「登板が待ちきれないよ」と、まるでファンの声を代弁するかのようにいったのは、中軸打者アルフォンゾ・ソリアノだ。
「本当に楽しみだよ。彼にはあの素晴らしいスプリッターもあるし、キレのいいスライダーもある。きっと、期待に応えてくれると思うよ」

開幕第2戦が始まる前のクラブハウス。敵地ヒューストン・ミニッツメイドパークには日米のメディアが大挙して押しかけた。主将デレク・ジーターの現役最後の開幕戦に加えて、「1億5500万ドルの男」田中将大への関心。ソリアノはメディアでごった返す様子を眺めながら、もう一度いった。

「待ちきれないよ」

いよいよ、デビューの日がやってくる。オープン戦最後の登板で6イニングスを投げて10奪三振。その快投で、田中への期待は際限なく膨らむ。ニューヨーク・メディアの評価も、これまでの「やるだろう」から、「相当やるに違いない」と、確信に変わってきた。

その辺は田中も十分に承知している。
「期待に応える(という気持ち)、それが強すぎるのは嫌だ」

キャンプ初日から受ける印象は変わらない。
常に冷静で、落ち着いている。そのとき、そのときに何をすべきか心得ている。開幕を迎えるにあたっても、同じ姿勢だ。 「マウンドに上がって、『あ、こんなんだ』 と、驚くのは嫌なので、できるだけ(試合をみながら)雰囲気を感じていたい」

2日のブルペンでは変化球をまじえて36球を投げた。
「普通ですよ」と、よく使うフレーズで表現したが、「体は順調」と、そこには自信も垣間見える。

ヤンキースはアストロズとの開幕3連戦を1勝2敗と負け越した。3試合で20安打の7得点。打てない。ベテランの調子がいまひとつ上がってこない。田中のデビュー戦はヒューストンから移動日なしで、カナダ・トロントで行われる。強行スケジュールも重なって力強い援護が期待できないかもしれない。

一方で、ブルージェイズ打線は2年連続ホームラン王に輝いたこともあるホセ・バウティスタを中心の強打が売り物。しかも、本拠地ロジャースセンターは昨年、メジャー球場で2番目に多いホームランが飛び出しているほどの打者有利の球場だ。田中にとっては厄介な相手といえる。

一体どんな投球を見せてくれるのか。
「タナカは投球のテンポがいいので、野手にとっては守りやすい投手」と、ジーターはいう。よくいわれることだが、守りのリズムが攻撃のリズムを作る。田中が順調な立ち上がりをみせて本来の投球ができれば、調子の上がってこないベテラン勢のバットが一気に火を噴く可能性もある。 「待ちきれない」デビュー戦は間もなくプレーボールだ。

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出村 義和
法大社会学部、ユタ州立大学ジャーナリズム科卒。ベースボールマガジン社で週刊ベースボール編集長などを務め、渡米。ニューヨークを拠点に長年に渡って取材・執筆を行う。05年夏、拠点を日本に移し、日米間を往復しながら現地取材を続けている。09年からJ SPORTSでMLB実況中継の解説を務める。著書に『メジャーリーガーズ』(小学館文庫)など。スポーツジャーナリスト。

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