日本とまったく同じ状況で「一縷の望み」を持って最終戦に臨んだ韓国。退場で1人少なくなったベルギーを相手に攻め込みはしたし、何度か決定機もつかんだが、終盤に失点してあっけなく敗戦。グループリーグ敗退が決まった。結局、ワールドカップ・ブラジル大会のベスト16に残ったのは南米が5ヶ国(南米勢はエクアドル以外全て勝ち残った)。ヨーロッパが6で北中米が3。アフリカが2。そして、アジアから参加した4チーム(日本、韓国、オーストリア、イラン)は全て各グループ最下位で敗退。3チーム合わせて、なんと3引き分け9敗という惨敗だった(韓国の勝点1は、ロシアのGKアキンフェエフのプレゼントのようなものだ)。強いて可能性を感じさせたゲームといえば、イランがアルゼンチンを追い詰め、そしてメッシの一発に沈んだ試合だけだった。

アジアの経済力はFIFAに対して魅力的だろうから、次回大会からすぐに出場枠を減らされるといった心配はないだろうが、その存在感は限りなく薄くなってしまった。韓国との試合に向けて、すでにグループリーグ突破を決めているベルギーは先発を何人も入れ替えたためコンビネーションに問題があり、韓国にボールを奪われる画面が多く、韓国には前半から攻撃の機会が多かった。そして、少なくとも「スピード感」という意味では日本を上回っていたし、奇誠傭(キ・ソンヨン)のシュート力も魅力的だった。日本の3試合より迫力を感じる攻撃ではあった。だが、逆にあまりにも一本調子だった。ベルギーの大型DFを相手に正面から挑みかかっては跳ね返されてしまう。そして、ベルギーの早いアプローチによってパスコースを消されて、最後はパスの出どころを完全に読まれてカットされる。そんな展開の連続だった。「蟷螂之斧」という言葉を思い出した。

もし、あの韓国のスピードあるFW陣にタメが作れる本田圭佑が入ったとしたら、攻撃もかなり多彩になるだろうし、ゲームを落ち着かせることのできる遠藤保仁がいても面白かっただろう……。いっそのこと、次回からは「アジア選抜」でも作って参加した方がいいのかもしれない。アジア選抜は冗談としても、アジア勢の惨敗についてはしっかりと分析して、次回以降に向けて対策を立てなくてはならないだろう。本来、それはアジアサッカー連盟(AFC)の仕事なのだろうが、今のAFCはイベントを行うことにはえらく熱心だが、強化について真剣に取り組んでいるようには思えない。

例えば、AFCはアジアカップを24ヶ国参加に拡大することを決めている。まるで、ヨーロッパ(UEFA)がEUROを24ヶ国にしたから、それを真似する。そんな態度にしか見えない。アジア・チャンピオンズリーグのフォーマットにしても、全てがヨーロッパの物真似だ。一時は、ヨーロッパ・チャンピオンズリーグを真似て決勝を中立地で行おうとしたが、ヨーロッパと違って、そんな試合に観客が集まるわけもなく、さすがのAFCもあっさりと撤回した。アジアとヨーロッパでは地理的な広がりがまるで違う。東西に大きなアジア大陸には6時間程度の時差があり、また、文化や宗教の一体性もない。サッカーの競技面で言えば、アジアの場合は強国とその他の力の差が大きすぎるのだ。そんなアジアの実態を考えずに、ヨーロッパの真似をしているばかりでは、興行としても、競技力向上としてもうまくいくはずはない。

例えば、アジアカップの24ヶ国拡大。EUROなら、24ヶ国で戦っても力が拮抗しているからいいが、アジアで24番目の国と上位ではまるで力が違うのだ。消化試合のような試合が増えるだけだ。アジアの枠内で強化を行うとすれば、強国同士の真剣勝負の機会を増やすことしかないのではないか。ワールドカップに参加した日本、韓国、オーストリア、イランに、イラクやサウジアラビア、ウズベキスタンあたりを加えた本当に力のあるチーム同士の激しい戦い。それが、アジアの域内で強化をする唯一の方法だ。例えば、ワールドカップ最終予選も2つのグループに分けて行うより、強豪8ヶ国の総当たりリーグにする。それによって、強豪同士の試合を少しでも増やすことができる。いや、ワールドカップ予選などと言わずに、毎年、あるいは2年単位でアジア・リーグを作って強豪同士が総当たりで戦う。そういえば、UEFAも代表チーム同士のリーグを作ると言っているから、物真似大好きのAFCもこのあたりを真似してもらうといいのだが……。

しかし、いつまでも中東主導のAFCに頼っていてはアジアの強化は進まない。ならば、日本サッカー協会と大韓蹴球協会がまず共同でできる道を探ってみてはどうだろう。日本のサッカーの長所と弱点。そして、韓国の長所と弱点。互いを見つめて、互いの良さを取り入れて切磋琢磨することだ。Jリーグにも多くの韓国人選手が活躍しており、両国間には人的な接点も大きい。日韓両国は、隣国として、あるいは歴史的な原因によって互いが嫌いなのは当然のことだが、しかし、世界の中で仲間であるのは間違いない。少なくとも、サッカーの面では協力できることはあるはずだ。両国だけでは問題があるなら、ヨーロッパから遠いという地理的なハンディを持つオーストラリアを入れて、まず、ヶ国で対抗戦を行うなど協力できることあるだろう。

ブラジル開催の2014年大会は、ヨーロッパ勢が苦戦しているように、圧倒的に南米ホームの大会だった。アジアからは最も遠い地域での大会というハンディもあった。だが、次期開催国のロシアは地理的にはアジアの隣接地域での大会である。4年後にアジアが巻き返しを図るために、早急に何らかの対策を打ち出さなければ……。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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