記者島津です。誰よりもフィギュアスケート研究に没頭して来られたフィギュアスケーター、ルパン近藤こと近藤琢哉さん(慶應義塾大学四年・2014年現役引退)に期待の若手選手や観戦ポイントについてお伺いしました。世界ジュニアや新時代に向けて、取り急ぎここだけは押さえましょう!まずは男子編です。

[写真]ルパン近藤 With 山本選手宇野選手友野選手 @2013年全日本選手権
(c)近藤琢哉 Takuya Kondoh

ルパン近藤
アートをスケートに取り入れたい、スケートでもアートを学びたいという現役時代を過ごす。スポーツファンが大好きなスケーティングの爽快な速さとクイックな動作(踊り)を持つスピードスター。お洒落でまごころのある『ルパン三世』は語り継がれる名演。The Chemical Brothersのロック寄りの儲かった曲ではなくブレイクビーツで滑る(=選曲の時点で偉業)。ハタチ頃に岩井俊二の少年少女像に傾倒し、テリー・ギリアムの映画『12モンキーズ』を絶対見たい日があった。

TK: 近藤琢哉さん
PP: Pigeon Post ピジョンポスト 島津愛子

Keiji TANAKA 田中刑事選手(19)世界ジュニア出場
『脱皮し、隙のないデカ』
踊るヒット賞クラスの悟りコメントにも期待

TK:刑事(ジュニアグランプリファイナル4位)は、「総合力」だと思うんですよ。「見どころはここ」と言うよりもむしろ総合力。
TK:僕は以前、佐野先生(ルパン近藤が長年指導を受けていた佐野稔コーチ)に「得意なものを作るよりも苦手をなくすように」ということをアドバイスされたんですけど。
PP:あ!私が近藤琢哉選手に取材させて頂いた時(2011年夏)にそう話されていましたね。
TK:ハイ!それを地で行ってるのが刑事だと思うんですね。今シーズンは四回転にもチャレンジしてて、試合でも1回成功したって言ってたんですけど(10月のジュニアグランプリシリーズ)、元々ジャンプは得意だったんです。かと言って、ジャンプ一辺倒ではなくて、踊りもうまいですし、スケーティングも非常にうまい。ほんとに「隙がない」。そこが、刑事の強みだと思いますね。
PP:中庭健介先生(川原星選手のコーチ)も澤田亜紀先生(関西大学のコーチ)も「スケーティングがうまくなった」と揃って讃えられていたんですけど、どの辺りが良くなりましたか?
TK:前はすごく難しいことをやっていて、上半身の踊りも精一杯、みたいなところがあったんですけど、それが今は下半身がしっかり土台になって上半身を動かしている。だから、踊りも良くなるし滑りも良くなるという相乗効果につながっているのかな、っていう。
PP:演技自体が一変したような感じですね。
TK:刑事の場合は、全日本ジュニア(2010年・9位)で「ボロッちゃって」(「ジャンプがボロボロ」の意。フィギュアスケーター業界用語。)不本意なシーズンもあったんですけど、そこを乗り越えた。辛い時期を経験した強さ、というのも本当に今シーズンはあると思います。
PP:トリプルアクセルが不安定な時期がありましたね。
TK:苦戦していましたね。
PP:その頃、2011年の全日本選手権で選手の皆さんの演技後のインタビューをリポートしていたんですけど、これが踊る島津御殿だったら、踊るヒット賞をお贈りしたいなっていう刑事さんの名言があって!
TK:(笑)ハイ!
PP:「調整に苦しむのがスケート、なんですけどね。」っていう、高校二年生ながらの悟りコメントで(笑)
TK:(笑)あの頃が、良い意味で脱皮というかターニングポイントになったんじゃないのかな?っていうのは……本人じゃないんで無責任かもしれないですけど(笑)、そう思います。

