気持ちのこもった一戦だった。全員が走り、叫び、捨て身の覚悟で挑み続けた。アウェーゴールを許し、準決勝進出が難しくなったとはいえ、スタジアムに詰めかけたサポーターが拍手と歓声で選手たちを称賛したのは、選手たちの闘う姿勢に心を打たれたからだろう。

今シーズンのパフォーマンスを踏まえれば、マンチェスター・ユナイテッドがバイエルン・ミュンヘンを下し、チャンピオンズリーグのベスト4に名乗りをあげる確率は極めて低い。下馬評も総じてバイエルン圧倒的優位であり、1stレグで早々に決着するとみるメディアもあった。史上最速でブンデスリーガを制したバイエルン。暗中模索のユナイテッド。至極当然の見方である。しかし…。

デイビッド・モイーズ監督は、割り切っていた。

ポゼッションで勝負を挑んでも、バイエルンと互角に闘えるわけがない。ならば、基本プランはロングカウンター。アントニオ・バレンシア、ダニー・ウェルベックをスタメンに起用したのは、長い距離でもスプリントを繰り返せる両選手の特徴を考慮したに違いない。事実、バイエルンDF陣は彼らのスピードに手を焼き、とくにハビ・マルティネスは再三にわたって後手を踏んでいた。

香川真司、アドナン・ヤヌザイのようなテクニックはないものの、ウェルベックにもバレンシアにも強みがある。総合力で劣るチームが戦局を拮抗させるに手段は、明確な戦略だ。今シーズン、行き当たりばったりの用兵が続いたモイーズ監督だが、バイエルンとの1stレグでは人選、プランともズバリ的中した。

ユナイテッドの231本に対し、バイエルンは754本。パス成功数では3.26倍の開きがある。最終的なポゼッション率も30%対70%。データでは完敗だ。アウェーの1stレグで無理をしなかったこと、ブンデスリーガ優勝(前述)で心身ともにひと区切りついたことなど、バイエルンの事情にも助けられたかもしれない。

あるいは、敬愛するサー・アレックス・ファーガソンが創りあげたチームを、ジョゼップ・グアルディオラ監督が尊敬しすぎたのかもしれない。

とはいえ、ユナイテッドが今シーズン最高のパフォーマンスを披露し、2ndレグまで興味をつないだ事実に変わりはない。アリアンツ・アレーナでの決戦には、パトリス・エブラが出場停止から帰ってくる。ふくらはぎを痛めて2か月近く欠場しているジョニー・エバンズも、いよいよフルトレーニングに復帰した。ウェイン・ルーニーが好調を維持し、ダレン・フレッチャー、香川のフィジカルも上向いてきた。

モイーズ監督にクラブの将来を託せるとは思えないが、今シーズンのユナイテッドは、まだ楽しめそうだ。

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粕谷 秀樹
月刊ワールドサッカーダイジェスト初代編集長を務めた。海外サッカーの解説者としても活躍。

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マンチェスター・ユナイテッド vs. バイエルン 再放送予定
4月3日(木)午後09:30〜深夜00:00 J SPORTS 4
4月5日(土)午前11:00〜午後01:30 J SPORTS 4
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