2022年のワールドカップ・カタール大会のアジア予選の方式が変更になるらしいというニュースがあった。まだ正式決定ではないが、アジア・サッカー連盟(AFC)の競技委員会で決まったものだという。

それによると、全参加国が8に分かれて1次予選を行い、各組1位の8か国と、2位の国のうち上位4か国の合計12か国が最終予選に勝ち進むのだという。

そして、この1次予選がアジアカップ(2019年開催)の予選も兼ねており、各組上位3か国、合計24か国が本大会に進むのだという。

突っ込みどころ満載のニュースである。

この新方式のメリットとして報じられていたのは、ワールドカップ・アジア予選で本大会進出を決めた後、アジアカップ予選を戦う必要がなくなったという点だ。

日本代表は、2013年の秋には二度にわたってヨーロッパに遠征。10月の遠征では、ワールドカップ予選で敗退していたセルビア、ベラルーシに連敗。とくに、2試合連続で無得点となったことでかなり批判を浴びたが、これが刺激となったのか、続く11月の遠征では強豪オランダ、ベルギー相手に1勝1分という成績を残した。日本代表選手の多くが活躍する欧州の地で強豪国と戦う遠征は、選手にとっても大きな刺激になり、チーム強化のためにも有意義な遠征だった。

そのことは、たとえば4年前の2009年秋を思い出してみれば一目瞭然だ。2007年の東南アジア共同開催のアジアカップで4位に終わっていた日本は、南アフリカ・ワールドカップ予選を勝ち抜いた後もアジアカップ予選を戦わざるを得ず、2009年秋には南アフリカに遠征しただけで、あとは貴重なインターナショナルマッチ・デーに香港など、明らかに格下のアジアの相手と試合を重ねていたのだ。

2013年秋には、やはりワールドカップ本大会出場を決めたイランが、アジアカップ予選を戦っていた。

ちなみに、2007年のアジアカップでは前回優勝国にも予選が課せられており、2004年中国大会で優勝した日本も、予選を戦わされた。

そのアジアカップ予選をワールドカップ予選と兼ねることで、2009年の日本や2013年のイランのように、強化の機会をみすみす逃すことがなくなるというのである。

たしかに、その点は、「一歩前進」かもしれない。

しかし、「1次予選」というのが、なかなか曲者だ。つまり、ワールドカップ本大会出場を目指す国は、これまで1次予選が免除されていたのに、次の予選からはマカオとかラオスといった国と一緒に1次予選から戦わなければならないのだ。

アジアからの参加国は40か国強となるはず。8つのグループということは、1グループ当たり5?6か国ずつ。ホーム&アウェーとすると、8試合か10試合戦うことになる。

しかも、2位では予選敗退もありうるわけで、「2位までが自動勝ち抜け、3位でもプレーオフ」という最終予選と比べて、けっこう難しい大会となる。

従来の方式でも、アジアカップ本大会で上位3チームに入って、次回の予選免除を勝ち取ることができたのだから、新方式によって必ずしも負担が減ったとは言えないようだ。

その他、大きな変更は、アジアカップ本大会が24か国に拡大されるという点だ。

この変更は、明らかにAFCがヨーロッパ選手権(EURO)を意識したことによるもの。ヨーロッパ選手権は、次回、2016年のフランス大会から24か国に拡大することが決まっている。

しかし、強豪が目白押しのヨーロッパの真似をすることにどんな意味があるというのだろうか? アジアの場合は、ヨーロッパに比べて上位と下位の間の格差が明らかに大きいのだ。弱小国が参加することによって、試合のレベルは落ち、試合数の拡大と大会期間の延長は参加国にとっても、開催国にとっても負担を増やすだけのことだ。

さて、新方式が本決まりになった場合、日本代表は2015年には始まると思われる1次予選でアジアの弱小国と戦う無意味な時間を過ごさなければならないことになる。ヨーロッパの強豪クラブに所属する日本代表のエースたちが、弱小国との戦いのために広大なアジア大陸を越えて往復するのは、大いなる無駄としか言いようがない。そんな、無駄な負担のために、ヨーロッパのクラブでの出場機会を失ってしまっては元も子もない……。

本当なら、アジア1次予選にはオリンピックを目指すU-22代表でも出して強化の場にした方がいいのだろうが、これまでの例を見ると、日本協会にはそんな度胸はなさそうだ。

セントラル方式となった、リオ・デ・ジャネイロ五輪予選も、大会方式や開催地によっては東アジア勢不利となる心配もある。

アジアとのお付き合いは、まったく負担が大きすぎる。

アジアのサッカーを強化しようというのであれば、強豪国と弱小国をしっかり区分して、強豪同士が切磋琢磨する真剣勝負の場を増やすしかないと思うのだが……

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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