[写真]ルパン近藤 With 高橋大輔選手 @2013年NHK杯
(c)近藤琢哉 Takuya Kondoh

記者島津です。誰よりもフィギュアスケート研究に没頭して来られたフィギュアスケーター、ルパン近藤こと近藤琢哉さん(慶應義塾大学四年・2014年現役引退)に期待の若手選手や観戦ポイントについてお伺いしました。世界ジュニアや新時代に向けて、取り急ぎここだけは押さえましょう!続いて女子編です。

ルパン近藤
アートをスケートに取り入れたい、スケートでもアートを学びたいという現役時代を過ごす。スポーツファンが大好きなスケーティングの爽快な速さとクイックな動作(踊り)を持つスピードスター。お洒落でまごころのある『ルパン三世』は語り継がれる名演。The Chemical Brothersのロック寄りの儲かった曲ではなくブレイクビーツで滑る(=選曲の時点で偉業)。ハタチ頃に岩井俊二の少年少女像に傾倒し、テリー・ギリアムの映画『12モンキーズ』を絶対見たい日があった。

TK: 近藤琢哉さん
PP: Pigeon Post ピジョンポスト 島津愛子

男子編はこちら

Satoko MIYAHAYA 宮原知子選手(15)世界ジュニア出場
『練習の達人』
ジャンプも大きく進化中

[写真]宮原知子選手

TK: 知子は、練習をとにかく熱心にやる、っていう。
PP: 皆さんそうおっしゃいますよね。
TK: その練習がすごいな、と。高校生位だと先生が言われるようにただ「がむしゃら」にやる。それだと結局「一番練習した人が勝つ」みたいな、そういう風になると思うんですよ。でも実際はそうじゃないじゃないですか。
PP: 「スポ根(スポーツ根性)があれば勝てる」わけではないんですよね。
TK: 知子は先生に言われる中で「自分の工夫を入れた練習が出来る」っていう。
PP: 賢い選手じゃないとトップに行けませんね。
TK: もちろん、感覚的に出来る優れた選手もいたり個人差はあると思うんですけど、受動的じゃなくて能動的に出来るっていうのが必要だと思うし、そういう面で強い選手じゃないかなと思います。
PP: 主体性が強い、と。知子さんはこう、「静かな闘志」がありますね。
TK: あ!そうです、そういう感じ。そこまでたくさん話したことがあるわけじゃないんですけど(笑)

PP: ジャンプは現在でもトップクラスの構成ですね。
TK: ジャンプは、最初見た時「あんな小さいジャンプでよく飛べるな」と、不思議な感じで。
PP: あ!レイノルズ(カナダ)的な(「不思議な四回転」日頃フィギュアスケートを見ないスポーツファンにルパン近藤が語るソチ五輪フィギュアスケート男子海外注目選手紹介)。
TK: でも今見ると不思議な感じはなくなって、多分ジャンプを改良していると思うんです。
PP: 前回の世界ジュニアでは回転不足の判定を受けていましたし。「大きく(高さを出し・スピードをつけて幅も出す)飛ぶ」という風に変わっているんですね。
TK: それが3-3(ルッツートゥループ)にも出ていて、一個目が小さいジャンプだと、降りた後にスピードが止まって、二個目のジャンプで上がるとか回る力が弱くなっちゃうんですよね。ある程度のスピードや高さは、コンビネーションジャンプの流れを作るために必要だと思うんですよ。
PP: ジャンプ自体の質を上げることが、コンビネーションにも活きるんですね。

