世界の頂点を極められる高藤直寿

昨年の世界選手権王者、日本の高藤直寿の力が他を圧している。スピード、身体能力、全方向に「一本」を取れる技種の多彩さという従来のストロングポイントだけでも十分世界の頂点を極められるものである。しかしそれ以上に高藤が他の選手を圧倒しているのは、あっという間に映像が流出しトップファイターが次々潰されていく現代柔道にあって常に新しい技を生み出し相手の研究の上を行くクリエイティビティである。その中でも2013年に投下した、相手の支釣込足を振り返す「ナオスペ」は今やトップファイターの標準技術として普及。国際柔道のトレンドをリードする発信源としても目の離せない選手になっている。

中量級、重量級の日本のトップファイター達がグルジア系のパワー柔道に苦戦する中、目下最大のライバルであるはずのアミラン・パピナシビリ(グルジア)を大技の大腰一発で投げ「グルジア人みたいでしたね?」とIJFのインタビュアーに問われたグランプリ・ブダペスト大会の出来を見る限り、今大会も死角は少ない。唯一の不安要素としては、好戦的ゆえに生まれる返し合い、投げ合いの「際」に生まれる縺れ、ここでのアクシデントが挙げられる。

一方、対抗勢力に目を移せば、北京−ロンドン期に階級を牽引したリショド・ソビロフ(ウズベキスタン)、ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)、平岡拓晃のスター選手3人が去ったいま、前述のアミラン・パピナシビリ(グルジア)と、ダシュダバー・アマーツブシンとガンバット・ボルドバータルのモンゴル勢2人がトップグループを形作っている。

特に、昨年の欧州王者であるパピナシビリは、前襟を持てば担ぎ技に小内刈、奥襟とクロスグリップの場合には釣腰に払巻込と系統の異なる大技を駆使する、いかにもグルジアらしい柔道を軽量級で実現している強者。前述のブダペスト大会決勝では高藤の攻めに対して我慢が出来なくなり、パワーで押し切ろうと釣り手をクロスグリップに入れた瞬間に逆の大腰を食って畳に沈んだ。前回の戦いから、どう修正してくるかが見ものだ。

ダシュダバーは昨年の世界選手権2位。足技で試合を組み立て、大内刈、引込返で取りに来る。モンゴル選手には珍しく無謀な一発技は使わず、場外際や組み際、潰れ際に立ち際という「際」に返されにくい技を仕掛けてくる戦術派。ガンバットはパワーをベースに担ぎ、小内巻込、肩車で投げに来る軽量級らしい選手といえる。

アルセン・ガルスチャンの復帰でどうなるか!?

ほか、この階級最大の確変要素はロンドン五輪王者アルセン・ガルスチャン(ロシア)の復帰である。長期休養を経て昨年11月のグランプリ・アブダビから畳に戻り、12月の「ヨーロッパvsアジア団体戦」も含めて以降5戦を戦っている。いずれも優勝はなく、それどころか派手に投げられる一本負けが多く、まだコンディションが戻っていない印象。さらに同国のベスラン・ムドラノフが欧州選手権を制して充実しているだけに出場自体が微妙な状況であるが、出てくるとすればコンディション次第では経験を基にこれらの勢力をゴボウ抜きする可能性もある。

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古田 英毅
柔道サイト 「eJudo」編集長。国内の主要大会ほぼ全てを直接取材、レポートを執筆する。
コラム「eJudo's EYE」の著者でもある。自身も柔道六段でインターハイ出場歴あり。J SPORTSワールドツアー中継ではデータマンを担当。

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