ハビエル・アギーレ監督の新しい日本代表のメンバーが発表された。「初回だけでも」と思って、僕もメンバー発表の記者会見に顔を出してみた。「初回」というのは、新監督の人間性などが垣間見られることもあるからだ。フィリップ・トルシエの時は、確かこういうメンバー発表の会見というのは無く、大阪・長居でのエジプト戦が初顔合わせで、記者会見をさっさと切り上げて立ち去ったのに驚かされた。最も驚いたのは、イビチャ・オシム監督の最初のメンバー発表会見だった。諸事情から自由にメンバーを選べない状況の中、たった13人の選手の名前を、それも傍らにいた田嶋幸三技術委員長(現在副会長)に読み上げさせたというサプライズ会見だった。そんなサプライズ会見と比較すると、アルベルト・ザッケローニ監督の場合は、選ばれたメンバーも南アフリカ・ワールドカップのチームをベースにしたものだったし、殆ど驚きのない会見だったような記憶がある(そして、ザッケローニ監督は最後まで「驚き」は与えてくれなかった)。

そんな過去の監督たちの記憶をたどりながら、アギーレ監督の会見を待った。やはり、ほとんどサプライズ性は無かった。まず何よりも、監督が登壇してからメンバーを読み上げるというのでは無く、いきなりJFAの広報の方から記者団にメンバーリストが配布されたのだ。つまり、その発表の方法自体がえらく味気ないものだった。

ただ、そのリストの内容はそれほど平凡な内容ではなかった。初招集組の顔ぶれが、予想とはかなり異なっていたからだ。今週のサッカー雑誌などには「誰が入るか?」といった予想記事やアンケートが出ていたが、それとはだいぶ違っている。例えば、期待が大きかった柴崎岳(初招集ではないが、東アジア選手権の時は故障の為に辞退し、代表キャップはまだ持っていない)は入っていたが、宇佐美貴史は入っていない。そして、初招集の印であるアスタリスク(∗)が付いていたのは坂井達弥(鳥栖)、松原健(新潟)、森岡亮太(神戸)、皆川佑介(広島)、武藤嘉紀(FC東京)の5人である。代表入りの評判が高かった武藤を除いて、ノーマークに近い名前が並んでいた。選手選考方法についてアギーレ監督は「過去のリストではない。自分の眼で見て選んだ」という事をさかんに強調した。初招集組を見ると「なるほど」と思う。

アギーレ監督は、来日してからJリーグや天皇杯の試合会場に何度も足を運んで視察した。スタッフももちろん各地に飛び、またビデオ映像も見たという(当然の事だ)。そうなんだろう。そして、目についた選手を自らリストアップしたのだろう。つまり、選ばれたのは最近のJリーグで調子の良かった選手という事になる。確かに、この初招集組は「実績」は無いが、この所のJリーグの試合で良いプレーを続けている好調な選手ばかりだ。

同時に、アギーレ監督は「日本側のスタッフとも話し合った」と語った。つまり、コーチとして入っている手倉森誠(U−21日本代表監督)や霜田正浩技術委員(次期技術委員長)の事だ。恐らく、アギーレ監督が目についた選手をリストアップし、それを日本側のスタッフがチェックして、この5人(柴崎を含めれば6人)に絞り込んだろう。リストと、アギーレ監督の口ぶりから、そんな選考過程が透けて見えてくる。もっとも、この5人(6人)が、そのまま代表に定着する訳では決してない。アギーレ監督は「これはテストだ」とも言った。気になった選手を呼んで、手元に置いてトレーニングや試合でのプレーぶりや反応を見る。それが代表監督としてのテストだ。

第一に「最近好調の選手を選んだ」という事は、そのピークの時期が過ぎてしまえば魅力も薄まる事になる。初招集組にとって、サバイバルはかなり厳しい道となるのだろう。そして、10月のジャマイカ戦、ブラジル戦に向けては、また新しいメンバーが招集され(つまり、その時点で好調の選手達)、再びふるい落とされていく。それを繰り返し、果たして何人がアジアカップのメンバーに残るのか……。ザッケローニ監督の時と違うのは当面の目標であるアジアカップまで3回招集の機会があり、6試合戦えるという事だ。興味を引いた選手をテストとしてピックアップし、ふるい落としながらアジアカップのメンバーを決めていく事が出来るのだ。ザッケローニ監督の場合は、契約が遅れた為、アジアカップ前にはたった2試合しか準備試合がなく、そんな贅沢な時間の使い方が出来なかったのだ。

さて、来日直後の記者会見に続いて、記者団とのやり取りは無難なものに終始した。「どんな試合をしたいのか?」、「どんな選考基準があったのか?」等々の様々な角度から質問が飛んだが、当たり前の、無難な、或は真面目な回答に終始した感が強い。ただ、ザッケローニに比べると、ガードの緩い所もありそうな印象だ。例えば、FW登録で初招集された皆川と武藤について質問を受けた時、アギーレは「2人とも怪我で招集出来なかった選手の代わりだ」と、言わなくてもいい事を口にした。

まあ、冒頭の発言で原博実専務理事(兼技術委員長)が「香川真司と原口元気は、クラブ側と連絡を取って負傷の為に招集しなかった」と明言していたのだから、類推できる事実であって、別に爆弾発言なんかでは全くないのだが、それにしても「この2人は代替招集なのだ」などと監督が言わなくてもいい事だろう。他にも、「おやおや、そんな事わざわざ言わなくてもいいのにな……」と思う発言があった。つまり、そんな言わずもがなの事をポロッと漏らしてしまう様なのだ。こんなメンバー発表の記者会見でも、そんな発言をしてくれるのだから、試合の後の興奮した状況だったら、きっと面白い発言をしてくれるのではないか……。この日の会見を聞いていて、僕はそんな期待を抱いてしまった。

トルシエのような変人でもないし、オシムのような哲学者でもない。真面目なサッカー・コーチというのがハビエル・アギーレの役どころなのだろう。だが、ザッケローニ前監督よりは、マスメディアにとっておいしそう。それがこの日の会見での印象、つまり来日会見の時の第一印象に続く、アギーレの「第二印象」だった。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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