Rika HONGO 本郷理華選手(17)世界ジュニア出場
『べっぴんダイナミック嬢』
ジャンプ以外の伸びしろにも期待

TK: 彼女はもう、ジャンプが凄まじい(笑)
PP: 理華さんを2012年の全日本ジュニアで初めて観た時、ジャンプがまぁー!大きいし、一人だけ擬音が違う感じでした(笑)
TK: (笑)あれはそれこそ、伊藤みどりさん的な(「女子で男らしさを出したジャンプ」日頃フィギュアスケートを見ないスポーツファンにルパン近藤が語るソチ五輪フィギュアスケート女子日本代表選手紹介)。
PP: ソトニコワ(ロシア)同様の、男勝りなジャンプですね(笑)
TK: 彰生(佐々木彰生選手)が「背筋が物凄いから!」とか言うんですけど、その通りで。
PP: 大円筋(肩を動かす筋肉)も物凄いですよ!
TK: (笑)全部物凄いです。
PP: 理華さんは体も大きいですよね(ISUバイオでは165cm)。
TK: そういうシルエット的な大きさもあるし、ダイナミックです。
PP: これからの日本女子は理華さんの活躍にかかっているんじゃないか、と中庭健介先生と話してたんですけど。
TK: あー、そうですね。女子に関しては、ジャンプの持ち駒って最終的には皆同じになると思うんですよ(浅田真央選手を除き、ショートで3-3・フリーで三回転ジャンプを7回)。その中でどう差をつけるかと言ったら、ひとつは「ジャンプの質(加点)」。もうひとつは踊るとか回る(スピン)とかそういったところで差が出て来ると思うんです。理華に関しては抜きん出て「ジャンプの質」が良いですよね。スケーティングだとかジャンプ以外の部分の成長が、これからの見どころになってくるんじゃないですかね。

『次に来るスター☆』
西・Marin HONDA 本田真凛選手(12)
東・Wakaba HIGUCHI 樋口新葉選手(13)
〜ルパン近藤presents〜コンビネーションジャンプのツボ、意識改革でキッズは化ける

PP: 佐野先生(ルパン近藤が長年指導を受けていた佐野稔コーチ)からも中庭先生からも、「必ず、次に来る!」とこのお二人のお名前が挙がったんですよ。
TK: 真凛ちゃんは、あんまり観たことないんですけど、ジャンプの回転が速いですよね……(動画を再度確認するルパン近藤)あ、ジャンプうまいですね!やっぱり、太一(兄の本田太一選手)にちょっとジャンプ似てるかもしれないですね。3-3も簡単に飛んじゃいますね。
PP: キム・ヨナ選手位にラクに飛んでますね。
TK: そうですね。女子の中で3-3の二個目をきっちり回れる選手は、そうそういなくて。
PP: 当たり前ですけれど、一個目のジャンプの威力や二個目のジャンプに持ち込むフィジカルがやはり女子は男子よりもない。だから二個目につながらない、と。
TK: コンビネーションは一個目より二個目が高くなる位のつもりで飛ぶんです。実際はそうはならないかもしれないんですけど。
PP: そういうイメージで入るんですね。
TK: 二個目のジャンプをダイナミックに飛ぶには、かなりの技術力も筋力も必要だと思うんですけど、女子で一個目と二個目がそんなに変わらず飛べてる、っていうのは衝撃的ですね。
PP: でも、この体つきのままずっと行けばいいんですけど、そうはいかないですからね……。
TK: 女子のジュニアの難しいところはそこですよね。体が変わったり、体重維持をするのが難しいですね。
PP: 今川知子先生(プロスケーターで活躍後ジャーナリストに転身。現在は関西大学のコーチ)に、「フィギュアスケートの氷上練習はそれほどカロリーを消費しない」って伺ったんですよ。
TK: あ、そうなんですか?
PP: なぜなら、「滑ることに慣れていて、うまくなれば力を使わずに滑ることが出来るから」って。
TK: それは絶対あります!僕も最後のシーズンにジャンプを改造したり根本的にスケーティングも変えたりしたんですけど、そしたら途端にラクになって。やっぱり技術が上がるというのは、体の負担も少なくなると思うんで。

