改修前の国立競技場でのJリーグ公式戦も残りわずか。現在の聖地での試合を1つでも多く目に焼き付けておきたいと、29日FC東京対名古屋グランパス戦に足を運んだ。天気が何とか持ったこともあり、2万5851人の大観衆が集まり、スタジアムは連休らしい盛り上がりに包まれた。

ホーム・FC東京はセレッソ大阪、横浜F・マリノスに連勝し、10試合終了時点で勝ち点14の10位まで順位を上げてきた。この調子を維持して上位浮上を果たしたかった。対する名古屋はケネディら負傷者が続出している影響もあって最近5連敗。西野朗監督はFWが本職の矢野貴章を2節前のヴァンフォーレ甲府戦から右サイドバックに起用するなど、苦肉の策を講じている。そんな泥沼状態から早く抜け出したいところだった。

前半は一進一退の攻防が続いた。名古屋の西野監督はFC東京の高橋秀人、米本拓司、三田啓貴のボランチ3枚を分断するため、この試合から復帰した玉田圭司を中盤に下げタメを作らせ、前線の永井謙佑や2列目の枝村匠馬、小川佳純らをゴール前に走らせる形を狙った。玉田の献身的なプレーは大いに光り、永井が前線でフリーになるチャンスも何度か見られた。彼の一瞬の動き出しの速さ、飛び出すスピードに日本代表DF森重真人も間違いなく手を焼いていた。

そして後半開始早々の3分、名古屋は小川の右CKから矢野がニアサイドにスッと入り込み打点の高いヘッドを放つ。これがゴールネットを揺らし、待望の先制点を挙げた。

この失点を受け、FC東京も反撃に出るため武藤嘉紀、松田陸らを投入。サイドを打開して再三再四CKを取り、平山相太をターゲットにしながらゴールを狙った。が、守護神・楢崎正剛らの体を張った守りをどうしても崩しきれない。逆に名古屋の永井にカウンターを仕掛けられ、守備陣が翻弄される時間帯もあった。シュート数自体はFC東京の方が多かったものの、ゴールをこじ開けられずに1−0のまま試合終了。名古屋が貴重な今季4勝目を飾った。

その立役者の1人が、爆発的なスピードで相手に脅威を与えた永井だろう。2012年ロンドン五輪で活躍した半年後の2013年1月、彼はベルギーのスタンダール・リエージュに完全移籍したが、リーグ戦出場はわずか3試合にとどまり、半年で古巣・名古屋にレンタルで復帰することになった。けれども、昨季後半の永井は精彩を欠き、トップパフォーマンスからかけ離れた状態に陥っていた。リーグ戦14試合に出場したものの、得点はゼロ。2012年に30試合出場10ゴールをマークした選手としては、あまりにも不完全燃焼感が強すぎた。

「ベルギーに行ってから、クラブ側の指示で週2〜3回は筋トレをしていたんです。だけど、僕は筋肉がつきやすい方。それをやることで、逆に敏捷性とか動き出しが遅くなってしまい、自分らしい動きができなくなったんです。名古屋に戻ってからも、いつもなら行けるところで行けなかったり、初速がなかなか上がらなくて加速が遅れたりした。自分の中では戸惑いも感じましたね。ベルギーでキャンプにも参加できなくて、体が締まっていなかったのもあったと思います。結局、そのまま1年間が終わってしまったんで、今季はコンディションを上げようと思ってタイキャンプから出直しました。そこで1から体を作り直せたのは大きかったです。今日も90分近くプレーしたけど、運動量もかなり増えたし、周りとのコンビネーションもどんどんよくなってると感じました。タマさん(玉田圭司)が中盤でタメを作って相手を引きつけてくれたり、(田口)泰士が自分をよく見てくれるんで、裏に抜け出すチャンスも結構ありました。あとはフィニッシュの部分。しっかり決めるところまでやりたいです」と永井は苦しかった2013年を踏まえ、新たな気持ちで今季に挑んでいることを打ち明けてくれた。

ちょうど4年前、福岡大学の選手だった永井は2010年南アフリカワールドカップのサポートメンバーに選ばれ、香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)、酒井高徳(シュトゥットガルト)、山村和也(鹿島アントラーズ)とともに日本代表に帯同。縁の下の力持ちとしてチームのべスト16入りを支えた。

ギリギリの戦いを繰り広げる先輩たちを見て、彼は「次のブラジルには絶対に行きたい」と強く思っていたはずだ。その2年後のロンドン五輪でベスト4まで勝ち上がったところまではある意味、順調な歩みを見せていただけに、2013年の挫折は本人にとっても想定外だったことだろう。

「4年前が学生でしたからね。だけど南アで経験したことは今に生きてるし、目標がそこ(ワールドカップ)っていうのはブレてない。自分は足踏みした分、今からまた頑張るしかないですね」と永井は笑顔でこう言った。ブラジル行きの可能性は極めて低いが、彼にはその先もある。今は自分らしさを取り戻す作業に集中するのが一番いい。今回のFC東京戦を完全復活のいいきっかけにしてほしいものだ。

photo

元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

お知らせ

◆プレミアリーグの激戦が、PC、スマホ、タブレットでいつでもどこでも見られる!
J SPORTS LIVE+ オンデマンドでは、放送と合わせてプレミアリーグ全380試合視聴可能!
J SPORTS Football by LIVESPORT.TVでは、プレミアリーグ全試合視聴可能!
詳細はオンデマンドページでご確認ください。

スカパー!×J SPORTS J SPORTS オンラインショップ