今年、筆者はル・マンには行かなかった。

理由はさまざまあって、仕事の都合がいちばんなのだが、LMP1の過激な技術競争にちょっと気分がついていけなくなっていること、たかが4年連続で取材しただけの一介の日本人のウェブ屋が、偉大なサルト・サーキットのなかでできることに限界を感じていたことなど、いろんな理由があった(まわりのメディア仲間からは来るべきだとは言われていたのだが)。このコラムも、現地であの衝撃的な瞬間を見ていない前提で書いていることをご承知おきいただきたい。

筆者も多くの視聴者の皆さんと同様に、J SPORTSオンデマンドを使って2016年のル・マン24時間を見ていた。「これはさすがにトヨタが勝つだろう」と実際に自分も思っていた。個人的にはこういう仕事をしているからには、特定のメーカーに肩入れすることは極力しないと決めている(それは日本メーカーだろうとドイツのメーカーだろうと)。とは言え、4年間現地でその戦いを見てきただけに、ひとりの日本人として感慨深い気分にもなった。

それが、あの結末だ

中嶋一貴

中嶋一貴

トヨタ優勝は確定だと思われていた、残り3分。中嶋一貴の乗るトヨタ5号車が停止した。

実況を務めていた中島秀之さんも「こんなル・マンは見たことがない」とおっしゃられていたが、まさにそのとおり。こんな残酷なル・マンはないだろう。今年、トヨタはWEC世界耐久選手権の他のレースを、ある意味“犠牲”にしてまで、ル・マンを意識したクルマを作り上げてきた。それが功を奏し、レースの展開では勝者にふさわしい戦いを展開してきた。TS050ハイブリッド、6人のドライバー、チーム。それらは悲願に届くだけの仕事をしてきたと言えるだろう。

トラブルの原因は、過給圧をコントロールするシステムという情報が入っているが、正式にはまだ明かされていない。2014年もそうだったが、おそらく本当に細かなトラブルであろうことは、ストップしてから1周して戻ってきたことからも想像がつく。本当に小さなことで、23時間54分走りきってきたクルマが突然その力を失ってしまったのだ。

レース後、現地で取材した仲間からは「チームスタッフは皆ピットの裏で号泣していた」と聞いた。それはそうだ。もし自分がチームの一員だったら、きっと3ヶ月は立ち直れない。1年以上積み重ねてきた努力が一瞬で水泡に帰する気持ちはどれほどだろうか。勝利を争ったポルシェやアウディの首脳陣が、トヨタのスタッフを慰めたと聞くが、同じレースを戦った仲間として、自然の行動なのだろう。

ただ、そんな悲しみのなかで、あえていま、遠く日本から映像を通じて見ていた筆者はこの言葉を言いたい。「トヨタよ、敗者のままでいいのか。」と。

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