ルパン近藤 [写真:ジャパンスポーツ Japan Sports]

記者島津です。誰よりもフィギュアスケート研究に没頭して来られたフィギュアスケーター、ルパン近藤こと近藤琢哉さん(慶應義塾大学四年・2014年現役引退)に男子選手紹介と観戦ポイントをお伺いしました。取り急ぎここだけは押さえましょう!まずは男子日本代表編です。

ルパン近藤
アートをスケートに取り入れたい、スケートでもアートを学びたいという現役時代を過ごす。スポーツファンが大好きなスケーティングの爽快な速さとクイックな動作(踊り)を持つスピードスター。お洒落でまごころのある『ルパン三世』は語り継がれる名演。The Chemical Brothersのロック寄りの儲かった曲ではなくブレイクビーツで滑る(=選曲の時点で偉業)。ハタチ頃に岩井俊二の少年少女像に傾倒し、テリー・ギリアムの映画『12モンキーズ』を絶対見たい日があった。

TK: 近藤琢哉さん
PP: Pigeon Post ピジョンポスト 島津愛子

羽生結弦選手(19)
『心臓に毛が生えた』
日本が誇る向上心の鬼神(もののけ姫で言うとシシ神クラス)

TK: ゆづ(羽生選手の愛称)に関しては、今回、かなり「優勝」があると思ってますね、僕は。
PP: 皆さんそうだと思いますよ!
TK: やっぱり、「四回転」の勝負云々、になるとは思うんですけど、最終的には「あの(五輪の)雰囲気の中でどれだけ力を出せるか」、「雰囲気に飲み込まれない」という部分だと思うんですよ。
PP: つまりメンタリティーの勝負。
TK: となった時に、とにかくゆづはメンタルが強いですね。
PP: 強いですねー。反復練習でずっと決まらない四回転を最後の1本で決めるとか、大会練習で決まる気配のなかった四回転を本番で決めるとか、五輪の出場枠がかかった世界選手権のフリーの直前で怪我をしても予定構成をやり切ってフリー3位に入り3枠を守るとか……枚挙にいとまがないです!
TK: 「心臓に毛が生えてる」(笑)と言っても過言ではない位、メンタルが強いです。

PP: スポーツファンの方に是非お伝えしたいのは、羽生選手が「試合ごとにジャンプのフォームを変えている」ということです!
TK: エッ?そうなんですか!?
PP: 「試合ごとに毎回違うフォーム」って。昨季のフィンランディア杯のインタビューでさらっと言われてたんですよ!
TK: えー、全然分かんなかったです。
PP: だから、私も「!?」って食いついて、「今大会はどういうフォームですか?前の試合のフォームは?」とお伺いしようと思ったんです。でも、その時、結弦さんはインタビューの「予定構成表(進行表)」みたいなメモを事前に御覧になっていたので、「それに載ってないことを話してたんじゃ、先々進んで行けない」「寄り道出来ないよ」みたいな感じで、御自身でそのトピックを〆られましたね(笑)「そんなに目に見えて出来るものではないですけれども、意識する点とかは結構違えてやっています。」って、先回りされて(※当時17歳)。
TK: (笑)ゆづのスケートに対する考え方は非常に合理的ですよね。課題を立てて、それをクリアしていきながら、着実に結果に結びつけるという。そこがゆづのすごいとこですね。また、その「やるべきことをやれる」、「妥協しない」っていうのは、本当に選手時代に尊敬していた部分です。
PP: ……「向上心の鬼神」ですよね?
TK: ハイ(笑)
PP: よかった!合ってた(笑)
TK: そうですよね(笑)

PP: 私が一番感じたのは、先程のフィンランディア杯の先回りにも見られるように、Body(体)−Mind(頭)−Spirit(心)の全部の超人的なキレが三位一体になってるな、ということです。受けたことに対してすぐ運動や言動で反映させる、リアクションのハヤサを感じましたね。「考える」ことが反射的に出来ているような。
TK: そうですね。ほんとに賢い選手です。
PP: 1年前のインタビューでは、もののけ姫で言うと「シシ神」クラスだな、って思ったんですけど(笑)
TK: (笑)そう……
PP: 小さい頃はどんな選手でしたか?
TK: もう、ノービス(ジュニアの下の世代)の頃から「すごいのが出て来たな!」と。上の代には小塚(崇彦)君達がいたので、その選手達と比べてもすごい才能を持ったやつが出て来たなと、僕が小さい頃でも感じていました。体のキレもそうですけど、センスが光ってましたね。

高橋大輔選手(27)
『世界でピカイチのパフォーマー』
小さな体で大きな怪我を乗り越え、男子シングル界のセンターを張り続けた鉄人

TK: 大輔君は、見どころではないですけど、「怪我の状態がどこまで回復しているか」っていうのが気になるところですね。
PP: 全日本選手権の時には、古傷(右前十字靭帯断裂)の上に骨挫傷を負っていましたね。
TK: ただ、大輔君の場合は、集中力もそうだしコンディションもそうだし、その「試合に合わせる力」でミラクルを起せる選手ですね!
PP: ソチでも起せますね!
TK: 僕は、怪我してたとしても期待してます。