Shoma UNO 宇野昌磨選手(16)世界ジュニア出場
『高橋大輔感』
ジャンパーに踊りで対抗

[写真]宇野昌磨選手

TK:昌磨(全日本選手権7位)は、最初の頃は小さいために子供の演技、と受け取られがちだったんですけど、今シーズンとか見ると、ぜんっぜん、そんなことないですよね!
PP:そうですよね!
TK:何が踊りを「大人」っぽく見せているかと言うと、まずは「しなやかさ」もあるんですけど、一番はやっぱり、ジュニアの中で誰よりも「音を外さない」ということだと思うんですよね。あれは才能かもしれないんですけど、音の強弱を捉える上にメリハリがある。それがプログラム全体のクオリティーを上げてると思うんです。
PP:「高橋大輔」感を誰に一番覚えるか、と言うと、私は宇野昌磨選手なんですよね。
TK:僕も、昌磨を観た時に、まさしく同じことを考えてて。大輔君って、世界一そういうところがうまいと思うんですけど、それを彷彿とさせるようなうまさを感じますよね。
PP:あーよかった、一緒だった(笑)
TK:(笑)そう感じる人は多いと思いますよ。
PP:普通「情感」って「込める」と形容されますけど、大輔さんって、情感を「送り」ますよね。情念を発して、時空を使う。
TK:そうですよね、見ている人もその世界に引き込まれる。やろうと思って出来るものでもないですし、元々備わってる、っていうのはあるかもしれないですよね。それを自然と出せる、という。
TK:昌磨は、ジャンプに関しては四回転やトリプルアクセルがまだないんですけど、逆にそういった踊りの面が(演技構成点で)評価されて、どの位食い込んでくるのか。上位争いにも加わると思うんで、そこも見どころだと思います。

Ryuju HINO 日野龍樹選手(19)
『皆大好き♡独特の龍樹』
変わってるジャンプ、変わってるエピソード、鬼フィジカル

[写真]ルパン近藤 With 日野龍樹選手 2012年夏
(c)近藤琢哉 Takuya Kondoh]

TK:龍樹(ジュニアグランプリファイナル6位)は、無良(隆志)先生の時も佐野先生の時も弟弟子で(日野選手は2010-11シーズンより長久保裕コーチに師事する)……と言うか、完全に友達と言うか!(笑)なので、付き合いが長いんですけど、昔から変わったジャンプを飛んでますよね!
PP:(笑)「変わったジャンプ」?
TK:(笑)僕にはまったく理解できないです!飛んだ瞬間に斜めになって「絶対失敗した」っていうジャンプで「ピタッ」と降りて来るんですよ。
PP:そうですね、斜めで安定してるジャンプですね!
TK:他の選手が見てても、飛んだ瞬間に「ゥワッ!(失敗した)」とか言って、でも降りた瞬間キレイに降りて来るんで「エェッ!?(決めたよ)」みたいな、2回驚くジャンプ(笑)無良君(無良崇人選手)も「龍樹は猫!」って言ってて。「どんな形からでも猫みたいに降りて来る」って(笑)
PP:猫は、足を踏み外したりして落っこちても平然と着地しますね(笑)
TK:それはすごく言い得て妙、というか、それが龍樹の強みだと思います。
PP:軸が斜めでも、鬼のような回転ですよね!
TK:回転の速さが龍樹は抜群で、陸上で回転練習してもとにかく速いです。陸でトリプルアクセルもやってましたからね。
PP:アジア人離れしたストレングスですしね。
TK:龍樹はそうですね、とにかく飛んで飛んで飛びまくる、という。
TK:あとは、『独特の世界観』がありませんか?
PP:ありますね!
TK:それは演技もそうなんですけど、話すともっとそうで、何を考えているのか全然分かんない(笑)
PP:(笑)
TK:めちゃくちゃ変わってるから、とにかく変人だ、みたいなことを言いたいんですけど、悪口みたいになっちゃいそうで(笑)
PP:そう、「変わってる」とか「独特」っていう字面は、誤解を受けそう!でも他にどう説明していいのか分からない(笑)
TK:とにかく変わってるんです!(笑)
PP:私のエピソードとしたら、とにかく龍樹さんは無敵の「マイペース」、というか。一回だけ、演技後の囲み取材をしたことがあるんですけど、記者の方々って私達より世代が大分上の皆さんだから、普通、自分自身の調子を変えて上の世代の方に合わせて応対すると思うんです。でも、龍樹さんはマイペースを守って、同世代に話してる感じで言葉だけ敬語に変えてたんですよ!
TK:(笑)びっくりするんですけど、龍樹はそこがイイんです!龍樹の「変わってるエピソード」は語り尽くせないほどあるんですけど(笑)
PP:鬼みたいに変わってるエピソードお願いします!(笑)
TK:龍樹は、スケート大好きで「スケートおたく」なんですよ。家に行くと、ブライアン・ジュベール(フランス)のポスターが貼ってあって(笑)
PP:(笑)
TK:そういう、カワイイところもあるんですね。なんですけど、滑ってると、とにかく暗くて。本人は「元気でやってる」って言うんですけど(笑)全日本の時ボロッちゃって、「ありえないミス」「こんなことなら出なきゃよかった」「スケートしてなきゃよかった」「今後について考えます」みたいなことを言ってて(笑)「そんな落ち込まなくても!(笑)」って皆でイジってましたね。
PP:あのコメントで、周りは爆笑だったんですね!(笑)
TK:ハイ!(笑)
PP:ファンの方はそのコメントに震えてらっしゃったと思いますよ。真相をお伝え出来てよかったです!ボケないイメージを持たれてるでしょうから。
TK:変わってるから話しにくいわけでもなくて、すごい話すし。よくウケ狙ってくるんですけど、割合スベってます(笑)
PP:(笑)シュールな感じで。
TK:とにかく性格の良い、優しいやつです。……なんか、見どころというか性格の話になっちゃったんですけど(笑)
PP:いえ、ファンの方は親近感を持たれたと思いますよ!
TK:あの独特の世界観が、皆大好きなんですよ(笑)

