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11月04日

【後藤健生コラム】天皇杯4回戦を突破した広島

パスは完璧ながら決定力不足……これって、もしかして?

J1勢が登場した天皇杯4回戦。浦和レッズが愛媛FC相手に昨年のリベンジを果たした試合を含めて、J1勢は下位チームに対して苦戦を強いられたものの、強豪が倒されるジャアント・キリングはほとんど起こらなかった。ナビスコとACL決勝に残った3チームの試合はまだ行われていないが……。

そうした中で唯一、J2勢がJ1を倒したのが、すでにJ1昇格とJ2優勝を決めているサンフレッチェ広島とJ1での残留争いで苦しい戦いを続けている東京ヴェルディの試合。予想(期待)通り、J2の広島が見事に東京Vを破ったのである。それも、試合内容が圧倒的だった。まあ、本来は選手層を見ても、広島がJ2にいる方がおかしいのだろうが、昨年からペトロビッチ監督が手塩にかけて育ててきた若いチームは、すばらしいパスワークを披露し、終始東京Vを圧倒していた。シュート数は東京Vの5本に対し、広島は17本である。

佐藤寿人をワントップに置き、森崎浩司と柏木陽介がシャドーストライカー。青山敏弘と森崎和幸のボランチがサポート。右に李漢宰(リ・ハンジェ)、左に服部公太と両サイドも強力だ。センターバックのストヤノフや森崎和からのロングボールも交えるが、とにかく広島はパスをつなぐ。パススピードもあり、すべての選手がどんどんポジションも入れ替えて、流動的に動き、ワンタッチでパスをつないでフリーの選手を作ってくる。

40分にGKの佐藤昭大を起点にパスをつなぎ、相手陣内に入ってから柏木、服部、森崎浩、柏木とワンタッチでつなぎ、柏木がドリブルで割って入って、佐藤寿がシュートした(右ポスト脇にはずれた)場面などは圧巻だった。ロスタイムには、右の李漢宰からのグラウンダーのクロスを佐藤寿がシュートしたが右ポストに当った(佐藤がオフサイド)が、これも決定的。守備でも、青山や最終ラインの森脇良太、槙野智章といった若いDFがよく頑張った。

一方、東京Vは、攻撃はディエゴにお任せといった感じで、あまり動きもなく、ほとんど広島に脅威を与えられない。中盤での集中した守備に手を焼いて、途中から苛立っていたディエゴが、前半のロスタイムにストヤノフの挑発に報復。一発退場となってしまう。ところが、後半はディエゴを失い、1人少なくなった東京Vが危機感を持ち、また、ディエゴという中心選手を失ったことで1人1人の運動量が増し、むしろ前半よりいい形を数多く作るようになる。

しかし、結局両チームともゴールは遠く、延長入りかと思われた後半の89分、左から右に振ったボールを途中交代で入った楽山孝志が折り返し、これをやはり交代出場の高柳一誠が決めて、ようやく広島がゲームに決着をつけた。文字通り「人もボールも動く」広島のパスサッカーは、J1でも滅多にお目にかかれないほどのすばらしい内容だった。観戦に訪れたオシム前日本代表監督も、納得した試合ぶりだった。しかし、それにしても、あれだけ攻め、17本のシュートを打ちながら得点が終了間際の1点というところが悲しい現実でもある。

記者会見でその点について質問されたペトロビッチ監督は、「選手はベストをつくしている。しかし、私がどいうい選手を持っているのか……。足りないものは分かっている。そう言えば、分かる人には分かるだろう」と、明言はしなかったものの、ストライカー不足を嘆いてみせた。それにしても、ワンタッチの流れるようなパスをつないで、相手を圧倒しながら、最後の詰めの場面で人数も足りず、強引なシュートを打つこともせず、なかなか点が取れなくて見る者をイライラさせる。そんなサッカーを、われわれ日本人年に何度も目にする。

そう、広島のサッカーは、日本代表のサッカーとまるで同じではないのか!代表監督時代のオシム氏も、きっと愛弟子ペトロビッチと同じように、ストライカー不足をグチりたかったに違いない。岡田武史氏も、同じような心境だろう。ペトロビッチ監督は、クラブの財政状況さえ許せば、他チームからストライカーを引き抜くことも、あるいはブラジル人などのストライカーを買うこともできるのだが、日本代表の場合はそうもいかないし……。

広島が「順当に」東京Vを破った試合を見た翌日は、J2で3位に付けているベガルタ仙台がFC東京に挑んだ試合を見た。18分に梶山洋平のミドルシュートがバーに当って跳ね返るところを詰めた平山相太が胸に当ててFC東京が先制。しかし、その後は仙台が、FC東京の中盤に対してスリーボランチで封じ込めを図り、これが効を奏して、FC東京は1週間前の鹿島戦のようなサイド攻撃を仕掛けられず、仙台の善戦が光った試合となった。72分には、左サイドから崩して最後は中島裕希が落としたボールを中原貴之が決めて仙台が同点に追いつく。しかし、その後、何度かあった決定的なチャンスに決めきれず、逆にロスタイムに入って再び平山に決められて、万事休した。

チャンスもあっただけに、手倉森誠監督は「決定力不足」を嘆いた。J1とJ2の試合を見ていると、まさに決定力で勝負が分かれる試合が多い。かつて、J1とJ2の差は「決めきれる外国人がいるか、いないかだ」と決め付けたのは、元日本代表監督の加茂周氏だった。そこで手倉森監督に「『決定力』というのは、具体的に何の差なのか?」と聞いてみた。「ペナルティーエリア内のこぼれたボールに、FC東京の選手たちは力を抜いてシュートできる。うちの選手たちは、気負って勢いのままで打ってしまう。リラックスして打てるようになれればいいのだが……」というのが、その答えだった。

ううん、これって、まるでジーコの言葉のようではないか。ますます、日本代表と同じ病状ではないか……。つまり、要するに、「世界」という名の戦場に出たら、日本代表というのはJ2上位といった位置づけなのだろう。

後藤 健生 11月04日14:45

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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