とあるタブロイド紙の電子版にこんな記事が掲載されていた。

マンチェスター・ユナイテッドが、30年来のシーズンチケットホルダーに対し、アウェイゲームでの無断欠席を理由に、向こう1年間、アウェイゲームの出入り禁止処分を決定。

なんでも、記事によると、30年以上にわたりシーズンチケットを保持する年季の入ったマン・ユナイテッドファンであるグレーム・クラークさんは、アウェイのハル・シティ戦のチケットを持っていたのだが、当日の朝、俄に具合が悪くなり、ハル行きを見合わせ、その旨をクラブに連絡せずに別のファンにチケットを譲ったのだが、これがクラブのチケットに関する原則に反していたため、その別のファンはスタジアム入りを拒否されたとのこと。要は、チケットはその当人にのみ有効であり、欠席の際は、必ず事前にクラブへ連絡するように、とのことらしい。割り当てられているチケットの枚数上、行きたくても行けないファンが大勢いる中での無断欠席は許すまじ、ということであろう。

クラブの言葉を借りると、今回の無断欠席は「恥ずべき最低の」行為だそうで、何千という落選したチケット応募者に示しをつけるため、クラブ側はクラークさんに12ヶ月のアウェイチケット購入申込禁止(要は出入り禁止)処分を下したのである。

貴重なアウェイチケットを持っていたにもかかわらず、体調を崩したためハルへの小旅行を楽しめなかったばかりか、ラシュフォードの劇的な勝ち越しゴールを見逃し、おまけに無断欠席が祟ってペナルティまで喰らってしまったクラークさんは酸鼻の極みであるが、この出来事をクラークさんの立場から、「世知辛い世の中になったもんだ」と、結論付けるのは少々安直のような気がする。

別に、クラブ側を擁護するわけではないけれど、アウェイチームに割り当てられたチケットをクラブが管理している以上、申込や購入、そしてその使用に対し、明確な決め事はあって然るべきだし、そのルールに抵触した者に対し、定められた罰則を科すのは致し方ないところではある。今回の件に関しては、余りに杓子定規に過ぎるし、人情味が全く感じられないとは言え。

ただ、ぼくはこの記事を呼んで、別の理由で、居心地の悪さというか、深酒をして〆のラーメンまで食べてしまうフルコースの暴挙に出た翌朝の胃袋のような気持ち悪さを覚えた。多少穿った見方かもしれないけれど、これには伝える側が読み手に、「モウリーニョがサポーターに求めるコミットメント」みたいな考え方を想起させるような魂胆が見え隠れしているような気がするのである。もちろん今回の件はモウリーニョの与り知らぬところで発生したことなのだろうけれど、実際、記事の末尾にぶらさがっている読者のツイートには、「まあ監督が監督だから」みたいな意見も散見され、記者としては「してやったり」といったところか。しかし、そう考えると、やはりなんだか気持ちの悪い記事である。

たとえ伝える側に他意はなかったとしても、恐らく、別のクラブでもこうしたアウェイチケットに関するポリシーは存在するはずで、どうせならその辺も調べて記事の内容を掘り下げて欲しかったが、ほんの表層だけを切り取って提示するのがタブロイド紙の存在意義であると言ってしまえばそれまでである。それにしても、趣味であるはずの(少なくとも生業ではない)フットボール観戦に「無断欠席が許されない」という責任がついて回るのは窮屈な話ではある。ぼくとしては、例えば「突然身内に不幸が起こった」、あるいは「いきなり目つきの悪いドーベルマンに噛まれた」なんていう理由でアウェイチケットを持っているサポーターからクラブ側に連絡が行かなかった場合も、前例や例外を作ることなくクラブの担当者が今回同様に毅然とした態度で処断できるのか、運営側の今後が気になってしまう。

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平床 大輔
1976年生まれ。東京都出身。雑文家。1990年代の多くを「サッカー不毛の地」アメリカで過ごすも、1994年のアメリカW杯でサッカーと邂逅。以降、徹頭徹尾、視聴者・観戦者の立場を貫いてきたが、2008年ペン(キーボード)をとる。現在はJ SPORTSにプレミアリーグ関連のコラムを寄稿。

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