Taichi HONDA 本田太一選手(15)
『正統派の本田家長男』
ジュニアからシニアの男になる道のりを見よ

TK:太一は、刑事と同じ面があると思うんですけど、ジャンプにしてもスケーティングにしても、全体にクセがない。その「正統派」っていうところが強みです。今シーズンは、ジャンプの種類を増やして臨んでいるんですけど、その中で今着実に成長している一人だと思うんですよ。
TK:ジュニアってどんどん技術が向上する時期で、その「技術を伸ばす」ということと「プログラムを安定させる」ということは二項対立、というか。
PP:方向性が!
TK:相反すると思うんですよ。新しい技術を覚えながら安定して結果を出さないといけない。その両立というのはすごい難しくて、太一はその中でも結果を出してますし、そこがすごいですよね。
PP:過渡期をうまく成長していってるんですね。
TK:やっぱり、新しい技をプログラムに入れるとそこに集中が持っていかれて、それをミスって全部芋づる式にミスっちゃったり、逆に成功してぬか喜びで他がちょこちょこミスっちゃったり、とかメンタル的にも難しいんですよね。
PP:ジュニアからシニアにかけての成長が、本田太一選手に見てとれる、って感じですね。
TK:そうですね。これからジャンプが増えていく中でどう結果を出していくのか、それが太一を見て分かりますし、これからも期待してます。

Kazuki TOMONO 友野一希選手(15)
『ジュニアのきらめき』
知る人ぞ知る新時代のショーマン

TK:友野君は、よく名前を聞いてたんですけど、全日本まで演技を観たことがなくて。
PP:新時代のショーマンとして、お名前はフィギュアスケートファンの津々浦々に轟いていますよ!
TK:全日本で「よく踊る小さい子がいるなあ!」と思ったら、それが友野君だったんです。とにかく滑りもキレッキレですし、よく踊る。元気が良くて、良い意味でジュニアっぽいんですよ。溌剌としています。
TK:完成されて「ジュニアっぽくない」という凄さもひとつにはあると思うんですけど、逆にジュニアだからこそ「元気で気持ちが良い!」っていう、それもひとつの「武器」だと思うんです。
PP:好感を抱かせる!
TK:そういう魅力を持った選手だと思います。

