なぜ本田圭佑はビッグマウスと呼ばれるのを覚悟で、途方もない目標を口にするのか?そのヒントが、中学を卒業する直前のエピソードに隠されていた。

当時、本田はガンバ大阪・ジュニアユースに所属していたが、ユースには昇格できず、石川県の星稜高校に進学することが決まっていた。のちに本人に聞いたところによれば、もしユースに合格していても、それは断るつもりだったそうだが(高校サッカーの方が全国的に注目され、プロへの道が確立されているから)、少なからず挫折感を味わったことは間違いない。

ガンバ・ジュニアユースの同学年には、家長昭博(現マジョルカ)という絶対的な存在がいた。偶然にも本田と家長は誕生日が同じで、2人とも左利き。運命のライバルだ。だが、当時より高く評価されたのは家長の方で、すでに彼は中学生のときからユースの練習に参加していた。当然、家長はユースへの正式昇格が内定。誰もが将来、Jリーグで成功するのは家長と思っていたに違いない。

諦めの悪い、もうひとりのレフティーを除いては――。

ジュニアユースの卒業が迫ったある日、本田や家長らはみんなで食事に行くことになった。ささやかなお別れパーティーだ。この学年には、他にものちに日本代表GKに選ばれる東口順昭(アルビレックス新潟)など、才能を秘めたタレントがそろっていた。

その食事会の最中、本田が驚くべき行動を起こす。突然ひとりで立ち上がり、「今から俺が言うことを録音してくれ」と呼びかけたのだ。

録音の準備ができると、本田はこう宣言した。
「俺は高校で家長を抜くからな。そして日本代表に入る」

東口はその場に居合わせた貴重な証人のひとりだ。本田の規格外の行動を、生々しい映像として記憶していた。
「みんなは『何言ってんのや』って感じだったんですけど、あいつはそれを本当に実現させた。正直、ガンバ・ジュニアユース時代の圭佑のプレーはほとんど覚えてないんです。アキがずば抜けてましたから。でも、性格は今と少しも変わってない。ブレてないですよね、あいつ」(『ジャイアントキリングextra vol.14』<講談社>より)

そう言えば、2010年W杯後、本田はこんなことを言っていた。
「言葉を口で発するときは、自分に向かって話している部分がある。何を言うかって非常に重要。俺はメディアにしゃべっていることって、自分に話しているということがほとんどやから。あとは公言的なところがあって、『言っちゃったよ』みたいな。自分は弱いからさ。当たり前だけど、人間やから」

世間から見ればビッグマウスだが、本田本人にとっては、自分が定めた途方もない目標を忘れないための確認作業なのだ。自分自身が本気で信じるために、あえてまわりに記憶させ、ときに録音させて、ことあるたびにそれが自分の耳に返ってくる環境を作り出す。

今でも“宣言”は常に発せられている。
近い将来、ヨーロッパのビッグクラブに移籍する。どんなに強いチームと当たっても、自分のスタイルは崩さない。そして2014年夏、ブラジルの地で頂点に立つ――。

本田とCSKAの契約は今年12月で終了する。移籍先は夏に交渉を重ねたACミランが有力だが、移籍金がかからないだけに他のビッグクラブも獲得に乗り出すだろう。
新天地が決まったとき、どんな宣言が飛び出すのか。また新たな“伝説”が生まれるに違いない。

photo

木崎 伸也
木崎伸也1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。

お知らせ

10月5日(土)、6日(日)はスカパー!にてJ SPORTS 1、J SPORTS 2、J SPORTS 3 が無料!!(一部無料ではご視聴頂けない番組もございます)
■13/14 ロシア プレミアリーグ 放送予定■
10月06日(日)午後6:24 J SPORTS 2  生放送 無料放送 第12節 CSKAモスクワ vs. ディナモ・モスクワ
10月22日(火)午前10:00 J SPORTS 2  初回放送 第13節 ゼニト vs. CSKAモスクワ
10月28日(月)深夜 1:30 J SPORTS 2 初回放送 ゲツサカ! 第14節 CSKAモスクワ vs. クラスノダル

◆J SPORTSロシア プレミアリーグ詳しい放送予定はこちらから

 

◆ロシア プレミアリーグ特集ページをご覧ください!

◆J SPORTSサッカーのFacebookページ

スカパー!×J SPORTS J SPORTS オンラインショップ