2006年トリノ五輪から早10年。フィギュアスケートはどのように隆盛してきたのか。過去10年の歴史=ディケイド(decade)を彩るトップスケーター達が逆境や後続からトップに立ち、“突き抜けた”瞬間を振り返る。

真のレジェンドスケーター
エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)【シニア活躍時期:1997-現在】

最年少記録や五輪4大会連続表彰台など、数々のフィギュアスケート史上初の偉業を打ち立ててきた4回転ジャンパー。個性的で独特な編曲のプログラムを愛でるファンも多い。
アレクセイ・ヤグディン(ロシア)と熾烈なライバル争いに敗れ銀メダルとなった2002年ソルトレイクシティ五輪以降、出場した大会の殆どで優勝して独走態勢に入り、トリノ五輪では他を寄せ付けない圧倒的な演技で金メダルに輝き、雪辱を果たす。
その後、アイスショーを中心に活動していたが、バンクーバー五輪シーズンに復帰。SP(ショートプログラム)FS(フリースケーディング)ともに4トゥループ+3トゥループを決めて大きなミスなく滑り切るが、1.31点差という僅差で銀メダルとなり、のちに4回転論争が巻き起こった。
怪我による長期戦線離脱を経てソチ五輪にも出場し、団体戦でのロシアの金メダル獲得に貢献した。個人戦では直前練習で脊椎を痛めて棄権するも、5度目となる平昌五輪への意欲を示し、ロシアの皇帝がどこまで突き抜けていくのかは計り知れない。

MIFの申し子
ジェフリー・バトル(カナダ)【2001-2008】

スケーティングの美しさやクリーンなエッジワーク、イナバウアーやイーグルなどのムーブ・イン・ザ・フィールド(フリースケーティングムーブ)で魅せることができる数少ないスケーター。その踊り方、曲の捉え方は、音楽と一体になった滑りに生かされ、現在の振付師としての飛躍にも繋がっている。
前年度世界選手権銀メダリストとして臨んだトリノ五輪では、SP6位から、FS序盤の4トゥループで転倒……などなかったかのように滑らかに立ち上がる。好演技でFS2位となり、銅メダルを獲得した。
その後、怪我による不本意なシーズンが続く中、4連覇がかかった2008年カナダ選手権ではパトリック・チャンに王座を奪われてしまう。しかし続く世界選手権で、美しいスケートと完成度の高い演技で優勝。いわゆる「クワドレス(クワド:4回転)」構成だったが出来栄え点でマイナスがなく、まさに完璧で突き抜けた演技だったと言えよう。

アーティスティックなスピナー
ステファン・ランビエール(スイス)【2001-2010】

数々のスピンの名手を生み出しているスイスのDNAを受け継いだ稀代のスピナー。『ポエタ』をはじめとする芸術性の高いプログラムにも定評がある。4トゥループやスリーターンからの3ループを得意とする一方、3アクセルは苦手としていた。
2005年世界選手権で4回転を計3回成功させて初優勝を果たし、以降世界のトップスケーターとして輝き続けた。トリノ五輪では直前に膝を負傷するが銀メダルとなり、表彰式で男泣きを見せた。続く世界選手権でも2連覇を達成した。
2008年10月に引退を発表したが、引退の原因であった怪我の痛みが改善されたためバンクーバー五輪シーズンに復帰。五輪では0.51点差で総合4位となったが、SP・FSともに自己ベストを更新し、SPでは男子シングル史上初となる演技構成点9点台をマークするという突き抜けた瞬間を見せた。

4回転の守り人
ブライアン・ジュベール(フランス)【2001-2014】

「クワドレス時代」にも4回転を跳び続けてきた4回転ジャンパー。2004年欧州選手権で優勝し、当時無敵の存在だったプルシェンコに勝った数少ない選手の一人。男らしい滑りが持ち味だが、スケ感のある衣装やルームランナーステップでも今なおファンを楽しませてくれている。
2006-2007シーズンは出場した主要国際大会の全てで優勝という輝かしい成績を残した。FSで史上4人目に4回転3回を成功させ、2007年世界選手権では右足甲の怪我を負いながらも初優勝を飾る。
母国開催となった2012年世界選手権では、総合4位と惜しくも表彰台とはならなかったが、SP・FSで持ち味を発揮。復活を印象付ける演技で会場を盛り上げた。
残念ながら五輪には縁がないジュベール。しかし欧州選手権10大会連続表彰台・世界選手権5大会連続表彰台などの記録を打ち立て、休養を挟むことなく息の長い活躍を見せた。4回転への突き抜けた思い入れを持った選手であった。

