J SPORTSが誇るサッカープログラム「デイリーサッカーニュース Foot!」。
9月26日(金)はMC:倉敷保雄、そしてブラジルW杯の開幕戦で主審を務めた西村雄一さんをゲストにお迎えしました。西村さんのレフェリー論や、W杯の裏話を語っていただきました。

番組の一部を、テキストでお送りします。
それでは、今週のFoot! FRIDAY“ESPECIAL”をお楽しみください。どうぞ!

西村さんのW杯レビュー

――なんだかもうずいぶん昔のような気がしませんか?

西村:あっという間に過ぎてしまいましたね。

――クロアチア戦ではどんなことを心に抱いてホイッスルを吹こうとお考えになっていたんでしょうか?

西村:一番大事にしていたのは、どのくらい時間がかかったら選手がちゃんと落ち着くのかというのをよく見ていました。やはり最初は浮足立つと思っていたので、その部分をどこまで早い段階で落ち着いた状態に戻せるか。

――トレーニングのことを伺いたいんですけど、ブラジルに入られたのはどのくらい前ですか?

西村:10日くらい前に出発をして、全員が集まったのが1週間くらい前でしたね。

――そしてジーコ・フットボールセンターでキャンプを行われました。どんな所だったんですか?

西村:実は我々はコンフェデレーションズカップに前年度行ってリハーサルが済んでますから、すんなりとそこに行って練習をして大会に臨みました。FIFAもそういうところの準備は怠っていないですね。

――コンディションはどうでした?

西村:これもブラジルで同じように前年度に研修をしているので、どれだけフライトに時間がかかって、時差をなおすのにどれくらいかかるかはリハーサル済みなので、向こうに行ったら普通に過ごしていましたね。

――西村さんのチームは自然体で良い準備ができていたということですね

西村:やることは全てやって、あとはもうゲームを待つのみという状態でいました。

――ブラジル対クロアチア戦を振り返って頂きたいんですが、ゲームが落ち着くまでは時間がかかりましたか?すごくキビキビして西村さんが尖った鉛筆みたいな良い感じで、緊張感が漂っていると思って見ていたんですが

西村:選手たちが落ち着くまでの間に僕が浮ついていると影響してしまうので、冷静に丁寧に積み上げていったという感じですかね。

――世界で初めて、W杯でバニシング・スプレーを使った審判にもなりましたね

西村:これをジーコ・フットボールセンターで我々は何回も練習をしています。引く前までGKをジッと見て、そこでいいよって言ってから引き始めるんです。

――南米だと守らない人もいるけど、W杯ではおもしろいくらいに守りましたね

西村:本当にすばらしい効果を上げたと思いますよ。

――バニシング・スプレーの登場って、サッカーのやり方にも変化をもたらすような感じがしますよね

西村:よく言われるのが、我々審判員にとっては飛び出た選手がよくわかるから警告出しやすくていいよね、と。本来の目的は、フリーキックをあれだけ飛び出さないようにやると入る可能性が本当に増えるので、ゴールを生むためのスプレーなんです。もちろん守って頂きたいですけど、あの1本を引くことでプレーヤーがフェアプレーを思い出してくれれば大変効果があると思います。

――一方でクイックリースタートはレフェリー次第になっちゃいましたね

西村:その部分に関しても実は練習をしていて、引いてほしいという意思を大事にしています。私たちの都合で描いてはないですね。基本的にはプレーヤーはクイックスタートをしないという選択をしたということがわかって、初めてそこに入っています。

クロアチア戦の真実

――1対1で迎えた後半25分のことを思い出して頂きたいんですが、クロアチアのゴールでフレッジが倒れる。西村さんはPKというジャッジをする。説明をして頂いてよろしいですか?多くの人はこれがシミュレーションではないか?と考えたことによってクロアチア側は文句をつけてきた、というシーンですね。真実について教えて下さい

西村:この時に私のポジションから見たものは、角度によって見えるものが違いますし、リプレイによっても見えるものが違いますし、どちらのファンかによっても見えるものが違うと思います。その時にそれぞれ一番最初に思ったものを私自身は尊重します。そして私が見えたのが、DFの選手が後ろからFWの選手をホールドして相手を押さえてしまった。

――ホールディングというのが重要なんですね

西村:相手を押さえるのが、ボールに向かって押さえてしまった。この時フレッジ選手は、ボールが落ちてくるまでにシュートを撃ちたかったんですね。

――行為自体をまず西村さんが見極めたということですね

西村:はい、まず手がかかった。そのあとフレッジ選手のコントロールが真上から真下に落ちてくるので、ボールが自分から離れていくようなトラップじゃなかったんですね。ということはそのボールはコントロール下にあったということなので、そのシュート体制を後ろから手をかけた、ホールドしたことによってそのシュートが打てなかったという風に判断させてもらって、ペナルティを取りました。

――「サッカーレフェリーズ」という本を改めて読みなおしたんですが、直接FKになるファールというのは10項目あると。キッキング、チリッピング、ジャンピングアット、チャージング、ストライキング、プッシング、ファールタックル。まず7つあります。ここから先の3つが色が変わって紹介されていて、スピッキング、唾を吐きかける行為。それからホールディング、進行を腕で押さえてしまう行為。そしてハンドリング、手を使ってボールをコントロールする。これは大事だったんですね