TK: 僕、最後のシーズンは岡島(功治)先生だったから、新葉と同じ先生だったんですけど、体とか見ても筋肉質ですし、ジャンプもすごいパワフルで。
PP: 神宮(明治神宮外苑フィギュアスケートクラブ。近藤琢哉選手、中村健人選手、西野友毬選手らが所属。)からまた、素晴らしい若手選手が!
TK: そうですね。ここのところ神宮から小さい子が出てなかったんで、「神宮から」っていうのもそうですし、「東(日本)から」っていう意味でも非常に期待の選手です。やっぱり「西高東低」の今のスケート界なので、東の底上げっていう面でも新葉にはほんと頑張ってほしいです。
PP: まだ中学一年生ながら体幹も出来ていて、陸トレ頑張ってるんじゃないかな、と思いますけど。
TK: 陸トレもそうですけど、とにかく練習をよくするんで、練習量の賜物だと思いますね。もちろん女子選手は練習に関しては皆やってると思うんですけども。その中で……生意気言うようですけど(笑)、中学生位になると皆、知子ちゃんみたいに「自分でこうしよう」っていう主体性が出て来ると思うんです。新葉もこれからそういう風に変わってくると思うんで、そこがまた期待できるところですかね。「考え方」が変わることで、絶対演技も変わるんですよ!
PP: 意識改革!
TK: 絶対これから変わっていく。どう化けていくのか楽しみです!

Haruna SUZUKI 鈴木春奈選手(16)
『スタイリッシュ嬢』
……ジャンプさえ。

PP: 中庭先生も言われていたんですけど、ジュニアの中で滑りも踊りも本当に素敵なんです!……ただこの2シーズン、ジャンプが不調のようで。
TK: 現状、ジャンプの持ち駒が少ない中で「飛べるジャンプを確実に飛ぶ・あとはスケーティングとかで稼ぐ」というのがひとつ作戦としてあると思うんですけれども、今は飛べるジャンプも試合でミスってしまったり。スケーティングがうまいからこそ、そういうのが……見てるほうとしても「もったいないなぁー」って思っちゃいますよね。でも、「ジャンプが飛べた時の強さ」っていうのはありますよね、スケーティングが綺麗ですから!
PP: 2シーズン前の東日本では、「(基礎点の高い難しいジャンプの)ルッツとフリップがまぁー、ビックリする位決まるようになった!」って言われてたんですよ……。
TK: 女の子の難しさである、体の変調であったりとか、どう体をコントロールしていくのかっていうのもあるだろうし、気持ちの面でもジュニアの頃って揺れると思うんですよ。ある意味シニアになると、「やる!」って決めやすいんです。残りの年数を考えると、「ここは勝負をかけるしかない!」みたいなそういう気持ちになると思うんですけど、なかなかジュニアって、先の長さとか「自分がどうなりたいのか」っていう部分で不安も感じたり。そういう難しさもありますね。
PP: スポーツがんばってるキッズは、誰しも「このままコレだけやっててもいいのか」みたいな、そういう乗り越えなきゃいけない壁がありますよね……。
TK: そうですね。でも、春奈ちゃんは練習を誰よりも頑張ってますよ!今が踏ん張り時で。
PP: 復活を待ちわびております!

『日本女子シングルを支える姉さん』
Haruka IMAI 今井遥選手(20)
Yuki NISHINO 西野友毬選手(20)

PP: 遥さんは、自らジャンプを修正して、それで1月の四大陸選手権でサルコウートゥループの3-3を決めたんですよ!先生主導じゃなくて自ら修正、っていうのがスゴイですよ。インタビューも毎回、信念の強さを感じます。
TK: 誰にどう言われてもブレない、みたいな我の強さは絶対必要だと思うんですね。人がこう言うからこう、あっちの人はああ言うから、みたいになってくると目標もブレてきますし、目標がブレると道筋もブレちゃうんで、その分時間もかかっちゃう、っていう。だからその強さは、遥ちゃんの武器だと思うんです。
PP: 頑固一徹、みたいなカッコよさがありますね。
TK: 友毬は、冬季国体(1月末)後樋口先生(樋口豊コーチ)に変わったんですけど(これまでは岡島コーチと樋口コーチの二人体制だった)。学年(現在大学二年生)も学年だけに、残りシーズンのほうが少ないじゃないですか。そうなった時に「どういう風に変わりたいのか」とか、よりジュニアの頃よりは考えると思うんですよ。その中で勝負に出たというか、決断をしたんで。全日本でもあまり良くなかったですし、「背水の陣で臨む」っていう決意なのかな、と。
PP: 来シーズン以降の友毬さんの演技が待ち切れないですね。

