8月16日から、今シーズンもラグビーの南半球の強豪4カ国対抗戦である「ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC))」が開幕する。そこで、南アフリカ代表として1995年のラグビーワールドカップ(W杯)で、同チーム唯一の黒人選手として優勝に貢献した伝説的なWTBチェスター・ウィリアムズ氏に今シーズンのTRCの見所を聞いた。さらに、来年に控えたイングランドW杯のプールBの初戦で、日本代表が南アフリカ代表にどういった戦い方をすべきか直撃した!

今季のTRCは南アフリカが優勝するチャンス!

――チェスター・ウィリアムズさんと言えば、「スプリングボクス」こと南アフリカ代表として1995年の第3回ラグビーワールドカップ(以下W杯)で優勝に貢献に貢献したWTBであり、映画「インビクタス」にも登場した伝説的な選手の一人です。当前、スプリングボクスが優勝したことにはどういう意味があったでしょうか?

チェスター W杯前の1994年に隔離政策(アパルトヘイト)が終結しましたが、その影響があって、「スプリングボクス」という南アフリカ代表のニックネームを変えたほうがいいのではという話もありました。ですが大統領だった故・ネルソン・マンデラ氏が、南アフリカを一つにまとめていくためにも最終的にスプリングボクスという名前を残しましたが、そのことによって、白人からも大きなサポートを得られることもできたと思います。新しい南アフリカにとって、W杯で優勝したことは大きな意味があったと考えています。つまり、隔離政策が取られていましたが、それを一つにまとめたのがラグビーだったのです。

――そんな南アフリカ代表は1995年に続いて、2007年のW杯でも優勝しました。現在のチームは、チェスターさんの目にはどう映っていますか?

チェスター とてもパワフルで、しかも技術的にも優れた選手が多いですね。トレーニングもよくできていて、一つにもまとまっている。来年のW杯でも活躍が期待できる強力なチームだと思います。

――2015年のW杯の前に、今シーズンも8月から南アフリカ代表、ニュージーランド(NZ)代表、オーストラリア代表、アルゼンチン代表の4カ国対抗戦である「ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC))」が始まります。

チェスター 南アフリカ代表は2011年の「トライネーションズ」以来、NZ代表に勝つことができていないが、今年は大きなチャンスだと思っています。もちろん、いつもNZは強いし、今年も非常に良いチームだが、スプリングボクスもメンタル部分も含めて良い準備ができている。南アフリカ、NZ、オーストラリアの間で接戦が繰り広げられると思うが、最終的には南アフリカとNZの対決となるのではないでしょうか。

――南アフリカ代表がTRCで優勝するには何が必要と考えていますか?

チェスター 効果的なプレーを続けていくことが大事ですね。タックルであったり、ディフェンスであったりと南アフリカ代表は非常に良いものを持っていると思いますが、アタックにであったりキックであったりと、相手に取って嫌と思われるような効果的なプレーを続けていくことがとても重要になってくると思います。

南アの選手たちが日本ラグビーの向上に貢献している!

――TRCに続いて、8月22日から日本ではトップリーグが開幕します。近年、SHフーリー・デュプレア(サントリー)やCTBJP・ピーターセン(パナソニック)など南アフリカ代表選手が多く来日していることに関してはどうお思いですか?

チェスター それは日本の選手たちにとってはとても良いことだと思います。南アフリカ代表の選手たちは知識も豊富だし、技術も高いし経験豊富なのです。そういった選手たちがトップリーグに参加することで、日本の選手たちにいろんなことが教たり、自信をつけたりしていく上でも貴重な機会になっているのではないでしょうか。たとえばCTBジャック・フーリー(神戸製鋼)はコミュニケーション能力も非常に高いものを持っているので、そういった選手と試合を積み重ねることが日本ラグビーの向上にも大きな助けになっていると思います。

――逆に日本の選手たちがスーパーラグビーに挑戦することについては、どうお思いですか?

チェスター スーパーラグビーはハイレベルなラグビーが行われているので、そこで日本人選手が経験を積めば、それは日本ラグビーにフィードバックできると思う。HO堀江翔太(パナソニック)のように、契約を新たに更新した選手もいて、日本人選手も認められている部分もあります。海外で非常にレベルの高いリーグでプレーすることでインスピレーションを受けますし、経験を積み、アイデアを持ち帰ることができるでしょう。

――2016年、スーパーラグビーが18チームに増えることが決まっていますが、そこに日本のチームが参加する可能性がでてきました。そのことについては、どうお考えですか?