TK: 大輔君の一番すごいところは、「演技(そのもの)」ですかね。一個一個の要素の加点を取って勝ちにいく、という時代の流れになってくると、「プログラムに一杯(技を)詰め込めばいい」みたいな、そういう風になりがちなんです。でも、大輔君というのは、踊りの中で「ふっ」と抜く部分は抜いたり、盛り上げる部分では細かいステップを踏んで「バァアッ」と盛り上げたり、その緩急の付け方がうまいですね。だから引き込まれる。パトリック(チャン選手)はスケーティングがうまいんですけど、パフォーマーとしては、大輔君が世界でピカイチだと思いますね。

PP: 是非スポーツファンの皆さんに知って頂きたいのは、高橋大輔選手が当時のワールドレコードを出された全盛期の頃に右前十字靭帯を断裂されて、復帰後、またその自己ベストを更新された、ということです!これはもう、他のスポーツファンの方はびっくりされると思うので、口を酸っぱくして何度でもお伝えしてるんですけど!
TK: (笑)あの怪我の後にバンクーバー五輪があって、僕はそこで「終わる(引退)のかな?」って思ってて。そこからこのソチまで続けて来られたのが、それだけでも僕はびっくり、というか。「4年頑張り続ける」というのはなかなか出来ることじゃないんで。他の選手もやってるのは確かなんですけど、年齢的なものも乗り越えて、「一度頂点に立ってからも頑張り続ける」っていうのは、他には出来ないことだと思います。
PP: 本当に、間近で高橋選手を拝見すると、竹とんぼのような体幹・ひとつひとつの筋繊維の質、四肢の可動域を広げる関節の締まり、その鍛錬具合に涙が出そうになりますッ。
TK: (笑)ほんっとに、体バッキバキですよね!

町田樹選手(23)
『今一番勢いのある男』
天性の動作の速さ・スポーツマンシップ・学術や芸術への探究心が同居する神秘

TK: 樹君は……小さい頃から一緒にやってきたんですけど、ずっと小塚君達のほうが上にいたんです。だから、「ソチオリンピックに合わせてきたな」っていう印象が本当に強いです。もちろん代表候補の圏内にはいましたけど、「樹君がオリンピック行く」とは、4年前も去年も思ってなかったですね。上の世代(織田信成選手、小塚崇彦選手)が行くと思ってました。そういう意味では、「今一番勢いのある男」!
PP: 2年前のコロラドの四大陸選手権のインタビューで、私も琢哉さんと同じような捉え方で、「世代的にも成績にしても、町田選手は上三人(高橋、織田、小塚選手)の下の層で、(近藤選手も含め)大学生とジュニア勢の上の層、つまり真ん中に位置していて、日本男子の強さの核(コア)になっていますね」とお伝えしたんです。でも樹さんは、「その上(日本の上三人)にも上(チャン選手)がいる」と捉えられていたので、御本人のメンタリティーとしては、2年前から世界のトップを目指されていたんじゃないかな、と。
TK: 本人に、そういう強い意識はあったと思いますね。

PP: 劇的にここが変わった!というところはありますか?
TK: 四回転の安定もそうなんですけど、これまでは「後半、足に来て(体力が)もたない」っていう印象があったんですけど、今シーズンは違いますね。スケーティングの基礎の部分(コンパルソリー)に取り組んだというのが結果になって出ているのかな、と思います。効率良く滑れるようになってきてるんじゃないかな、と。
PP: 御本人はそのコンパルソリーの練習を、「凡事徹底」、「原点回帰」、「アポトーシス(さなぎの状態)」と。以前からこういう……学術芸術への探究心がほとばしる、知の大海、みたいな方でしたか?
TK: (笑)独特の世界観、というのは見てて思ってましたけど、前以上に年々強くなってますね(笑)
PP: あ、じゃあ、順調に熟成されていってるだけなんですね!なんかほんとに、さなぎから羽化して変身されたのかと思って、すこし心配してて(笑)
TK: 世界観が積み上がって今に至る、みたいな(笑)

海外男子注目選手編に続く)

解説: 近藤琢哉 Takuya Kondoh
テキスト: Aiko Shimazu 島津愛子

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Pigeon Post ピジョンポスト
フィギュアスケーターの"声" "今"を届ける記者チーム(Pigeon Post HP)。
日本チームを中心に、世界のフィギュアスケートを特集する日本語英語のバイリンガルサイトで、インタビュー・リポートを掲載。Twitterをポータルとして、新しい記事の紹介やニュース、イベントのリポートまで、ワンストップで伝える。FacebookもTwitterと連携させている。

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