PHOTO:テッサ・バーチュー/
スコット・モイヤー組

ペア競技紹介

男性が女性を高く掲げ上げるリフトや、上方に投げ上げるツイストリフト、男性の補助でより遠くに飛ぶスロージャンプ…フィギュアスケートの競技で最もダイナミックな技が見られるのがペアスケーティングです。ペアにおいても近年の技術向上は目覚ましく、ツイストリフトやスロージャンプで「4回転時代」が幕を開け始めています。また、リフトでは女性が逆さまになったり、両手を離したりと、見ている側もスリル満点な要素が続きます。
しかし、ペアの真髄となるのは「ユニゾン」、同じ旋律を奏でるかのように、2人がいかに息を合わせたスケートを見せるか。スピンの回転数や姿勢の変更、ジャンプの離氷から着氷までタイミングをぴったり揃え、大技の成否も2人の呼吸が合うかどうかが成否に関わってきます。そう、ペアとは2人でひとつ。体格の違う男女がまったく同調して滑っているように見せるために、スケーティングの歩数、フリーレッグで伸ばす脚の角度が計算しつくされているのがペアのプログラムです。シンクロした動きの時はもちろん、2人が違う動きをしている時ですら、まるで1つの意志で動いているような、心地よいユニゾンをお楽しみあれ。
また、氷面に描く軌跡(トレース)が大変美しいのも、2人で滑るペアならでは。同じトレースで滑っていたかと思えば、そこから鏡合わせの振付でリンクいっぱいに広がり、2人が手をつないだらデススパイラルで大きな円を描く…氷面いっぱいに使ったプログラム構成にも注目です。

アイスダンス競技紹介

アイスダンスの説明に、「氷上の社交ダンス(Ballroom dance)」なんて表現をよく見かけます。でも、実際のアイスダンスはボールルームを飛び出して…バレエやコンテンポラリーダンス、ジャズダンス、ヒップホップや世界各国のフォークダンス…ありとあらゆる舞踊を取り込んだもの。男女2人組で、社交ダンスのようにホールドを組んだり、離れて2人の動きを完全にシンクロさせたりしながら、卓越したスケーティングの中で踊りを表現していきます。さらに新採点法が導入されてからは、正確かつ複雑なステップワークとアクロバティックな技の数々を両立させた「スポーツ・ダンス」へと様相を変え、アイスダンサーたちにはアスリートとしての力もより求められるようになりました。
衣装の凝り方、靴、ヴォーカル入りの音楽などなど、あらゆる点でほかの3種目と一線を画するアイスダンスですが、時にショートダンスに毎年課題のリズムとステップ(パターンダンス)が決められているところが大きな特徴です。今季は「クイックステップ」のリズムを軸に、フォックストロット、チャールストン、スウィングの組み合わせが認められています。さらにパターンダンスは、1周する間に70ものステップとターンをこなさなければいけない「フィンステップ」。軽やかで華やかなショートダンスに対し、フリーダンスは各カップルがこれまでのスケート人生やアイデンティティを表現する大作プログラムが続々と登場します。

ペアとアイスダンスの違いって?

どちらも2人で滑る競技ということで、違いがわかりにくいこの2種目。「小柄な女性と大男がペア」「妖艶な美男美女がアイスダンス」なんてビジュアルで区別しようとしていませんか?昨今、その見分け方は…痛い目を見ます!(ペアの女性の高身長化が目立つのと、体格差をアドバンテージにするアイスダンスカップルが登場)混乱する前に、ざっくりと違いを振り返っておきましょう。

●「ジャンプ」があればペア
ペアには男女が同調して飛ぶサイド・バイ・サイドのソロジャンプや、男性が女性を投げるスロージャンプが要素に入っています。しかしアイスダンスでは、1回転半以上のジャンプや、2人でシンクロして飛ぶペアジャンプは違反要素となっています。

●「リフト」が高ければペア
男性が女性を頭上に高く掲げるリフトはペアならでは。アイスダンスにもリフトがありますが、男性が女性を、自分の肩より上に手で持ち上げて支えることは禁止されています。その代わり、物凄い速さで回転したり、女性が男性の上で次々と姿勢を変えたりと、「早業」系のリフトがアイスダンスでは見られます。

