは昨年秋の時点に比べても一段とスムースさを増してきた。そして、前半の立ち上がりから、右からの崩しで何度もチャンスができた。「できたこと」の(2)は、玉田と田中達のツートップ。運動量も豊富で、前線からボールを追いかけて、相手の攻めを遅らせて、高い位置でボールを奪おうという、このチームのコンセプトを実現させた。

しかし、内容は良かったが、結局、あれだけ攻めながら、無得点での引き分けに終わったのも事実である。まず、右サイドに比べて左サイドがバラバラだったこと。サイドバックの長友も、MFの松井(大久保)も、個人的には頑張っていた。松井なども、代表でのプレーとしてはこれまでの中でも出色だった。だが、チームとしては機能せず、個々がバラバラに相手に挑みかかっただけ。松井も、大久保も、自らが仕掛けていく選手ではあっても、中村俊のように周囲を使える選手ではないし、個人の仕掛けだけですべてを変えるほどの力はない。

「できなかったこと」の(2)は、結局シュートまでいけなかったこと。玉田も、田中達も、よく動いてチャンスは作ったが、決定力は今ひとつ。とくに、2人のFWが同タイプなのは問題である。ストライキングパワーを持った、あるいは決定力のあるFWが必要なのは間違いない。中澤と闘莉王のバックアップ問題と並んで、以上の2点が今後の最大の課題だろう。左サイドでは松井と大久保、そして香川がこれまで使われてきたが、見直しも必要だろう。たとえば、家長とか本田圭、梅崎などが、今後急成長してくれればいいのだが(あるいは宇佐美でもいい!)。

ストライカーについては、やはり待たれるのは高原の復活だろう(新シーズンに向けて、浦和では高原は順調な仕上がりのようである)。あるいは、セリエAのカターニアでワントップを張っている森本も、いずれは試してみる価値はあるだろう。次の試合は3月28日のバーレーン戦である。Jリーグ開幕から1ヵ月弱の時点でのゲームであり、日本は絶好のコンディションで戦えるわけで、勝利は間違いない。ただ、この試合に関しては1週間弱の準備期間しかないので新戦力を組み入れることは難しく、これまでのメンバーで、これまでと同じ戦い方で戦うしかない。

新戦力の補強があるとすれば、キリンカップと最終予選3試合が行われる5月下旬からの時期だ。昨年も、代表が約1か月合同トレーニングを行ったこの時期に、今の代表の骨格が作られたが、今年もこれから始まるJリーグで各選手のプレーがチェックされ、5〜6月に新戦力の組み入れが行われるはず。そして、その集大成がオーストラリアとのアウェイ戦となる。メルボルンで行われるこの試合は「消化試合」になってしまうだろうが、チーム力を上げた日本代表の完勝を期待したい試合である。あの程度のオーストラリアに勝てないようでは、「世界を驚かせること」は不可能なのだから。

後藤 健生 02月12日22:46

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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