ハビエル・アギーレ氏の日本代表監督就任が決まった。アギーレと言えば、僕は選手時代から見ているし、一応のイメージはあるが、今、彼の手腕について語るだけの知識は持っていないので、アギーレという人物の是非について論じることはできない。とりあえずは「お手並み拝見」である。ただ、4年前のザッケローニ監督就任の時と比べてみると、7月中に新監督が決定したことが大きな違いである。

4年前は、南アフリカ・ワールドカップ終了後に新監督選びをスタートさせたため、かなりの時間を要することになった。それはそうだ。ワールドカップが終るころには、主だった人物にはもうすでにいろいろ引き合いがあるはずだ。もっと早く動いていれば、たとえばペジェグリーニなどを招聘することも可能だったかもしれない。その4年前の反省を踏まえて、今回はワールドカップ開幕前から新監督選任に動き出していた結果、早い時期に新監督を迎えることができるようになった。それは、素直に喜ばしいことと言っていい。

どうせなら早い方が良いのは当然である。というのは、2015年1月にはオーストラリアでアジアカップが開かれるからである。アジアカップでの成績は日本代表の強化日程に大きな影響がある。従来のレギュレーションでは、アジアカップで優勝(または上位進出)しておかないとワールドカップ直前の貴重な時期にアジアカップ予選を戦わなければならなかったのだ。つまり、本来ならヨーロッパや南米の強豪と強化試合を戦うべき時期に、アジアの格下相手に試合をしなければならなかったのだ。

ただ、アジアカップとワールドカップの予選のレギュレーションが変更となったので、次回に関してはアジアカップ予選を戦う必要はなくなった。しかし、アジアカップで優勝しておくと、2017年のコンフェデレーションズカップに出場できるのだ。ワールドカップ前年に開催国での大会を経験できるのは本大会に向けての大きなアドバンテージとなる(ブラジル大会では、その経験を活用できなかったが……)。

4年前のカタールでのアジアカップの時は、監督就任が遅れたために、ザッケローニは大会前にたった2試合指揮を執っただけで大会に臨んだ。おそらく、日本のすべての選手を把握することもできなかったのではないか(それでいて、アジアカップで優勝してしまったため、その後4年間、その時のメンバー中心でチーム作りを進めていったのだが)。

アギーレ監督が8月に就任すれば、9月のウルグアイ戦以降6試合を戦ってからアジアカップに臨むことができる。やはり、監督就任は早い方が良いと言っていいだろう。「ワールドカップでの敗戦の分析や検証が終わっていない段階での新監督選任はおかしい」という意見があることも承知している。しかし、ザッケローニ監督のチームの検証はワールドカップ前にも終えることができたはずだ。「検証」というのは科学的な作業であって、「結果論」「感情論」ではない。

ザッケローニ監督が作ったチームのストロング・ポイント(パスを繋いでの攻撃サッカー)もウィーク・ポイント(守備の弱さ、およびバリエーションの少なさ)などは、とっくの昔に分かっていることだった。そのストロング・ポイントが発揮できて、ウィーク・ポイントがカバーできれば、ワールドカップである程度の結果は残せただろうし、それが逆になってしまったことで惨敗という結果になっただけだ。ストロング・ポイントが出せなかった原因が、ザッケローニ監督の采配の硬直化だったとしたら、それも大会前から分かっていたこと。もし、コンディショニングが最大の問題点だったとしたら、これは出発前に興行的なイベント(キプロス戦も含めて)を行ったり、合宿地を選定した日本協会の責任であって、ザッケローニ監督の責任ではない。

というわけで、分析や検証などはワールドカップ前にさっさと済ませて新監督選びに入るのは不思議なことではない。ワールドカップで勝てていたとしても、チームのウィーク・ポイントは検証の対象となるべきだし、惨敗を喫したからといってそのストロング・ポイントは認めないわけにはいかない。もっとも、以上の議論はすべて「日本サッカー協会にチーム作りの分析・検証を行うだけの能力(特に)と意思があった」という前提に基づいている。果たして、協会にはきちんと分析・検証を行う気があったのだろうか?

最大の疑問は「ザッケローニ監督を招聘した原博実技術委員長の責任がなぜ議論されなかったのか?」である。原技術委員長はザッケローニ監督を選任し、その後も代表強化の最高責任者としてマッチメークやスケジューリング、あるいは合宿地の選定に当たっていた。当然、ワールドカップ本大会での結果について、ザッケローニ監督と同様の(あるいはそれ以上の)責任があったはずだ。その原技術委員長の責任問題には全く触れられず、その同じ原委員長が次期監督選任に当たった。いや、それどころではない。原博実氏は、技術委員長に加えて専務理事にも選ばれて技術委員長と兼任しているのである。

専務理事といえば、事務方の責任者。いわば、技術委員長を雇う側である。2つの役職は対立とまでは言わないが、まったく別の立場の役職であり、この2つを兼任するのはどう考えてもおかしい。Jリーグ発足前のアマチュア時代なら、古河電工や三菱重工などの企業から出向してきた少数の役員がさまざまな役職を兼任するのは当たり前だったが、公益財団法人として数十億円の予算を動かす現在の日本サッカー協会で、このような無責任人事がまかり通っているのは許しがたいものがある。

アギーレ監督の是非などよりも、まずそのへんの体質を改善しないことには、「世界一」を目指すことなど夢のまた夢であろう。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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