イングランドのブライトン。 9月19日。海辺の保養地の昼前の青空、そして、数時間後の歓喜を思い出す。 あれから1年、ジャパンがスプリングボクスを打ちのめしてから、もう、そんなに時間は流れた。

ジャーナリズムは「奇跡」が好きだ。 注意しないと世界が奇跡で埋まってしまう。 あの世紀の金星は奇跡のようであって、やはり、そうではない。 振り返れば「幸運のまぶされた必然」なのである。 ここで、ひとまずリオデジャネイロの奇跡、じゃない、幸運のまぶされた必然について書きたい。

坂井 克行

先日。東京・秩父宮ラグビー場で、トップリーグの豊田自動織機シャトルズの 複数ポジションをこなすユーティリティー・バックス、坂井克行と立ち話をした。 リオデジャネイロでニュージーランド(NZ)とケニアとフランスを破り、4強入りを遂げたセブンズ代表のヒーローである。 簡単に述べるなら「オールブラックスをやっつけた男」だ。

もっともNZ国民は「ジャパン、リオでオールブラックスを破る」という世界の報道に異議アリの声を挙げた。 「オールブラックスとは15人制代表のみに用いる名称である」と。 NZヘラルド紙の読者投票では「68%」が「オールブラックスという呼称を7人制代表からはぎ取れ」と訴えた。 もっとも、おもに商業的要請から「オールブラック・セブンズ」と呼ぶことは認められていたらしい。いずれにせよジャパンにとっては関係ない。 「7人制のオールブラックス」に勝ったのである。

さて、副島亀里ララボウラティアナラの同点トライ後、 坂井の勝ち越しゴールが見事に決まったのが残り1分8秒、 14―12のスコアのまま勝ち切るためには、次のリスタートがきわめて重要だった。 金メダル有力候補のNZは、いったんボールを手にしたら、 あっという間にトライを奪うだけの能力と経験を有している。 だから坂井の蹴り込むキックの質は問われた。 できれば再確保、そうでなくとも黒いジャージィのタレントたちを快適にさせてはならない

坂井の述懐。「トライ後のゴールよりも緊張しました」。ここで幸運の粒が空から一振りされた

同点トライのきっかけとなったのは坂井本人の重心の低いラン、 それを追いかけたNZのジョー・ウェバーがタックルをふりほどかれて肩を痛めていた。 リスタートの前に退場のためのカートが芝の上に入り、時計は止められ、 しばらく間(ま)があいた。「あれがよかったんです」。 気持ちを落ち着かせるための時間をもらえた。 ジャパンの7人は集合して意思を統一した。左右に3人ずつ分かれる。 坂井は右が利き足なのでボールの軌道が逃げないよう左側に蹴る。 それを空中戦のエキスパートでもある主将の桑水流裕策が跳んで獲得する。

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