右ヒジの故障で昨年6月に腱移植手術(通称トミー・ジョン手術)を受けた吉見一起が、ほぼ1年ぶりの実践登板を果たした。最速で5月中の一軍復帰もあり得るという。今後、われわれは彼にどこまでのパフォーマンスを期待できるだろうか。

吉見は5月1日のウエスタン・リーグの対オリックス戦の最終回に登板し、1三振を含む3者凡退の好投を見せた。その裏中日はサヨナラ勝ちし、吉見は勝利投手になっている。今後は徐々にイニング数を伸ばしていくらしい。新聞報道を見てちょっと驚いたのが球速だ。速球は全て140キロ以上で、最速144キロをマークしたという。私の記憶では、故障前は140キロをヒットすることは多くなかったと思う。予想以上に回復は順調のようだ。

吉見の手術前の最終登板は昨年5月7日のヤクルト戦。報道されているように、5月末から6月上旬に一軍復帰登板を果たせば、最終登板から400日弱となる。今から40年前、元祖のトミー・ジョン(当時ドジャース)がフランク・ジョーブ博士(今年3月88歳で死去)の執刀で人類史上類のない手術に再起を賭けた際は、最終登板から復帰登板まで691日を要した。また、83年に村田兆治(ロッテ)や、95年に桑田真澄(巨人)が手術を受けた際も復帰まで約2年を要している。しかし、その後事前の診断や術後のリハビリの研究が進み、近年ではスティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)が、11年9月に381日で復帰を果たしている。

吉見の場合手術は昨年6月4日だったため、手術からの一軍復帰登板まででは1年を切る可能性もある。そうなると、11年6月10日に手術を受け、365日目の12年6月9日にメジャー復帰を果たした松坂大輔(現メッツ)を上回る。ただし、復帰即完全復活ではないことはわれわれファンも肝に銘じておかねばならない。アメリカでは、2013年にベースボール・アナリストのブライアン・カートライトとジェフ・ジマーマンが『トミー・ジョン手術後に何が起こるか?』という論文を発表した。そこでは、同手術を受けた投手の追跡調査により、故障前の球速が戻るのは概ね復帰2年目だということと、故障前を越える成績を残すのは3年目だということが統計学的に示されている。実際、松坂の場合も復帰初年度は復調の兆しが見えず、2年目の昨季はメッツでメジャー復帰を果たした終盤にようやく片鱗を見せ、救援に転向している今季に快投を見せている。限られたタマ数とはいえすでに手術前を上回る球速を記録した吉見には、投壊ドラゴンズの救世主としてフル回転を期待したいのは山々だが、少なくとも今季は過大な負担は禁物だろう。

一方、好材料もある。前述の論文では、トミー・ジョン手術を経験した投手は加齢による衰えが手術未経験の投手よりも緩やかであるとしている。そう言えば、トミー・ジョンは33歳で復帰を果たすと46歳まで現役を続け、その間164勝を挙げた(通算では288勝)。現在29歳の吉見にも、長期にわたる活躍を期待したいものだ。

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豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:shotaro.toyora@facebook.com

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