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12月30日

【後藤健生コラム】高円宮杯優勝のFC東京U-15はカテナッチョ!

守備の意識の向上は、これからの日本の大きな課題

12月には、いくつもの大会が同時並行的に開かれ、サッカー観戦者には休むヒマも与えられない。29日(世間的には月曜日だったらしい)には、東京の国立競技場で昼前から高円宮杯全日本ユース(U-15)決勝が行われ、続いて、午後には天皇杯の準決勝が行われた。そして、翌30日は高校サッカーの開幕だった。

クラブ・ワールドカップ以来、中2日、中3日での連戦を戦っているガンバ大阪は多くの負傷者も抱えており、出場している選手たちも疲労困憊という状態。いつものような攻撃的な姿勢を打ち出すことはさっさと諦めて、横浜F・マリノスの攻勢を跳ね返し続け、延長後半の残り3分という時間にカウンターから山崎雅人が決めて、決勝進出を手繰り寄せた。コンディションを考えて、「今日はしのいでカウンターを狙う」という考え方を徹底し、それを実行してみせるあたりが、強いチームである証拠だろう。ガンバ大阪といえば、「攻撃的」と言われるが、いざとなれば守り勝ってしまうあたりがその底力なのだろう(ちなみに、日本から帰国してから早速連戦を強いられているマンチェスター・ユナイテッドもプレミアリーグで1-0、1-0と渋い勝ち方ながら連勝して、その底力を見せている)。

その天皇杯準決勝の前に行われた高円宮杯決勝でも、FC東京U15深川が守備の能力の高さを生かして優勝を飾った。試合は、アルビレックス新潟がパスをつないで攻め込み、立ち上がりからFC東京陣内での試合が続いた。シュート数では(90分)14対6、CKの数でも5対1と、いずれも新潟が数字の上ではFC東京を圧倒していた。だが、FC東京のセンターバックは強力で、攻められても、攻められても、けっして崩れることはなく、跳ね返し続けたのだ。さらに、GKも見事なセービングを見せる。

そのFC東京は、「専守防衛」というわけではなかった。

強力なカウンターという武器を持っていたのだ。スリートップの3人(中央に中川大海、左に二瓶翼、右に大森涼太)、さらにトップ下の橋本拳人が、いずれもドリブルで突破できる力を持っており、彼らは2人か3人だけで相手の守備を崩すことができるのだ。そして、後半に入って54分、FKからのこぼれ球を中川に代って入ったばかりの渡辺直輝が決めて、これを守りきったFC東京が優勝した。

こういう勝ち方は、偶然のことではない。

決勝の1週間前に名古屋で行われた準々決勝。この試合でもヴィッセル神戸に一方的に攻め込まれる展開だった。とくに前半は、FC東京のシュートはわずかに2本。僕の観戦ノートにも、FC東京の攻め込みの場面はたった2回しか記入されていない。ところが、FC東京は、その2回のチャンスで2点を取ってしまい(1分、33分)、神戸の反撃を1点に押さえ、さらに後半にも開始1分で追加点を奪い、なんと3-1で勝利を飾ったのだ。堅い守りで相手に攻めさせておいて、前線の選手の個人能力を生かして、2人か3人しか人をかけずにカウンターから点をとってしまう。まるで、カテナッチョ全盛時代のイタリアのクラブみたいな勝ち方である。

「守備を固めてカウンター」というと、ネガティブな印象を持たれるかもしれない。

だが、これもサッカーの戦い方の1つである。その守備が、慎重に過ぎる守備。バックパスばかりとか反則だらけではいけないが、積極的に相手のボールを奪いに行く守備。あるいは、反則をせずに粘り強く守る守備であれば、それは「建設的な守備」と呼ぶことができる。そして、もし、個人能力で攻め崩せるだけの攻めのタレントがいるのなら、それを生かすのも戦い方として間違ったやり方ではない。攻撃を「善」とし、守備を「悪(=必要悪?)」とする傾向が、日本にはある(それでいて、実際に攻撃的な戦い方をしているチームは数少ないのだから始末が悪い)。

だが、サッカーは「攻撃的な戦い」と「守備的な戦い」に分けることなどできないはずである。いい守備をして、いい形でボールを奪えれば、攻撃のチャンスは必然的に増えてくる。ボールが奪えず、あるいは自陣深くでスライディングで奪っているのでは、攻撃陣にいいボールを供給することはできない。いい守備があってこそ攻撃につながるのだし、しっかり攻撃する力があるからこそ、守りきることもできるのだ。そうした意味で、守備力の強化は今の日本のサッカーにとって大いに必要なものと言っていい。強力なDFが存在すれば、結果として優れたFWも育ってくることだろう。日本の中盤は今では世界的にもかなりのレベルにある。次に必要なのは好守に渡っての、ゴール前での能力ということになる。

しかし、現場ではすでにそういう方向への変化は見え始めているのだ。

そうした守備意識の重要性を意識した戦いが、高円宮杯決勝のFC東京のサッカーであり、その後に行われた天皇杯準決勝でのガンバ大阪の戦いぶりであった。そう思って、翌日の全国高校サッカー選手権の開幕を見に行ったら、やはり、守備重視の傾向の一端を見ることができた。開会式で選手宣誓のときに、各校のキャプテンが整列するのだが、キャプテンの背番号を見ると「1」とか、「2」、「5」などが多かったのである。「1」はもちろんGKだし、「2」や「5」はDFである。昔だったら、チームでいちばんうまい選手はFWをやらされるから、キャプテンの背番号には「9」が多い時代もあったはずだ。うまい選手がみんなMFを目指していた頃なら、「10」が多かったのではないか?

だが、今は後ろのポジションの選手がキャプテンに選ばれる時代なのだ。高校選手権開幕戦。鹿島学園(茨城県)と一条(奈良県)の試合でも、両チームのキャプテンはともに背番号「2」のサイドバックだった。日本人は大きさや高さ、パワーが足りないから、センターFWやセンターDFが世界と伍して戦うのは難しいことはもちろんだ。だが、世界と戦っていくためには、そんなことは言っていられない。世界最高のDFであるカンナバーロやイバン・コルドバなどは、決して長身ではない。スピードと間合いを詰めるタイミングのうまさで、彼らは世界の巨漢FWと戦っているのだ。また、先日は、若き日本人FW(森本貴幸)がセリエAという難しいリーグでワントップとして出場して、2ゴールを決め、「大きさ」では劣っていても、スピードという武器で戦えるということを証明した。

12月も末の2日間の観戦で、僕は守備の重要性ということを考えたのである。

後藤 健生 12月30日19:43

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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