熱戦が繰り広げられてきた2014年ブラジルワールドカップも残すところ4試合。以下現地時間8日(日本時間9日)には、準決勝の1戦目となるブラジル対ドイツ戦がベロオリゾンテのエスタディオ・ミネイロンで行われた。この町は昨年のコンフェデレーションズカップのメキシコ戦以来。1年前は町中のあちこちが掘り返され、ワールドカップに向けたインフラ工事が行われていたが、現在はバス乗り場もきちんと整備され、快適な場所に生まれ変わっていた。今回、レシフェやナタル、サルバドールなど様々な土地を訪れたが、クイアバに至っては空港を出てすぐに道から市街地までどこもかしこも工事中で、大会には全く間に合っていなかった。そういうところに比べると、ベロオリゾンテは計画通りに準備が進んだ数少ない町といえる。

試合前日までは普段と変わらない様子を見せていたこの町も、やはりセレソンの試合当日は特別な熱気が漂っていた。朝からチアホーンを鳴らすカナリア色のユニフォームの人が町を行きかい、スタジアム周辺は黄色一色に染まっていた。ドイツからやってきたサポーターの姿もあったが、この状況では明らかに分が悪い。前哨戦では完全にブラジルに軍配が上がった。そのブラジルだが、準々決勝・コロンビア戦(フォルタレーザ)で腰椎骨折の重傷を強いられたネイマール(バルセロナ)と、出場停止となったキャプテン、チアゴ・シウヴァ(PSG)の穴埋めをどうするかが最大のテーマだった。蓋を開けてみると、ネイマールの代役は有力視されたウィリアン(チェルシー)ではなく、ベルナルジ(シャフタール)、チアゴ・シウヴァの代役はダンテ(バイエルン)が入ることになった。一方、ドイツも攻撃陣の組み合わせが気になるところだったが、レーヴ監督は準々決勝・フランス戦(リオデジャネイロ)に続いてクローゼ(ラツィオ)をトップに起用して勝負をかけた。

ブラジルサポーターの凄まじい声援の中、キックオフされたこの試合。ブラジルは序盤から動きが重く、コロンビア戦のようなプレスがかからない。ダヴィド・ルイスとダンテらDF陣の連携もギクシャク感が見て取れた。そんな矢先の前半11分、ドイツは右CKからミュラー(バイエルン)がファーサイドでフリーになりヘッド。瞬く間に先制点を手に入れる。ブラジル守備陣はニアサイドにマークが集中し、彼をがら空きにしてしまった。スコラーリ監督は「最初の失点でオーガナイズが崩れた」とコメントしていたが、そこからのブラジルはズルズルと下がり始める。

そして悪夢の時間帯となったのが、前半23〜29分までの6分間。クローゼのワールドカップ通算16点目となる2点目が入ると、そこから一気にスパートをかけ、クロースが2点、ケディラが1点を固め取り。開始30分までに5−0という信じがたいスコアになった。ブラジルは今大会を通して見せていた激しい寄せと球際の強さ、組織的プレスが全くと言っていいほど出せず、効率的にパスを回す相手に翻弄され続けるばかりだった。複数失点に絡んだフェルナンジーニョ(マンチェスターC)と攻撃面でミスが目立ったベルナルジを早く代えていれば、少しは状況を改善できたかもしれないが、スコラーリ監督は手を打たなかった。「この日の戦術や選手起用を決めたのは私。全ては私の責任だ」と指揮官は潔く語っていたが、報道陣から厳しく追及されるのもやむを得ないだろう。

ハーフタイムに気を取り直し、後半を戦うに当たって、パウリーニョ(トッテナム)とラミレス(チェルシー)を投入したが、手堅く守るドイツ守備陣を崩せない。選手たちの苛立ちは募る一方で、マイコン(ローマ)やマルセロ(レアル・マドリード)までリスクを顧みずに上がり始めた。老獪なドイツはその裏を巧みに突いてくる。途中出場したシュールレ(チェルシー)が立て続けに2点を奪って、とうとう試合は7−0に。ブラジルは後半ロスタイムにオスカルが1点を返して一矢報いたが、ワールドカップ決勝トーナメント史上最多失点で惨敗を喫した。

「ドイツは素晴らしい選手の揃っているチーム。その彼らが最高のパフォーマンスを見せた」とスコラーリ監督は相手に最大級の賛辞を贈るのが精一杯。「セレソンは死んだのでは?」「ネイマール負傷の精神的ショックなのか?」などと記者会見では非難の質問が飛び交うのをじっと耐えてコメントしていた。2002年日韓ワールドカップで同じドイツを下して母国に5度目の世界王者のタイトルをもたらした名将といえども、この日の悪循環は止められなかった。それほど選手たちのメンタリティは脆かったようだ。人々の失望感はスタジアムの雰囲気からも強く感じられた。ここから王国が這い上がるのは至難の業だが、12日には3位決定戦が待っている。2試合続けて無様な負けを強いられたら、国民は黙っていないだろう。号泣したオスカルやダヴィド・ルイスらは意地を見せられるのか。そして出場停止だったキャプテン、チアゴ・シウヴァがチームを再び1つにできるのか。彼らの最後の底力を是非とも見せて欲しいものだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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