西村:多くの皆さんには中々ご理解頂けなかったんですけど、サッカーのルールとしてはこの行為自体で反則とみなされます。

――つまりこれはもう言い訳無用のファールなんですね。例えばキッキングについてのあやふやな点、レフェリーの裁量にもたらされる点を教えて下さい

西村:程度を考えるということなんですけど、どうしてもボールを蹴りたくて蹴りに行ったんだけどボールがすんでの所で相手にさらわれて、ボールがなくて相手の足を蹴ってしまった。意図は全然ないんですけど相手を蹴ってしまった、これもファールになります。不用意に相手を蹴ってしまったという判断になるんですね。ホールディングに関しては、偶然相手をつかみましたってことは起きなくて、自分の意図が入っています。ハンドとスピッキングも自分の意図が入っていますから、この3つに関しては意図自体がファールに値するということですね。

――ここの部分は体を預けて倒れたとかではなく、ホールディングという風に手をかけてしまった時点でファールを取られる可能性があるんだということをDF側は心に置いておかなければいけない

西村:その覚悟を持って相手を押さえる。

――取られても仕方がないということですね。何かを盗もうと思って手を出してしまっている状態に近いというか

西村:シミュレーションじゃないかという動きがありましたが、すごくびっくりしたのが、そんなに皆さんシミュレーションが好きじゃないんだなって。レフェリーはシミュレーションが好きか嫌いかで判断しているわけじゃなくて、2つポイントがあるんです。1つ目が、接触がないにも関わらず、ファールを装って倒れる。もう1つが、接触を自ら作り出してそれをファールに見せかけて倒れる。この2つに今回のシーンは該当しないんですね。後ろにいる競技者がつかまれているということで、そのあと大袈裟に倒れてはいるけれど、それはシミュレーションとは我々は判断しないんですよ。

――しかもそれが開幕戦というのもあって、どうせブラジル贔屓なんだろうと、世界中のバイアスがかかっていたと思うんですよね。。逆にブラジルにとって西村さんの正しかったジャッジというものがプラスにはならなくなっちゃったんですよね。結局ブラジルは良い意味でも悪い意味でも、開催国のホームアドバンテージをなくした大会にはなったなと思います

西村:ホールディングというものが、どのくらいサッカーの世界でゴールになるシーンを奪ってしまうかというのがよくわかった大会でした。グループステージは特にですけど、ホールディングになりそうな時に結構選手が両手を上げて、俺はホールドしていない、と。

――だから点がたくさん入るんだ

西村:競り合いの中でホールディングがなかったシーンが多かったですね。それによって結構ゴールにつながっていったり、もしくは早い展開になったり。今大会ではコーナーキックの時にお互いがつかみ合っているようなシーンってなかったと思うんですよ。そのくらいインパクトのある判定になったことは確かですね。それによってサッカーの醍醐味は良い方向には行ったということを、FIFAは言ってくれました。

――西村さんがホールディングを取ることによってそういうことがなくなって、ゴールの多い大会になったというのが1つですね。さっきのバニシング・スプレーに関してもそうですね

西村:1本の線がやはりそれだけピタッとみんなを守ることによって、他も出づらくなったと言えると思うんですね。W杯であの線を引かれて飛び出しているとやはり恥ずかしいという選手も出てきたと思いますし、開幕戦というもののインパクトはこういった意味では大きいんだな、とあとからよくよく感じました。

――FIFAは西村さんを守ってくれたんですか?あのあと笛を吹けなかったですよね

西村:FIFAの方は、私たちにはすごく配慮してくれました。FIFAは全世界にサッカーを通じてこのボール1つが勇気、幸せを届けられるという風に思っていますので、その中でどうしても、理解はされなかったけど判定は正しい、でも未だなんとなく議が生じているレフェリーがもう一度フィールドに立つことで、本当に幸せを届けられるかどうか、ということをずっと考えていますね。確かにもう1回ピッチにあがって判定をすることで正しさは表現できるかもしれませんけど、ギャンブルになってしまいますから。1つ1つの選手のプレーを楽しむんじゃなくて審判の判定を楽しむようになったら、W杯としてはちょっと違う方向に行ってしまう。

――なんか異常に大きな事件になっちゃいましたね。僕は大したことじゃなかったと思う、だってひどいジャッジが他にいっぱいあったし。どう思います?

西村:仲間からしてみれば、多くの批判を僕が全部しょっていってくれたので重宝がられたというのもありましたし、やはり人間には批判欲というのはあるので、そういう楽しみ方も残念ながらサッカーの1つではありますから。私としてはあれをシミュレーションにしていたら誤審です。それからノーファールということは、見た以上目をつぶるということになります。それは自分自身に嘘をつくということになりますので、笛を持つ資格はありませんし、その選択はできません。そうするとあれしか答えがなかった。でもどんな小さなことでも批判を受けることはあるし、はなから覚悟していました。

――胸を張って西村さんがそうおっしゃられるのは、すごく良いジャッジだったんだなと思います。僕も勉強になりました。スピッキング、ホールディング、ハンドリングははじめからカードを出されても仕方がないことだと。放送席で解説者とそういう話をしたことがないんですよ。ルールに関してもうちょっと勉強するべきだと猛烈に反省しました

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J SPORTS 編集部

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◆Foot! FRIDAY“ESPECIAL”(09/26)再放送予定
9月28日(日)午前4:30〜 J SPORTS 2
9月28日(日)午後6:00〜 J SPORTS 2
9月29日(月)午前6:00〜 J SPORTS 2
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