チェコをけん引してきた寅年スケーター
トマシュ・ベルネル(チェコ)【2004-2014】

美しく伸びやかな滑りとスピードに乗って跳ぶ美しい4回転の持ち主。当時困難であった、ショートの2つのステップで最高難度のレベル4を取るなど高いスケーティング技術を持っている。親日家としても有名。
2007年欧州選手権の銀メダリストとして出場した日本開催の世界選手権では、SP9位と出遅れるが、FSでは美しい4トゥループを2回成功。総合4位に入るとエキシビションで「日●本」鉢巻を逆さに巻いて大ブレイクし、日本での人気を確固たるものにした。
2007-2008シーズンはISUグランプリシリーズ・NHK杯で2位となり自身初のグランプリシリーズメダルを獲得し、「勇名トラ」の衣装を身に纏った欧州選手権では、並み居る強豪を抑えて見事初優勝。勢いに乗るかと思われたが、以降のシーズンは怪我が相次ぎ安定せず、トップの成績をキープすることは叶わなかった。
ソチ五輪での引退を表明していたが、急遽出場を決めた日本開催の2014年世界選手権。SPでは小芝居満載のプログラムを伸びのあるスケーティングに乗せて滑り切り、久々となるクリーンな演技に観客は拍手喝采。本人も喜びを爆発させ、自己ベストを更新した。エキシビションでは再び「日●本」鉢巻を今度はきちんと巻いて、7年越しのリベンジも果たした。

日本男子黄金期の立役者
高橋大輔(日本)【2002-2014】

日本男子として初めて世界ジュニア・世界選手権・ISUグランプリファイナルを制した、日本男子初のオリンピックメダリスト。高いスケーティング技術と世界一と評されるステップ、情感豊かに独特の世界観を表現できるスケーターで、長きにわたり日本男子フィギュアの黄金期をけん引してきた。
東京開催の2007年世界選手権、SPを大きなミスなくまとめ3位で折り返すと、FS冒頭の4トゥループをお手つきながらも降り、スピードとエネルギーに満ち溢れる演技で観客を惹き込んでいった。地鳴りのような声援の中、最後のストレートラインステップが終わり仮面を取って演技を終えると号泣。FS1位で日本男子初となる世界選手権銀メダルに輝いた。
2008年四大陸選手権ではFSと総合得点でワールドレコードを更新するなど日本男子フィギュアのトップとして活躍していたが、同年10月末の練習で右前十字靭帯を断裂。復帰シーズンに、『eye』『道』という名プログラムとともに2度目となる五輪出場を果たし、バンクーバー五輪で日本男子初となる銅メダルを獲得。続く世界選手権ではSP・FS1位の完全優勝を成し遂げ、FSでは両足着氷で回転不足となったものの世界初となる4フリップを試み、シングル選手初となるスピン・ステップオールレベル4を獲得するという、記録尽くしの大会となった。
その後現役続行を迷いながらも試合に出続ける中アクシデントに見舞われることもあったが、2011年世界選手権後に現役続行を宣言し、2012年世界選手権で表彰台に返り咲く。翌シーズンのグランプリファイナルでは日本男子初となる優勝を果たした。その直後の全日本選手権FSで見せた、何かが降りてきたような気迫のこもった『道化師』は、今でもスケートファンの間で語り継がれる、歴史に残る名演技となった。ソチ五輪代表選考要件をクリアした2013年NHK杯、SPでは凄みすら感じられるパフォーマンスを見せたが、余りにも演技に入り込み過ぎたのか、演技後もなかなか笑顔を見せることがなかった。

涙もろい猫足着氷ジャンパー
織田信成(日本)【2005-2013】

柔軟性を生かしたバリエーション豊富なスピン、猫を思わせるような柔らかく流れのある美しい着氷、コミカルな演技を得意とする。規定よりもジャンプを多く跳び過ぎ、涙もろいことでも有名。現役時代は数少ない子持ちスケーターでもあった。
シニアデビューの2005-2006シーズンは、大号泣で一躍有名となったNHK杯と四大陸選手権で初優勝を飾り、世界選手権初出場で4位入賞を果たし日本の出場枠増に貢献。同年代の高橋のライバルとして切磋琢磨しながら、日本男子フィギュアを引っ張っていく存在となる。
2年連続で世界選手権入賞を果たした2007年の夏、酒気帯び運転が発覚し、2007-2008シーズンは全ての試合とアイスショーを欠場。復帰シーズン、グランプリシリーズ復帰戦となった2008年NHK杯で優勝、全日本選手権でも初優勝を果たす。バンクーバー五輪はSP4位とメダルが狙える位置につけるも、FSで靴紐が切れるというアクシデントに見舞われるなどの減点が響いて7位入賞となった。
織田は、怪我で全日本選手権を欠場したシーズンなどをはさみながらも、グランプリファイナルに通算5回出場し表彰台に4回上るなど、競技人生を通して安定した成績を残した。中でも、急遽繰り上げ出場となったソチ五輪シーズンのグランプリファイナルで銅メダルを獲得したことは特筆すべきことだろう。

お知らせ

◆決定!!ISUフィギュアスケート選手権アーカイブ
2004〜2015年に開催されたISUフィギュアスケート選手権の中から、リクエスト数上位6大会を順次放送します。
選手達の名勝負を振り返りますので、ぜひお見逃しなく!

5月14日 (土) 午前11:00〜 J SPORTS4 【2012年 世界選手権 男子シングル】
5月28日 (土) 午前11:00〜 J SPORTS4 【2010年 世界選手権 男子シングル】
6月4日 (土) 午前11:00〜 J SPORTS4 【2007年 世界選手権 男子シングル】
6月18日 (土) 午前11:00〜 J SPORTS4 【2014年 世界選手権 男子シングル】
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