村上佳菜子選手(19)の紹介はこちら
トリプルアクセル挑戦やコンビネーションジャンプのセカンド(「二個目」)でトリプルトゥループよりも難しいトリプルループをつける大庭雅選手(18)、プリンセス庄司理紗選手(17)にも御注目下さい。

Elena RADIONOVA エレーナ・ラジオノワ選手(15)世界ジュニア出場
『おそロシアの踊り番長』
ルパン近藤的「ロシア」考察#2

[写真]エレーナ・ラジオノワ選手

TK: NHK杯(11月)の時にびっくりしたのがひとつあって……「見るからに子供」じゃないですか(笑)。
PP: (笑)なのにスゴイんです!
TK: とにかくよく飛ぶし踊るし、なにより滑ってる時楽しそうですよね!
PP: ソトニコワ・リプニツカヤ・ポゴリラヤ達と「おそロシア」の一角を成しているんですけど、その「おそロシア」の中で踊り番長かな、と。
TK: ロシアの女子って、振付が独特というのもあるし、踊りがおもしろいですよね。他とは一線を画す「ロシア流」みたいな。今までのロシアの感じでもないし、ちょっと変わってるな、と。
PP: 「今までのロシアの感じ」っていうのは?
TK: 「王道」というか、ロシアンバレエから派生した踊りだとか、堂々としたジャンプ、そういうのがロシアって感じだったんですけど。その中で、イリヤ・クリムキンとか踊りがちょっと変わった人達もいて(笑)、そういう潮流を今のロシア女子にも感じたりしますね。
PP: そうですね!陸のダンスで言うと「コンテンポラリー(心象を抽象的に表現)」なのがロシア、って感じです。
TK: ロシアがすごい強かった時期から弱くなって、アメリカ・カナダが強くなったという時代を迎えて、「ソチ五輪に向けて選手もコーチもロシア国内に集めて強化した」という話を聞いたんですよ。その強化が、今こうやって女子には確実に結果として出ていますし。「今までのロシア流じゃない」という改革のひとつが振付にも出てるのかな〜と推量なんですけど(笑)、感じますね。
PP: そうして聞くとソトニコワのソチ五輪金メダルもより感慨深いです!実を結びましたね〜
TK: ラジオノワは、今はまだ良い意味でも悪い意味でも「ジュニアっぽさ」があると思うんですよ。踊るんですけど、まだ体がしっかりしてないっていうのもあるし、滑りも「もう一歩二歩伸びる」というポテンシャルを感じるんで。今っていうよりもむしろ、これからのほうがよっぽど楽しみなんじゃないかな、と。 (ルパン近藤的「ロシア」考察#1は男子編で!)

ルパン近藤的『ジュニアの見方』

ジュニアの選手は、1年1年変わっていくんです。どう去年と変わったのか・これからどう変わっていくのか、そこに注目したり、これからどう化けるのかっていうのが見どころだし、楽しみですよね。シニア以上に変化がある。そこがジュニアの見方としておもしろいと思うんですよ。

解説:近藤琢哉 Takuya Kondoh
テキスト:島津愛子 Aiko Shimazu

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Pigeon Post ピジョンポスト
フィギュアスケーターの"声" "今"を届ける記者チーム(Pigeon Post HP)。
日本チームを中心に、世界のフィギュアスケートを特集する日本語英語のバイリンガルサイトで、インタビュー・リポートを掲載。Twitterをポータルとして、新しい記事の紹介やニュース、イベントのリポートまで、ワンストップで伝える。FacebookもTwitterと連携させている。

お知らせ

【参考記事】女子ジュニアの難しさについて語られた中庭健介コーチのインタビュー(Pigeon Post)

◆ISU世界ジュニアフィギュアスケート選手権2014
3月21日 (金) 〜23日(日)エキシビジョンまで全種目放送!
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