Sei KAWAHARA 川原星選手(18)
『分厚くなった男』
ジュニアとシニアの違いとは

TK:星君は、最初に結果を出すようになった時、どうしてもジャンプ一辺倒な印象が強かったんですね。スケートの伸びとかがあまりなくて、難しいジャンプ構成をするためにトランジション(技と技のつなぎ)がなくなっていったりとか。そこをどう克服するか、っていうのをここ数シーズンで取り組んでいたと僕は思ってて。とにかく「ジュニアから脱皮したな」というのがひとつ印象としてあります。シニアで戦う準備を前からして来たな、という。滑りにしても踊りにしても、落ち着いた演技が出来る。「安定した技術」というか。一発屋じゃない、っていう。
PP:分厚くなったんですね。
TK:ハイ!ジャンプはやっぱり、安定していたとしても、ステップやスピンに比べて水ものだと思うんですよ。星君は、ジャンプだけに頼らなくても勝てる選手に今はなってますね。
PP:2012年1月の冬季国体で一度拝見した時は、とにかく「顔残して」踊ってましたよ!!!
TK:(笑)「顔残す」とは?
PP:ターンする時に顔を遅らせて回すやつですよ、(首を動かして)頭と体の動きを違えることで踊りに表情を出す。「顔残す」のは近藤琢哉選手を含め大輔さんやあっこちゃん(鈴木明子選手)等、ごく限られているんです!
TK:(笑)あ、バレエのみたいな。
PP:そう、ヒップホップとかでもダンサーは顔残したがるんですけど、でもスケーターの場合はずっと滑ってたり次々に技をしなくちゃいけないから、そこまでなかなか顔残せないと思うんですよ。
TK:そういうところって、ジュニアとシニアの大きな違いで。例えば振付師の先生に振りを付けて頂いた時に、ジュニアだとそれをただ精一杯やるという感じなんですね。そこから自分の中で解釈したり、「自分はどう踊りたいのか」というのを表現するには円熟味や経験も必要だと思うんです。そこにジュニアとシニアの違いが出て来る。そこに星君が気付いてずっと取り組んでいた様子を、試合とかで観ながら、なんとなぁーくは感じてたんですけど。
PP:「ちょっと顔の角度を変える」とかじゃなくてフルで、全部のターンで顔残してたから、「それ、顔残し過ぎじゃないのか」とか思って観てたんですけど(笑)
TK:(笑)
PP:でも、ほんっっとに一生懸命踊ろうとする、その心意気が伝わりました!
TK:それはすごい好感が持てますよね。

世界ジュニア出場
Boyang JIN ボーヤン・ジン(16)中国
『ジャンプの鬼っ子』
Nathan CHEN ネイサン・チェン(14)アメリカ
『アーティストリィー(芸術性)の鬼っ子』

PP: 若手海外男子選手の注目株として、ジン選手(ジュニアグランプリファイナル優勝)とチェン選手(ジュニアグランプリファイナル3位)の動画をお送りしたんですけど。
TK:ジン(ジュニアグランプリファイナル優勝)はやっぱり「中国」って感じで、ジャンプがとにかくうまい!
PP:この16歳の段階で、フリーで3回四回転を決めていますよ。
TK:四回転が2種類あって、しかも安定して飛べてる感じがするんで……ちょっとジュニアの中でもここまで飛べる、っていう選手はいないんじゃないですかね。
TK:2種類の四回転を飛べる、っていうのももちろんスゴイんですけど、さっきも言ったように「難しい技をやって安定させられる」っていうのはジュニアの中でスゴイことなんですよ。四回転を3発やっても全然後半にバテてないですし、相当な練習量がないとここまでにはならないと思うんです。
TK:ただ、踊りとか滑りという面では、昌磨だったりとか「四回転がないけど」っていう選手にも勝機はあるんじゃないかな、という風に思いますね。
PP:その、まさにジンの対極を成す選手がチェン(ジュニアグランプリファイナル3位)だと思うんです。
TK:とにかくよく踊りますよね!子供が頑張って踊ってるっていうんじゃなくて、「大人顔負け」の。
PP:体がちっちゃいだけなんです。
TK:踊る「間」っていうか、緩急をつけられる。点を稼ぐために踊るんじゃなくて、「魅せるために踊る」っていうのが出来ているから、見てておもしろいですし、これはすごいビックリしましたね。
PP:そうでしょう!!!
TK:ジンの四回転にも「ジュニアでこんだけ飛べるのか」ってビックリしたんですけど、それ以上のビックリをチェンに感じましたね。
PP:そうなんですよ!!!体操とバレエもトップクラスで並行してやってただけに、なにしろ姿勢が良くて、ズバ抜けて佇まいがカッコイイんですよ。
TK:(笑)カッコイイですよね!
PP:近藤琢哉選手も群抜いて姿勢が良くてカッコよかったです!フィギュアスケートって、バランスを取るためにどうしても前屈みに腰を折って両手を広げるような姿勢が多くならざるを得ないと思うんですけれど、琢哉さんはどうやって良い姿勢にされていましたか?
TK:猫背なので、その分注意されることが多くて気を付けた、というのもひとつあります。結構普段はすごい猫背で。氷に乗ってスイッチが入らないとあの姿勢は作れないんですよ(笑)
PP:そう、ほんとに別人かと思います(笑)
TK:逆に言えば「意識」してないと、氷の上で姿勢は作れないです。