●男性が女性を「投げて」いればペア
男性が女性を頭上に投げてキャッチすれば「ツイストリフト」、進行方向に投げれば「スロージャンプ」です。どちらの要素もペアにしか入っていないものです。

●2人揃った「ツイズル」を繰り返していたらアイスダンス
ツイズルは、スピンのように素早く回転しながら滑っていくターンのこと(シングル競技でもステップに取り入れる選手は多いです)。このツイズルを、回転方向を変えながら男女シンクロさせて行うシークエンスがアイスダンスの要素にはあり、大変難しいため見せ場となっています。途中、えらくギュルギュル回転しながら滑り、観客が熱狂したらこれだな、と思ってください。

●「ボーカル曲」があればアイスダンス
シングル・ペアでは歌詞入りの曲の使用は禁止されていますが、アイスダンスだけは使用OK!(理由は、簡単に言えば「ボーカルのない曲を探すのが難しい課題リズムがあるから解禁された」です)しかし、来シーズンからはシングル・ペアでも解禁されることが決まっているので、さらに見極めが困難になります。でも、その頃にはきっと、2種目のいろいろな違いをたくさん見つけていただけると信じて。

ペアの勝負の分かれ目

ペアのエレメンツは、

・リフト
・ツイストリフト
・ソロジャンプ
・スロージャンプ
・デススパイラル
・ソロスピン(2人が並んで回るスピン)
・ペアスピン(2人が組んで回るスピン)

この7つから成り立っています。
大技、つまり高いリフトやでっかいスロー、しかも四回転!なんてさぞかし高い点数がもらえるのかと思いきや…案外、一つ一つの技の得点(基礎点)に差が少なく、一発逆転の大得点源はないのがペアです。ミスを少なく・加点を多く、「積み重ね」がシングル以上に大きく響きます。
特にミスが発生しやすいのが、サイドバイサイドで飛ぶソロジャンプ。いかに一人が質の良い三回転ジャンプを飛ぼうとも、2人の飛ぶタイミングが揃わなければマイナス評価になりますし、もう一人が二回転になってしまった場合は、二回転を飛んだものとして扱われます!
演技構成点で評価される項目は男女シングルと同じ5項目ですが、その評価の中にはユニゾンや2人の滑りや技の実施のバランスが加わります。片方が経験豊富でいろいろなことできますよ〜、と見せつけても、相方が同等のことをできなければ評価は上がりません。投手がキレッキレのスプリットを持っていても、捕手が受けられなければ投げられないのと同じように。
ショートプログラムは、「リフト」「ツイストリフト」「ソロジャンプ(単発のみ、三回転まで)」「スロージャンプ(三回転まで)」「デススパイラル」「スピン」を一度ずつ行います。さらに、今季はリフトが一番得点の高い“グループ5”(女子を回しながら持ち上げます)、スピンも高得点のペアスピンが指定されていますので、未曾有のハイスコア連発、レコード必至の祭りイヤーです。
一方フリーは、「リフト(×3回)」「ジャンプ(単独とコンビネーション1回ずつ)」「スロージャンプ(×2回)」と大技が複数回入り、これにツイストリフトを加えた4つの要素に基礎点が1.1倍になる後半ボーナスが発生します。さらにジャンプなどの回転数に規定はなし!四回転のスロージャンプやツイストリフトなど大技にチャレンジするペアも出てきます。当然ながら、体力を使う要素ばかりですので、きれいに実施できなければ加点を失って本末転倒。各ペアが、どの要素をどういう難度にして、どこに配置するか、戦略の見せ所なのです。

