田中将大のMLBでの1か月が終わった。これまでの投球を数字から分析してみよう。

◆ポイント1:MLBでもっとも安定した投手

予想以上とまではいかないが、期待通りの成績を残したと言って良いだろう。何と言っても素晴らしいのは「安定感」だ。田中はア・リーグの先発投手の中で、平均投球回数が1位、QS(クオリティ・スタート=先発登板で6回以上投げて3自責点以下)数は2位だが、QS率は100%で1位タイ。

ちなみに田中は昨年、楽天で27試合に先発しすべてQS。2012年8月19日の西武戦で5回自責点6で降板して以来、40先発連続でQSをマークしている。連勝記録が注目されているが、この記録もすごい。

田中の被安打率は.217、これはリーグ8位、好成績だが抜群と言うほどではない。しかし、被出塁率はリーグ1位の.250。田中の優秀さは四球を出さないことにあるのだ。1回あたりに許した走者数(WHIP)も2位。打者を圧倒しているという印象はないが、とにかくリスクが少ない。これが安定感の源泉だと言えるだろう。

◆ポイント2:もっとも一発を食らっている投手

しかし、懸念材料もなくはない。被本塁打はリーグ2番目の7本。すべての日本人投手にとってMLBのパワーは、大きな壁になる。田中も例外ではなかったのだ。既に被本塁打数は昨年、日本での1シーズンで撃たれた6本を超えている。田中の防御率が、被出塁率の低さの割にやや高いのは、本塁打が多いからだ。

私はシーズン前、左打者が課題だと書いたが、ふたを開けてみるとMLBでの田中は右打者に打ちこまれている。2013年日本での田中は右打者に被打率.210、左打者に.226だったが、右打者に5本塁打されている(左は1本塁打)。同じ傾向が出ているといえよう。

◆ポイント3:対戦相手は早打ちする傾向

また、田中はストライクの割合がリーグ4位の68.5%と、素晴らしい制球力を誇っている。一方で、田中の全投球に占める「見逃し率」は57%で、規定投球回数以上の51人中50番目と、もっとも見逃されることが少ない投手というわけだ。

つまり対戦チームの各打者は、田中の球をよく見極めることなく、手を出して凡退しているということだ。まだ、手の内が見えない投手だけに、とりあえず打ってみると言う打者が多いのだろう。田中のSO9(9回あたりの奪三振数)が10.76と、日本での通算8.45を大きく上回っているのもそのせいだ。

◆ポイント4:最大の武器、スプリッターの危険性

ところで、ロスアンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムの主砲、アルバート・プホルズが気になることを言っている。「田中?聞いていた通り、スプリッターが多い。でも、それだけじゃないかな。日本人投手はみんなほとんど一緒だよ。ダルビッシュや岩隈とね」。これは何を意味しているのか? 田中のスプリッターを詳細に分析してみた。

田中は今季129球のスプリッターを投じているが、これを見逃されたケースは40回ある。このうち、ストライクとなったのは7球だけ(2つの試合だけに偏っているのは、主審の判断に左右されることが多いことを意味している)。33はボールで、空振りが53もある。バットに当たったのは36球だが、安打はわずか3。

この結果から導き出されるのは「田中のスプリッターには手を出す必要はない。ほとんどがボールになるから」 という結論だ。プホルズの言葉は「スプリッターにだけ気を付ければ普通の投手だ」ということだと思う。

各球団は今、必死になって「田中がスプリッターを投げる時の癖」を見つけ出そうとしているのではないか。田中はさらにその上を行く投球をしなければならない。中4日の登板は、心身に負担になってきているだろう。これからが正念場だ。

データ1 田中将大のア・リーグでのランキング(2014年5月8日現在)

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データ2 田中将大のア・リーグでの被安打、被出塁に関するランキング(2014年5月8日現在)

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データ3 田中将大 左右別被打者成績(2014年5月8日現在)

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データ4 田中将大の制球に関するア・リーグでのランキング(2014年5月8日現在)

NP=投球数 S=ストライク S%=ストライク率 L=見逃し L(Ball)=見逃しボール L(Strike)=見逃しストライク

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データ5田中将大のスプリッターに対する打者の対応(2014年5月8日現在)

LS=見逃しストライク L=見逃しボール S=空振り H=安打 O=凡打 F=ファウル SP=スプリッター投球数 NP=総投球数

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広尾 晃
1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。ライター。日米の野球記録を専門に取り上げるブログサイト「野球の記録で話したい」でライブドアブログ奨学金受賞。そのほか、プロ野球の名選手の記録を紹介する「クラシックSTAS鑑賞」などのサイトも運営。合わせて月間70万PVを集めている。著書に「プロ野球なんでもランキング」(イーストプレス刊)

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