世界ジュニア出場
Nam NGUYEN ナム・ニューエン(15)カナダ
『出来過ぎ君』から、最強☆出来過ぎ兄さんへ

TK: ニューエンは前に動画で見たことがあって、「うまいなー」と思ってて。(羽生結弦選手・フェルナンデス選手と同じ)オーサーコーチですよね。リンクに入って来る時から余裕があって、メンタルも強いのかな、と。
PP: 出来過ぎ君、って感じで(笑)
TK: (笑)ショート『アンスクエアダンス』は小塚君(小塚崇彦選手)と一緒ですよね。小塚君とはまた違った感じの軽快なプログラムになってますね!
PP: なんかもう、出来過ぎた子役スターって感じで、良い意味で怖い。
TK: (笑)ジュニアって感じですね。技術的には「軽くなんでもこなせちゃう」みたいな、器用な感じです。ただ、ステップでは難しいことを軽々やっちゃってレベル高いんですけど、結構ジャンプの前になると「飛ぶぞ飛ぶぞ……」って構えるじゃないですか(ジャンプの助走が長いと減点対象になる)。それが「プログラム全体として軽くこなしてる」という風になると、よりレベルが高いものになるんじゃないかな、と思います。
PP: 今は、ジャンプのところでプログラムが分断されている感じなんですね。
TK: それが繋がってくると、他の選手が「手に負えない」っていうか最強になっちゃうんじゃないですかね!
PP: 出来過ぎ君から出来過ぎ兄さんへ!

世界ジュニア出場ロシア勢
Adian PITKEEV アディアン・ピトキーエフ(15)
『プルシェンコ憧れが爆発』
ルパン近藤的「ロシア」考察#1

TK: ピトキーエフ(ジュニアグランプリファイナル2位)は、「THE・ロシア」って感じで!……これは僕の主観なんですけど、アメリカ・カナダはエンタテイナーで、ロシアは『王様』みたいな(笑)
PP: 王様!?(笑)
TK: なんか、「あれこれやんねーよ」っていう(笑)細かいことをしなくても魅せる、みたいな。
PP: アアッ!小細工しない=「トマト鍋しないぞ」みたいな?
TK: (笑)そうですね。
PP: 「(絶対美味しくなるけど)トマト入れないぞ、出汁で勝負。」っていう?
TK: 「媚びない」ところがあります(笑)完全に主観なんですけど、例えばニューエンとピトキーエフを見ていても、そういう差ってありそうな気がしませんか?
PP: ありますね!
PP: フリー『アートオンアイス』は、エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)の『ニジンスキーに捧ぐ』の曲で、振付や作品性といった「ニジンスキー」の原型はないけど「プルシェンコ」で出汁取った、みたいな。
TK: そうですね(笑)やっぱりロシアの選手って、どこかプルシェンコをお手本にしていると思うんですよ。姿勢、ジャンプ、間の取り方だったり。
PP: 所作仕草とか、雰囲気の出し方も。
TK: そういうところが「プルシェンコっぽいなー」と思わせるんじゃないですかね。それは良いことでもあり、逆に言えば「プルシェンコ+アルファの何か」を見たいな、というのもありますね。
PP: このフリーはもう、プルシェンコ憧れが爆発していますよ!(笑)
TK: (笑)さっきの「細かいことはやらない」というのは「緩慢になっちゃう」のと紙一重で。プログラムによっては「やってない」のがつまんなく見えちゃう時もあります。
PP: だから、ジュニアグランプリファイナルも演技構成点が出てなかったです。
TK: そこが課題ですよね。もっと「踊って」魅せるとか、エマニュエル・サンデュ(カナダ)みたいに「ひとつのシルエット」を長く保って魅せる、そういうやり方もあるし。
PP: 手数足数を増やしたり、ポージングですね。
TK: なにかしらのやり方で「ジャンプだけじゃない」っていうのをこれから磨いていかないと、と思いますね。 (ルパン近藤的「ロシア」考察#2は女子編で!)

