自らが築き上げた太陽の季節に終わりを告げられた時、彼を待っていたのはオレンジ色に輝く越後の白鳥だった。これから信頼を築いていきたい“ピカピカ”な仲間と共に男は今、その仲間を新たなステージへ導くためのチャレンジに、全身全霊でトライし続けている。吉田達磨。41歳。明晰な頭脳と滾る情熱を同じ質量で携えた男が語るPre-match Words。

Q:まずはプレシーズンのことからお聞きしたいのですが、プレシーズンを通じて開幕前までの手応えというのはいかがでしたか?

A:監督が僕に変わって、もちろん新潟というこの気候もあってキャンプに出ずっぱりの中で、選手と共同生活をして、良い意味でも悪い意味でもおとなしい選手が多いと。新しいトライを提案すると物凄く前向きというか、疑いを持たないというか、そういう形でやってくれました。それに対して凄く不思議な感覚と、あとは「これは責任が重いな」というか、話を聞いてくれたりシンプルにやってくれる以上は、良いものを提示し続けなければいけないなと。例えば曖昧さとかそういったものを持って、選手が選択する幅を与えたいというのが基本的な自分の考え方なんですけど、その幅の中で考えるというよりも「こうだ」ということに対して凄く動く選手たちだなというのが良くわかって、最初の高知キャンプで「そういうことなんだな」というのがお互いにわかりました。タイ、清水とキャンプをやって行く中で、吸収のスピードが本当に“ピカピカ”というか、真新しい感じを凄く受けて、やればやるほど入って行くというような。だけど、やればやるほど入って行くんですけど、「やれば」の“や”ぐらいの最初にやったことというのはすぐになくなっていくというのが最初の感触でした。とにかくベーシックなことを塗り直し塗り直しやって行かないといけないなとは思いながらも、そのパワーを出すということに関して“突っ走る”“ひたむきに走る”というこの2点は手応えもありましたし、「良いな」と思いながらプレシーズンは過ごしました。

Q:外から見ると昨年まで柳下監督が築き上げてきたことと、今まで吉田監督が志向してきたサッカーは違う部分も多いように思えますが、そのあたりの融合はいかがでしたか?

A:思い描いていたよりもかなり早かったです。まだもちろん課題の方が多いですけど、飲み込みということに関してはどんどん入って行くと。ただ、どんどん抜けて行くので、そのバランスだけで、とにかく「どんどん入れて行こう」とは決めていました。もちろん溢れない程度にですけど、どんどん入れて入れてということでやってきて、「とにかく走る」とか「厳しくマークする」とか、そういった去年までのベースは元々ある訳ですから、そこにはほとんど手を付けずに、映像で「こういう所は良いよね」「これはオマエらだったらもっと行けたんじゃないの?」「本当はもっと行けるはずなんじゃないの?」という所だけ刺激しながらチーム創りを運んで行きました。開幕から3試合やってはみましたけど、本当に上手くいくシーンと一気にガタッと地面の底まで崩れてしまうシーンという両極端さがあったと思います。ただ、勝敗云々を抜きにすれば、時間の配分とか上手くやれているという実感は僕にもコーチングスタッフにも選手にもきっとあって、それをどう勝負のアヤの所、肝の所で押さえて行くかという所が大事になってくるんじゃないかなと思いながら今はやっています。

Q:この3試合で上手くやれている部分として挙げられるのは具体的にどんな所ですか?

A:まず1つは後半の最後まで僕らの足は止まっていないということです。あとは「こういう風にやろう」「この試合はこうなるぜ」と言った通りに基本的になっている、負けた試合ではなってしまっているということですけど、「ここを抑えて行こう」「ここを突いて行こう」「こうやって点を取ろう」という狙いに対して、なかなか「こうしよう」「ああしよう」と言ったことがそのまま試合で起こるということはあまりないことなんですけど、結構実際にそれがこの3試合では起きていて、それはきっと選手の真っすぐさが要因かなと思います。それも彼らの「トライしよう」とする気持ちが起こしているものじゃないかなと思っていて、そこは本当にポジティブに考えています。

Q:先ほどからおっしゃっている『選手の真っすぐさ』というのは、色々な経験を重ねてきている吉田監督にとっても意外なものだったという感覚でしょうか?

A:真っすぐさが悪い方に出ることも、もちろんたくさんあると思います。「言われた通りにやろう」という責任を感じてやれる選手もいれば、「とにかく言われたことをやっていく」ということに対してのこだわりや責任感が芽生えないというか、イメージできない選手ももちろんいますけど、「こうやってやろう」ということをやることに関しては、予想よりも「やってくれるんだな」と思っています。

Q:それは日々のトレーニングから感じる部分ですか?