チェスター それは非常に良いことだと思うし、日本のラグビーが力をつけるには絶好の機会だと思います。もしスーパーラグビーに加入した場合は、日本のチームは南アフリカのどこかにベースをおいて転戦していくことになるので、そういう意味では南アフリカの選手のサポートを受け入れつつ試合をしていかなければならない。とにかく、南アフリカのスーパーラグビーのチームは体制も整って、コーチや選手も揃っているので、間違いなくスーパーラグビーに加入しても1年目は厳しいシーズンになる。だが、2年目以降に強いチームになるよう、1年からつながるようなシーズンを過ごすことが重要になってくるでしょう。

日本が南アに勝つためにはボールを渡さないことが大事

――来年のW杯についてお聞きします。南アフリカ代表は日本代表とも同じプールBで、初めて対戦することになります。

チェスター 強豪揃いの大変なプールだが、日本代表にも決勝トーナメントに進出するチャンスはあると思います。スコットランド代表やアメリカ代表に勝つチャンスはあるはずです。でも、なかなか南アフリカ代表に勝つことは難しいと思いますが、悲観的になる必要はなく、勝利を信じて力を発揮すればいい。

――日本代表の印象は?

チェスター 日本代表は、経験豊富でラグビーをよく知っているエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が良い仕事をして、ウェールズ代表にも勝利した。エディーが選手たちにいろいろなことを伝えて着実に力を付けてきていると思います。

――南アフリカ代表と日本代表の初戦はどう予想しますか? 日本代表が南アフリカ代表に勝つとしたら、どういう試合をするべきでしょうか?

チェスター まずは南アフリカ代表にボールを渡さないようにすることが大事です。キックを有効的に使って相手に渡さないように蹴ったり、ハイパントを蹴ったり、グラバーキックを蹴ったりなどして相手にボールを与えないでプレーを続けていくことがとても重要です。そしてショートラインアウトやクイックラインアウトなども使って、ボールを早く回すことに徹するのではと見ています。

――南アフリカ代表、日本代表、サモア代表、スコットランド代表、アメリカ代表が属するプールBの勝ち上がり予想をお願いします。

チェスター 南アフリカは当然、決勝トーナメントに進めるでしょう! 決勝トーナメントに進む2つ目のチームは、私はサモア代表か日本代表になるのではないかと予想します。

――プールBから南アフリカ代表とサモア代表か日本代表が勝ち進むとして、最終的には2015年W杯はどのような結果になると思いますか。

チェスター もちろん南アフリカ代表に優勝してもらいたいと思っています。ただ南アフリカ代表、イングランド代表、NZ代表、オーストラリア代表がベスト4に残るのではないでしょうか。そのなかでも開催国のイングランド代表が強敵だと考えていますので、最終的には南アフリカ代表とイングランド代表決勝で対戦すると思っています。

――最後に、ラグビーでの両国の交流が、ラグビー以外の日本と南アフリカにどんな影響を与えているとお思いですか?

チェスター ラグビーがグローバルになる意味でも両国の交流は良いことだと思っています。また日本のラグビーの発展以外にも、南アフリカにおいても日本を知る良いきっかけになるでしょう。日本人にとって南アフリカは人気のある観光地の一つですし、二つの国の交流がラグビーを通じて、どんどん深まっていっていると感じています。もちろんスポーツは人と人を結びつけるのに最適なツールなのですし、ラグビーはそれに適したスポーツなので、南アフリカと日本の交流や絆を深めていくことにつながっていくでしょう。

◇プロフィール
チェスター・ウィリアムズ(Chester Williams)
1993年から2000年にわたって「スプリングボクス」こと南アフリカ代表で27キャップを獲得し、15人制だけでなく7人制で活躍した伝説的なWTB。選手引退後は2003年まで7人制代表の南アフリカ代表でコーチを務めた。その後はスーパーラグビーのキャッツ、南アフリカ代表A、ウガンダ代表、チュニジア代表のコーチを歴任。現在はルーマニアのラグビークラブ、ティミショアラでコーチを務めており、2012年にはチームを40年ぶりの優勝、2013年には2年連続優勝へと導いた。

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斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365 」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「突破!リッチー・マコウ自伝」(東邦出版)など著書多数。≫Twitterアカウント

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