世界ジュニア出場ロシア勢
Alexander PETROV アレクサンドル・ペトロフ(14)
『技術面芸術面で育み中』
ブレジナっぽい足さばき

TK: ペトロフ(ジュニアグランプリファイナル5位)は、全然タイプは違うんですけど、ミハル・ブレジナ(チェコ)を見てるみたいな気がします。スケーティングで膝をしっかり使っていて、滑ってる時のシルエットが似てるというか。膝が強い。
PP: 「膝が強い」?
TK: (足を)滑らせる時って、膝でグーッと氷を押し込むとその分圧力がかかって氷が溶けてよく滑るんです。上体の重さを氷に伝えるために、腰・膝・足首の関節全てを使って氷を「押し込む」んですけど。それをまたタイミング良く「抜いて(加圧を戻す)」。ステップなんかだと、スケーティングみたいにピーッて伸びて滑ってるわけじゃないんで、一回のステップごとにグッグッグッみたいな風に「押し込んで抜いて押し込んで抜いて」の連続なんですよ。それに「体全体を倒す(スピードを出す)」とかの技術も加わるんですけど(スピードの出し方は日頃フィギュアスケートを見ないスポーツファンにルパン近藤が語るソチ五輪フィギュアスケート女子海外注目選手紹介を参照)。そのリズム感とかがブレジナに似てるのかなっていう。
PP: 足さばきが似てるんですね。
TK: どっちも意識してやってるわけじゃないと思うんですけど。「ちょっとブレジナに雰囲気が似てる」と最初に感じて、その理由はそこじゃないかな、と。
PP: ペトロフは、若手選手達の中で一番フィジカルがあるんじゃないかな、と思ってるんですけど。
TK: 僕もそう思いますね。ジャンプがブレてても持ってきちゃう(着氷)、みたいなシーンもありますね。
PP: 子供離れしている、というか。
TK: 結構体も出来てますしね。
PP: だから私は、ジャンプの面でペトロフが一番伸びしろがあるような気がしてます。
TK: ジャンプもそうなんですけど、やっぱり、いずれはジャンプって持ち駒が皆一緒になってくると思うんですよ。ジュニア時代は成長過程だから、トリプルアクセルが飛べたかとか四回転が飛べたかというジャンプの成否が勝負の分かれ目になってくると思うんです。でも、シニアに上がってジャンプの持ち駒が一緒になった時にどこで差が出るかというと、滑りだったり踊りの部分の差だと思うので。そういう面でも伸びしろを感じます。
PP: 踊り心も見えますね!
TK: 見えます、見えます!

ルパン近藤的『ジュニアの見方』

ジュニアの選手は、1年1年変わっていくんです。どう去年と変わったのか・これからどう変わっていくのか、そこに注目したり、これからどう化けるのかっていうのが見どころだし、楽しみですよね。シニア以上に変化がある。そこがジュニアの見方としておもしろいと思うんですよ。

解説:近藤琢哉 Takuya Kondoh
テキスト:島津愛子 Aiko Shimazu

女子編に続く

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Pigeon Post ピジョンポスト
フィギュアスケーターの"声" "今"を届ける記者チーム(Pigeon Post HP)。
日本チームを中心に、世界のフィギュアスケートを特集する日本語英語のバイリンガルサイトで、インタビュー・リポートを掲載。Twitterをポータルとして、新しい記事の紹介やニュース、イベントのリポートまで、ワンストップで伝える。FacebookもTwitterと連携させている。

お知らせ

【参考記事】ルパン近藤こと近藤琢哉選手の2011年6月のインタビュー(Pigeon Post)

◆ISU世界ジュニアフィギュアスケート選手権2014
3月21日 (金) 〜23日(日)エキシビジョンまで全種目放送!
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