A:そうですね。良く話を聞いてくれますし、「言ったことをやろう」と「言われたことしかやらない」ということは二面性として誰しも持っていることですからね。でも、言われたことや要求されたことに応えようとしなければ何も生まれないというのが基本的なことで、要求に応えようという姿勢があれば、そこに初めて上手いとかできるできないということが加わってくることなので、そのトライするという姿勢に関しては凄く良いなと思っています。

Q:リーグ開幕戦となった湘南戦は今から振り返るとどういうゲームでしたか?

A:もう湘南のパワーが出てくるだろうと思っていました。当たり前ですけど、湘南はもうスタイルが長年継続されていて、誰もそれに対して疑いを持っていなくて、監督はああいう監督で、圧を受けるというのがわかり切っていた立ち上がりでした。基本的に僕たちは彼らの守備ではなく、彼らの攻撃とプレスの所をイメージしていて、彼らが起こしてくるであろうたくさんのアイデアに対して、おそらく最初は圧を受けるから、その中で「ああ、この感じは知ってるよ」という状況を創れないと、たぶん最初に飲まれてしまったらまだ跳ね返せないので、最初の圧をどう受けるかが大事でした。実際は予想以上に圧を受けて、15分くらいはままならない、攻め込まれる時間帯が続きましたけど、だんだん「ああ、これね」と選手たちに見えてきたものがあって、圧を受けるという中で得点する策と言ったらカウンターになってくるので、カウンターのトレーニングでやってきたことや、彼らが意識付けしてゲームに入った通り、空いてくるスペース、走り出していく場所、点の取り方というのは本当に思い描いていたようなものでした。なので、「どうなっちゃうんだ」という立ち上がりと、そこからだんだん慣れてきて「湘南はアレじゃん」というのが増えてきて、運良く得点が生まれて、そこからまた自分たちのペースが理解できて来たようなゲームでした。ただ、まだまだひ弱さのようなものも十分見せてしまった立ち上がりでしたし、「パワーあるじゃん」というのもしっかり見せられた前半の途中からでしたし、そういったものを得ながら、3−0にするチャンスがあって、3−0にできなくて、最後は2−1になって終わってしまうという、本当にだんだん良くなった試合でした。その勢いをそのまま次の試合に繋げたかったのですが、最後に点を取られて終わってしまうという、自分たちが確固たるものを持ち掛けて、また課題を突き付けられたというような、勝ったけどちょっと悔いの残るような試合だったかなと思います。

Q:試合後のインタビューの中で「勝って反省する部分がある」とおっしゃっていましたが、それは最後に1点を取られたことですか?

A:そうですね。勝ち切り方もそうでしたし、あとはボールが自分たちの手元になければいけない場面で相手に手放していたりとか、ボールをどうコントロールするかということにこだわりを見せ切れなかった試合でもありました。ですけど、どう攻めて、どう守って、どう切り替えて、ということにはとても良いこだわりを見せてくれて、持ったイメージをそのままぶつけて行ったような試合だったので、たくさん反省もしましたけど、自信にもなったという試合でしたね。

Q:ジェットコースターみたいな展開だった神戸戦は今から振り返っていかがですか?

A:神戸戦に関しては、まるで崩されるというような気配がない立ち上がりで、個人的なミスというか、彼らもシーズンに1回やるかやらないか、サッカー人生でも一度あるかないかというミスが、あの試合の前半の何十分かの間に2回起きたと。あれが基本的にハイライトにはなると思います。ただ、0−2から3−2まで引っ繰り返すということは一般的に考えたらすごく大変なことで、「3点を取って行くというパワーがあるんだな」というのを自分たちが理解できた試合だったと思うんですよね。最後の方はこちらの守備のオーガナイズそのものがなくなって、3点取って1回逆転までして、そこから4−3にされて、「勝ちに行きたい」というモードの中でなかなか安定させて時間を過ごすということが図れませんでした。4−3になっても一度は逆転できたんだから、一旦安定させて盛り返す時間というのは十分あったはずなんですけど、それができないくらいの喪失感というか、凄く儚い試合だったかなと思います。

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アルビレックス新潟 吉田達磨監督

◆ 2016 J1 1stステージ 第4節
3月19日 (土) 午後1:50〜 J SPORTS 2
アルビレックス新潟 vs. 柏レイソル
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