セレッソ大阪のマルコ・ペッツァイオリ監督が「スペクタキュラーなゲームだった」と振り返った。大量点が入った試合の時に監督がよく使う台詞である。同時に、失点を重ねた自らのチームに対する自嘲気味な発言でもある。

だが、このゲームは本当にスペクタキュラーだった。Jリーグ・ディビジョン1の第20節。川崎フロンターレとセレッソ大阪の試合である。開始わずか5分で、左からのクロスを南野拓実が今シーズン初ゴールとなるヘディングを決めて試合が始まった。5分後には、大久保嘉人のスルーパスに抜け出した小林悠が決めて、川崎があっけなく同点に追いつく。そして、ここから川崎のゴールラッシュが始まったのだ。

13分には右CKから大久保が蹴り込んであっさりと逆転。25分には左サイドのレナトがドリブル突破を試み、C大阪の右サイドバックの安藤淳がひっかけてペナルティー。PKをレナト自身が決めて、前半は4−1で川崎がリードして終わった。

PKを献上する形となった安藤にとっては、難しい試合だったはずだ。何しろ、安藤のサイド(川崎の左サイド)からはいろいろな選手が次々と飛び出してきたのだ。対応は難しかっただろう。川崎は、前節の浦和レッズとの試合と同様、3バックシステムで戦っている。そして、実に流動的で変化に富んだ攻撃を見せたのだ。3バックは、中央に谷口彰悟を置き、右に實藤友紀、左に小宮山尊信という並びだ。そして、左のサイドハーフと呼ばれるポジションには登里享平がいる。当然、その登里がタッチライン沿いを攻め上がって来る場面もある。しかし、登里は決してタッチライン沿いにいる訳ではない。中に入って、まるでトップ下のようなポジションにいる。

考えてみれば、登里は風間八宏監督によってサイドバックにコンバートされた選手で、もともとはMFである。そして、登里はワントップの大久保を追い越してトップに飛び出してくるのだ。それだけではない。川崎の左サイドからはセンターバックの一角の小宮山がタッチライン沿いに登里を追い越して攻め上がって来るのだ。まあ、これも考えてみれば当然で、小宮山もセンターバックの選手ではなく、本職は左サイドバックだったはずだ。つまり、3−4−3の布陣図の上ではサイドハーフだったり、センターバックだったりするが、攻め上がってきた時の役割こそ、登里にとっても、小宮山にとっても本職なのである。

同様に右のストッパーの實藤も、オリンピック代表では左サイドバックだった選手だ。つまり、非常に流動性が高く、誰が飛び出してくるのは分からないのが川崎の攻めだったのだ。実際、試合中にメモを取りながら、「えっ、今上がってきたのは誰だ?」と、慌てる場面が何度もあった。まして、ピッチ上でそういう攻撃に立ち向かっているC大阪の選手たちはさぞかし対応に追われてしまったことだろう。

3バックと言えば、川崎と首位争いをしている浦和レッズは、ペトロヴィッチ監督就任以来ずっと3バックで戦っている。浦和の場合は、MFの阿部勇樹が最終ラインに戻ってくることによって、センターバックの槙野智章や森脇良太が攻め上がって前線に5人が並ぶような攻撃を仕掛けてくる。確かに流動的な攻めではあるのだが、だいたい誰がどのコースを攻め上がって来るのかというのは、事前に予想が付く。したがって、浦和相手に守ろうとするチームは、まるで浦和と同じような並びのシステムを採用し、ミラーゲームを仕掛ける事によって戦おうとする。

だが、川崎のスリーバックの方は、誰がどのタイミングで飛び出してくるのか、見ていても分かりにくいのである。流動性も完成度も、浦和より上と言っていい程だ。こういう流動的な攻めができるのは、風間監督就任以来培ってきたパスの能力による。どの選手も有能なパスの出し手であると同時に、どの選手も体の向きを考えたうまい受け方をする。

もちろん、相手の意表をついて、裏に長いパスを入れることができる選手は中村憲剛しかいない。だが、大島僚太も短いパスなら中村と同じように出せるようになっているし、前線の選手もワントップの大久保はもちろん、小林悠もスピードを活かして飛び出してくる。しかも、体の向きをうまい角度に保って受けるから、ファーストタッチで見事に相手をかわすことができる。こうして、ある時はパスの出し手、またある時はパスの受け手となった選手が自在に動き回ることで、川崎のパスコースは無限大に増えていく。本家の浦和の攻撃より、さらに変化と意外性に富んでくるのだ。

そして、この日前半の川崎は風間監督就任以来最高の攻めを見せた。「こんな日に対戦するC大阪は気の毒だ。後半もサイドバッグ状態で、最終的には7対1くらいになるのか……」と僕は内心で思っていた。

ところが、ここからがまた見事だった。C大阪のペッツァイオリ監督がハーフタイムに2人選手を代え、川崎と同じ3バックに変更してきたのだ。すると、ゲームの流れは一変した。49分に右サイドからの永井龍のクロスに、後半から左のサイドハーフに上がったばかりの丸橋祐介(前半は、左サイドバック)が頭で決めた。そして、その後はC大阪が圧倒的にポゼッションで上回って、川崎が守備に回ってしまう。すると、それを見た川崎の風間監督がすかさず選手交代をして、DFをフォーバックに変更した。

これで互角になったゲームは、その後もC大阪が攻め込み、81分に再びCKから失点したものの、85分にはディエゴ・フォルランの素晴らしいボレーが決まって、C大阪がさらに追い上げ、結局終わってみれば5−4という信じられないようなスコアで川崎が完勝していた。大量失点した両チームのDFに問題があったのは事実だが、しかし、この試合は攻撃力が明らかに守備を崩し切っていた。素直に楽しんでいい試合だと思った。

そして、一方、前半の劣勢をシステム変更によって見事に立て直したC大阪のペッツァイオリ監督の采配も見事だった。川崎の試合からは、しばらくの間目を離さない方が良い。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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