2013/14シーズンの大きな興味のひとつは、マルセル・ヒルシャーが3シーズン連続の総合優勝を達成できるかどうかである。ワールドカップの長い歴史のなかでも、男子ではインゲマル・ステンマルク、ヘルマン・マイヤー、女子ではアンネマリー・モザー・プレル、リンゼイ・ヴォンのみが記録しているワールドカップの総合V3。その大記録に果たしてヒルシャーが肩を並べることができるのか、それともライバルたちが彼の独走を阻むのか、長く熱い冬が、いよいよ幕を開けた。

〔写真左〕マルセル・ヒルシャー〔写真右〕フェリックス・ノイロイター(クリックで拡大)

昨シーズンのヒルシャーの総合優勝は、スラロームでの圧倒的な強さがベースとなっている。ワールドカップのスラローム9レース中優勝4回に2位4回、残りの1レースも3位入賞とほとんど完璧な成績。さらにはシュラドミング世界選手権でも優勝と、全レース表彰台から外れることがないというすばらしい活躍を見せたのである。従来はあまりに直線的にアタックするため、必然的にポールをまたぐことの多かったヒルシャーだが、その攻撃的ラインをキープしつつ大幅に安定感を高めたことが、昨シーズンの総合優勝につながったといってよいだろう。

昨シーズン、この最強スラローマーに太刀打ちできた数少ない選手のひとりがフェリックス・ノイロイター(ドイツ)だ。ノイロイターは、1位2回、2位4回。クラニスカ・ゴーラで途中棄権に終わった他は、すべて1桁入賞。普通ならば、種目別のタイトルをとってもおかしくないほどの好成績を残している。かつてはしばしば顔をのぞかせていた、ここぞというときの勝負弱さもすっかり影をひそめ、つねに優勝争いにからむ安定感を身につけた。ヒルシャーとは、ライバル関係にあると同時にプライベートでは仲の良い親友でもある。昨シーズン、話題となったこの親友対決が、今季もワールドカップのスラロームシーンを盛り上げるはずだ。

さらに忘れてはならないのは、フランスの新鋭アレクシー・パントュロー。まだ22歳の新鋭だが、すでにフランチームのエースの座に着いた実力者。昨シーズンは地元ヴァル・ディゼールのスラローム第2戦で、第2シード17番スタートから優勝という鮮烈な勝利を上げている。安定感という点ではヒルシャーやノイロイターに一歩譲るものの、つぼにはまったときの速さはけっして引けをとらない。どちらかといえばジャイアント・スラロームでの成績が先行していたが、昨シーズンのスラロームでの成長は、そろそろタイトル争いに加わってくる予感を抱かせる。
今季注目すべき選手の筆頭と言えるだろう。

日本選手のなかでは、湯浅直樹がWCSL(ワールドカップスタートリスト)19位。第1シードまであとわずかという位置にいる。昨シーズン、マドンナ・ディ・カンピリオで行なわれたスラローム第3戦で、自身初の3位表彰台。マルセル・ヒルシャー、フェリックス・ノイロイターの2強に迫る素晴らしい滑りを見せた。さらに最終戦では、2本目、2位に1秒03もの大差をつけるブッチギリのベストタイムをマーク。これらの事実を考えれば、現在の湯浅は、もう、いつ優勝してもおかしくない位置にいるといってよいだろう。

問題は昨シーズンの彼をひどく悩ませた腰痛。シーズン終了後にドイツの名医にかかり、症状は大幅に改善したようだが、それでも多少の不安は残るようだ。今季の彼が掲げるワールドカップ優勝とオリンピックのメダル獲得という大きなふたつの目標に到達するかどうかは、かなりの部分、この腰の状態にかかってくるだろう。

〔写真左〕アレクシー・パントュロー〔写真右〕湯浅直樹(クリックで拡大)

佐々木明は2年ぶりにナショナルチームに復帰した。昨シーズンはチームから外れ、自費でワールドカップを転戦。そのなかで着実に結果を残してランキングを上げた。現時点ではWCSL44位でFISポイントランキングでは35位(7.00)。これを昨シーズンの開幕戦に当てはめてみるとスタート順は36番あたりになる。40番台の後半で滑っていた昨シーズンに比べれば、かなり良い条件でスタートできるだけに、見通しは明るい。滑りの調子自体も上向いており、ここ数年では最高の状態でシーズンを迎える。セカンドベストをマークした昨年のシュラドミング世界選手権で見せたように、ここ一発の速さは健在。今季の佐々木明には相当期待してよさそうである。

さらに、注目すべきなのは、皆川賢太郎だ。バンクーバー五輪の後、2010/11シーズンを休養にあて、その後の2年間は国内とアジアを舞台に戦ってきたかつてのエースが、久々にワールドカップに戻ってくるからだ。
皆川は昨シーズンのファーイーストカップのスラローム種目別チャンピオンとなり、ワールドカップの出場権を獲得。今季はプライベートながら、世界の舞台に復帰することを表明している。彼が最後に出場したのは、2010年1月31日のクラニスカ・ゴーラ。もし、今季開幕戦、レヴィのスタート台に立てば、実に1386日、3年9カ月と17日ぶりのワールドカップとなる。WCSLのランキングなし、FISポイントランキング81位(11.17)からの再スタートという厳しい状況だが、そんななかで彼がどのような滑り、どのような戦いを見せるのか、今季のワールドカップにはまたひとつ大きな楽しみが増えたと言ってよいだろう。

〔写真左〕佐々木明〔写真右〕皆川賢太郎(クリックで拡大)

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田草川 嘉雄
白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
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