アイスダンスの勝負の分かれ目

エレメンツ内において、肉眼でそれとわかる失敗はすべてfumble(致命的失敗)!と言えてしまう恐ろしい競技、それがアイスダンスです。特にトップ勢は加点と演技構成点でも満点が付くようになってきているので、同じ加点方式でありながら、満点からの減点法のようにも思えるほど、ミスは許されないシビアすぎる競技になっています。そしてトップの場合、素人の肉眼では見分けられないミスというのがほとんど。…お手上げの様相を呈してきていますが、ついてきてください! では、わかりにくい勝負のポイントを、わかったような気になる「通っぽいひと言」を覚えながら見ていきましょう。

1 「レベル来い!」

アイスダンスの採点がほかの3種目と決定的に違うのは、ジャンプがない、つまり「成否だけで点数がつくエレメンツが一つもない」ということ。すべてのエレメンツに4段階のレベル判定がつきまとい、このレベルが1つ違うだけで勝負が決まるといっても過言ではありません。

そのレベル判定が猛威を振るうのが、ショートダンスにおける「パターンダンス」。全組が同じステップを、同じテンポで(曲は違ってOK)滑るエレメンツです。2つのセクションがあり、各セクションごとに3つの“キーポイント”という「これだけはきっちり見るからね!」という部分が決められています。きっちり…というのはそれはもう、例えばスケート靴のブレードのどこに乗っているか(正しいかどうか)とか、テンポに遅れていないかとか、目を皿のように厳しく見られるわけです。
そのほかにも、ショートダンスには「ノットタッチステップシークエンス」という2人が離れて滑るステップ、フリーダンスには逆に2人がホールドを組んで滑るステップシークエンスが2種類入っています。そのどれもがアイスダンスでは大きな得点源。うまく滑れていたように見えたら…または、不穏な空気を感じ取ったときも…「レベル来い!」

2 「また、リフト超過かよ…」

アイスダンスの見せ場として、近年大変アクロバティックに進化し続けるエレメンツがリフト。このリフト、上位陣は最高であるレベル4を取って当たり前、あとはどれだけ加点を取れるかという戦いになっています。加点を取るために、女性が難しい体勢を取ったり、姿勢を途中で変えたり、男性は男性で片腕支え、片脚、手放し、しゃがみ込みなど、人間の限界に挑戦しています。その結果…すこしのタイミングのズレで、減点を食らう確率が高い要素にもなっているのです。
リフトは短いものは6秒、長いものは12秒と決まっています。得点が表示されて、−1.00の表示があったら、まずローテーショナルリフト(回転しながら移動するリフト)でのタイムオーバーが疑われます。そんなにギリギリを攻めないでも、という落胆をこめて「またリフトかよ…」。

3 「ツイズレ」

これもまたがっかり系のひと言です。アイスダンスのもう一つの見せ場が、男女が回転をそろえながら滑っていくシンクロナイズド・ツイズル。そう、読んで文字のごとく、「ツイズル」が「ズレ」たら「ツイズレorz」です。ずれた時点でGOEは減点、さらに回転が乱れた部分が早ければ、レベルも取れないという二重の苦しみとなります。

技術的には上記の3つがよく叫ばれる=ターニングポイントとなります。さらに、アイスダンスのトリビアとして、「演技構成点のバランスがほかの種目とまったく違う」ということがあります。重視されるのは、「つなぎの滑り」。エレメンツだけでなく、その間の部分でもどう踊っているか、どういう技を入れているか、それが高評価につながります。エレメンツ以外の密度も、勝負を分けるポイントになってくるのです。

テキスト: 海鳩オッコ

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Pigeon Post ピジョンポスト
フィギュアスケーターの"声" "今"を届ける記者チーム(Pigeon Post HP)。
日本チームを中心に、世界のフィギュアスケートを特集する日本語英語のバイリンガルサイトで、インタビュー・リポートを掲載。Twitterをポータルとして、新しい記事の紹介やニュース、イベントのリポートまで、ワンストップで伝える。FacebookもTwitterと連携させている。

お知らせ

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3月21日 (金) 〜23日(日)エキシビジョンまで全種目放送!
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◆ISU世界フィギュアスケート選手権2014 日本・さいたま
男女シングルはじめ、ペア、アイスダンス、エキシビションまで全種目・全滑走放送。選手インタビュー&プレスカンファレンスの模様も放送。
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