昨年6月のコンフェデレーションズカップ(ブラジル)以降、ブラジル、メキシコ、ウルグアイ、オランダ、ベルギー、コスタリカなどワールドカップ出場国に立て続けに先制点を献上し、自らを劣勢に追い込んでいる日本代表。本田圭佑(ミラン)が「先制点を与えてしまうと、前回優勝のスペインでさえスイスとの初戦を落としている。先制点を取られたら負けるという危機感を持って戦わないといけない。ワールドカップという短期決戦は先制点を取ったチームが勝つのがセオリー」と話したように、彼らは先に失点する悪い癖を何としても修正する必要があった。

ところが、2014年ブラジルワールドカップ本番前最後のテストマッチとなった現地時間6月6日のザンビア戦(タンパ)では、非常にふわっとした入りを見せてしまい、前半30分までの間に2失点。しかも開始9分の1点目は前々からの大きな課題であるクロスからクリストファー・カトンゴ(ゴールデン・アローズ)に飛び込まれた形。そして29分の2点目も右CKからエマニュエル・マユカ(ソショー)がスルーして空けたスペースにネイザン・シンカラ(ソショー)が飛び込んで決めたもので、やはり苦手なリスタートからの失点だった。

ザッケローニ監督は「強豪相手には1点取られても大丈夫というくらいのメンタリティーを持つことが大切だ」と現地時間6月2日のコスタリカ戦(タンパ)の後、楽観的に話していたが、これが本番だったら間違いなくコートジボワールに惨敗しているだろう。短期決戦での失点はやはり致命傷になりかねない。そのことを選手たちには嫌と言うほど再認識してほしいものだ。

現地時間6月6日のこの日は、気温30度弱の19時半キックオフだったこともあって、選手たちの疲れがピークに達しているなど、悪条件がいくつか重なったのも事実だ。だが、とにかく序盤からチーム全体としての動きが悪く、攻守ともに連動性がなかった。頭抜けたフィジカル能力を持つザンビアの選手に1人がかわされ、2人目もフォローに行けず最終ラインが崩される、というパターンが繰り返された。スピードでは絶対的自信を持つ内田篤人(シャルケ)でさえ、相手に翻弄されるシーンが目立った。個対個の勝負で勝てていたのは、「スピードとか1対1で全然負ける気はしなかった」と言い切った長友佑都(インテル)と山口蛍(C大阪)くらいだった。最終的に後半に巻き返して4−3で逆転したからといって、本田がこの4年間、口を酸っぱくして言い続けてきた個の力では、やはりアフリカ勢には勝てていない。厳しいことだが、それが現実なのだ。

コートジボワール戦も無防備なまま真っ向勝負に挑んでいたら、この日の二の舞になる可能性が高い。本田は「前回(南アフリカ大会)のような守備に重点を置いたスタイルなら、4点は取れなかったと思う」と自分たちの攻撃的スタイルに希望を見出そうとしたが、あくまでこの日は、2日前にアメリカ入りしたザンビアの選手たちの調整不足や、ブラジル本大会に出場しないモチベーションの低さなどに助けられて逆転できただけである。この試合がワールドカップ本番ならば、相手ももっと真剣に守備をしたはずだ。ザッケローニ監督も「当然、守備はこのままではいけないし。修正すべきポイントだ」と強調したように、残された1週間でそれをやらないことには、1次リーグ突破など夢のまた夢になってしまう。

2006年ドイツ大会の時も、現地入りして最初のテストマッチだったドイツ戦(レヴァークーゼン)で、いい試合をした後のマルタ戦(デュッセルドルフ)でふわっとした試合をしてしまった。その試合も結果的には1−0で勝ち、チームとして根本的な問題点を改善できないまま、本番で失敗している。その時の唯一の経験者の遠藤保仁(G大阪)は「だからこそ、ザンビア戦から本番までの過ごし方が重要になる」と強調していたが、集中力を欠いた入りをしたのに結果がついてきたという今回は8年前と全く同じ流れになっている。遠藤が「ドイツと似た感じはある」と言うように、ザックジャパンはジーコジャパンと共通した雰囲気があるだけに、本当にここで危機感を持たないとダメだろう。

幸いにして、長友が「ここで気を引き締めないと、このままではワールドカップが1つのお祭りで終わってしまう」警鐘を鳴らしたように、主力選手たちは何かを変えないといけないと考えている。それはまだ救いである。4年前の南アフリカ大会では本田の1トップ起用など、この1週間で戦い方をガラリと変えて、本番で成功した。つまり、彼らにはまだ現状を改善できる時間がわずかに残されているということだ。

ザッケローニ監督が今から守備的な戦い方にするとは思えないが、時間帯によってブロックを固めるなど、組織として細かい部分を見直す事などはできるはずである。我々もブラジル入りしてからの彼らの動向を厳しい目で見ていくしかないだろう。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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