日米1億人以上の野球ファンが固唾を飲んで見守ったマー君こと田中将大投手のメジャー移籍は、名門ニューヨーク・ヤンキースと7年総額1億5500万ドル(約161億8千万円)の大型契約で合意に達した。大物選手の長期契約が主流となったメジャーとはいえ、今回マー君が結んだ契約内容は、カーショー、バーランダー、ヘルナンデス、サバシアに次ぐ、メジャー投手史上5番目の巨額契約となった。彼ら4名はいずれもサイヤング賞投手だ。ヤンキースは沢村賞を2度獲得したマー君に、サイヤング賞投手と同等の評価を提示したと言える。

日本時間の未明に会見したヤンキースのキャッシュマンGMは「一度きりのオファーだったので、とても慎重に検討した。もしかしたら必要以上に高い条件だったかもしれないが、条件が足らずに逃して後悔するより、全力を傾けることにした」とコメント。マー君に寄せられる期待の高さがにじみ出ていた。

さて、今回の移籍交渉で、マー君が用意したエージェント(代理人)は、ケーシー・クロース氏だった。日本ではなじみの薄いエージェント業。本場アメリカには、星の数とまでは言わないまでも、多数のエージェントが存在する。野球、バスケット、アメフト、ホッケー、アイススケートなどアスリートはもとより、文化人やアーティスト、カメラマンに至るまで、一流のパフォーマーには必ずエージェントがいる。

エージェントの実務は、実に多岐に渡る。例えば「球場に向かう途中で車が故障しちゃってさ。○○に停めてるから、あとよろしくね!」なんて光景を、練習前のクラブハウスで目にしたことがある。このようなトラブルよろず相談はもちろんのこと、本業であるアスリートの契約交渉やキャリアプランの作成、FA取得後のシミュレーションから引退後のセカンドキャリアに至るまで、エージェントと呼ばれる彼らは、非常に広域な守備範囲を網羅しなければならない。

クロース氏は、UM(ユーエム:University of Michigan)の愛称で知られるミシガン大学に野球の特待生として入学した。大学4年時(1986年)にはリーグの三冠王(打率.469、7本塁打、19打点)に輝き、その年のドラフト7巡目での指名を受けニューヨーク・ヤンキースに入団したキャリアを持つ。自身もバリバリのアスリートだったわけだ。現役時代のケーシー氏は、下部組織から順調にステップアップし、プロ3年目の1989年にはメジャーにあと一歩というトリプルAで打率.330、打点56を残すものの、残念ながらメジャー昇格は果たせずに現役を引退した。

1992年にエージェントの最大手IMG社に入社したケーシー氏は、その年のドラフトで注目選手のひとりだった高校生のデレク・ジーターを担当することとなった。1巡目指名はもちろんのこと,全米1位指名も噂された逸材だったジーターは、大学進学の噂が影響したこともあり全米1位指名の栄誉は逃したものの、ヤンキースが1巡目(全体の6番目)で指名してヤンキースに入団した。

クロース氏とジーターの関係は、ジーターが高校卒業前からのもので、ジーターはヤンキースに入団した1992年のオフに、クロース氏が卒業したUMに通っていたこともある。入団以来ヤンキース一筋で「ニューヨークの貴公子」と慕われているジーターを支えるスタッフのひとりとして、ケーシー氏を評価する声は大きい。ケーシー氏がすんでのところで叶えることのできなかったメジャーリーグへの夢を叶えたジーターとは、名コンビとして知られているのだ。

その後IMG社を辞め、EXCEL SPORTS MANAGEMENT社を立ち上げ、現在はそこからも独立しているクロース氏のクライアントは、実はジーターただひとり。しかし、今でもパートナー関係にあるEXCEL SPORTS MANAGEMENT社は、昨年のサイヤング賞投手で、先週ドジャースと7年総額215億円という投手史上最大の契約を交わしたクレイトン・カーショーらを顧客に持っており、クロース氏はヤンキースだけでなく、ドジャースにもパイプはあったものと考えられる。

マー君の元には数多くのエージェントから売り込みがあったと思われるが、マー君がクロース氏に決めた理由は明らかになっていない。ちなみに昨シーズン実績で『年俸合計でおよそ1億ドル(105億円)』規模の契約をまとめた大手のエージェントは4社に限定される(文末データ参照)。もちろんクロース氏も、EXCEL SPORTS MANAGEMENT社も圏外なので、マー君はエージェント選びを、より小回りの効く「量より質」で決めたものと思われるが、どうだろうか。

自身がドラフト指名された古巣ヤンキースとの巨額契約をまとめたクロース氏。さあ、マー君の新たな旅はいよいよ始まる。

参考:契約金額上位のエージェント(2013年)

 エージェント名 契約総額(2013年度)代表的な選手の年俸(2013年度)
1位スコット・ボラス2億3530万ドル(236億円)フィルダー2300万ドル(24億円)
2位SFX社1億3280万ドル(139億円)カブレラ2100万ドル(22億円)
3位グレッグ・ゲンスケ1億780万ドル(113億円)サバシア2300万ドル(24億円)
4位ACES社9342万ドル(98億円)ビクトリーノ1300万ドル(14億円)

Text:スポーツ企画工房

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J SPORTS 編集部

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