謙虚な人である。紡ぐ言葉はどれも丁寧で、まずは他者への感謝が口を衝く。ただ、頑固な人でもある。自らの中に通った芯を信じる力は、おそらく他者のどんな介在も必要としない。だからこそ、目の前の結果に一喜一憂することもない。積み重ねていくことのみが未来に繋がる唯一無二だと知っているからだ。渋谷洋樹。49歳。北の大地に育まれ、オレンジの燃える魂を心に秘めた指揮官が語るPre-match Words。

Q:まずは開幕までのプレシーズンに対する手応えというのはいかがだったでしょうか?

A:私自身が2年目ということで、選手もそんなに変わっていないので、キャンプで私自身が描いていた「ここまでは引き上げたい」とか、新加入選手の融合というのがプレシーズンでやらなくてはいけないことでした。特に攻撃の部分で「こういう形で攻撃をしたい」と。守備の部分ではある程度新加入で呼んだ選手は、基本的に守備をできる選手というか、そういうことを他のチームでもやってきて、そこで活躍していた選手だったので、すんなり入れるかなと思っていました。なので、攻撃の所の部分の底上げだったり、同じレベルの選手を置いて競争を意識させたいというのがあったので、プレシーズンではイメージはだいぶ選手たちには付いてきていたかなと思います。昨年からいる選手も含めて、例えばプレッシャーがある中でもっとより高いレベルでパスの交換ができたり、守備の部分ではもうワンランク強度あるプレッシャーが掛けられるのかとか、スライドの所が速くできるのかとか、本当にディテールの所の積み上げが一番でしたね。それがある程度、7割方イメージできたかなという風に思います。ただ、練習試合の相手が我々がボールを持つ時間の長い相手だったので、守備の所があまり実戦でできなかったのが1つマイナスというか、そこが足りないなという風に思っていました。

Q:昨年のJ2を1年経験した上で、改めてJ1に戻るに際して、J1とJ2の戦い方や戦う意識の違いという部分は、どういう所を選手に伝えてきましたか?

A:私自身は選手に「本当に1つ1つのスピードであったり、パワーであったりというのはたぶん全然違うよ」というのは話したんですけど、やっている選手たちは去年のままで何となく練習試合をやっても普通にボールを動かしたりできるし、守備でもボールが奪えることがプレシーズンの中ではあったので、去年と同じような感覚でトレーニングはしていたかなと思います。なので、もっともっと私が追求をしないといけないということを自分の中では感じていました。去年は私が新しく監督になって、「この人、何をやるのかな?」とか「どういう風にやっていくのかな?」ということで興味深く見ていた選手もいたと思うんですけど、1年経ったら「たぶん渋谷さんはこういう感じだろう」という風になってきたと思います。ただ、そこでスピードであったりパワーであったりというのは口酸っぱく言ってきたつもりですけど、ふたを開けてみたらやっぱりまだまだ足りなかったというのが今の2節終わっての現状ですね。

Q:開幕戦で言うと周囲の注目の1つに城福監督との対決という面があったと思いますが、率直に城福監督との対決はいかがでしたか?

A:城福さんとの対決というよりも、城福さんがピッチのテクニカルエリアに立っていることが大事というか、私は本当に城福さんがこうやってJリーグのチームを率いて、チームをレベルアップさせることが日本のサッカー界のためにもなると思っていたので、まずはFC東京に戻って監督をやっていることを私自身凄く嬉しく思いましたし、開幕の一戦目に城福さんと対戦できるということは私自身も本当に「こういうタイミングで会えるんだな」と、凄く嬉しかったです。ただ、対FC東京ということになると昨年Jリーグで4位ということと失点も少ないということで、その相手にどう点を取るかとか、攻撃陣も何人か変わって、日本人の良い選手を補強しているクラブですし、そこはもう決着力もあるので、どのように守るかということを考えていました。最初に対戦が決まった時はそういう感情もありましたけど、対FC東京という中では城福さんというよりは最終的には私自身も分析したり、どうやって戦っていくか考えていました。

Q:今から改めて開幕戦を振り返ると、どういうゲームだったという印象ですか?

A: FC東京さんが相当高い集中力で途中からやったかなというのがあります。たぶん最初は我々も凄く勢い良く入って、私は「慎重に入ってくれ」と選手には言いましたけど、思っていたよりもアグレッシブに行ってくれていたので、「ある程度ここまでだったらできるかな」と思ったんですけど、やっぱり時間が経つにつれて我々のロストやミスからとか、相手の守備のパワーとかが上回ってきてからは、相手の試合になったので、私がピッチ上で見ていても「去年とは全く違う姿になったな」と思いました。途中からはボールもほとんど持てなくなったので、相手に対して怖さもあったのか、相手のプレッシャーの強さだったり、相手の攻撃の仕掛けの速さだったり、そういう所は肌で感じてきてああいう形になったのかなという風に私自身は思っていました。

Q:会見で「もうちょっとボールを持ちたかった」とおっしゃっていたのは、実際に試合が始まる前は「もっとボールを持てる」と思ってらっしゃったということでしょうか?

A:そうですね。「少し持たせてくれるかな」という感じですね。「持てるかな」というよりは「持たせてもらえるのかな」と思っていました。でも、やっぱり思ったより持たせてもらえないというか、前からのプレッシャーも案外来ましたし、我々のGKからボール回しを始めようとしても全部前に行って、蹴ってセカンドボールを拾われてという試合になったのが、押し込まれる要因になったかなと思います。蹴るなら蹴るで、もうラインアップしてという割り切りが中途半端なゲームだったので、そこは少し反省材料です。もう少ししっかりとセットされて守備されるかなと思ったんですけど、そういう感じではなかったですし、そこは僕も「前から来たか」という感じだったので、「私たちの力を認めてくれているのかな」と思いました。城福さんは昨年も我々の試合をよく見に来られていたので、「プレッシャーを掛けないと持たれるよ」ということは相当選手にも言っていたのかなという風には凄く感じました。FC東京の1人1人が「凄く城福さんらしいボールの動かし方をしてきているな」というのはわかったので、そこはしっかりと守備の所で距離感を縮めていかないと難しいなと思いました。なかなかサッカーをやらせてくれなかったなと思います。

Q:「ムルジャ選手のプレスの位置が低かったことで、全体のラインが下がってしまった」という趣旨のことをおっしゃっていましたが、あれはコンパクトにするにしても全体をもっと高い位置に押し上げて戦いたかったということですよね。

A:それはもう本当にありました。ピッチ上でもずっと僕はムルジャに「ライン高く、高く」と言っていて。引くと完全にボールを持たれて、後ろの選手たちは引かざるを得ないので、やっぱり誰かが出て行けばスイッチというか、1人出て行くことによってたぶんコースは決まってくるので、それが守りたいからといって下がってしまうとどこでも出される状態になると。ただ、裏にはスペースがないので、逆に言えば後ろの選手たちがハッキリしていたのは、もう入ってきた所に行く、入ってきた所に行くということで、前向きな守備ができたのがゼロで終われた要因なのかなと思います。「引いたから逆にやられなかったのかな」という(笑)
なので、もしかしたら普通にやっていたら失点していたのかなと思いますね。

お知らせ

大宮アルディージャ 渋谷洋樹監督

◆ 2016 J1 1stステージ 第3節
3月11日 (金) 午後6:50〜 J SPORTS 3
ガンバ大阪 vs. 大宮アルディージャ
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