天才だが取扱いには要注意?さすらいのFWニコラ・アネルカ

スーパースターになるためには才能が必要です。プロフェッショナルなエリート軍団の中でも他を圧倒するようなテクニック、陸上選手顔負けのスピード、格闘家のようなフィジカル。そういった何か光る抜群の才能がなければ、トップ・オブ・トップにはなれません。

ニコラ・アネルカはFWに求められるほぼ全ての能力で非常に秀でたものを持っていました。屈強なDFにもまったく当たり負けしない恵まれた体格、重量級であることを感じさせない抜群のスピード、そして非凡なテクニック。アネルカは足元だけではなく、空中戦でも強さを発揮し、ストライカーとしてはおよそ穴のないパーフェクトに近い能力を秘めていました。

ティエリ・アンリ、ウィリアム・ガラスなど数多くのフランス代表選手を輩出したエリート育成組織、クレールフォンテーヌ国立研究所が生み出した最高傑作とも言われ、学長だったクロード・デュソー氏もアンリよりポテンシャルが高かったと認めるほどでした。目利きのアーセン・ベンゲル監督がわずか17歳の無名選手に1億2万円のお金を積んでアーセナルに引き入れたことからも溢れ出る才能の凄さが伺えます。

ただ、誰もが羨むような素質に恵まれていたとしても、名声を手に入れられるとは限りません。アネルカは素質には恵まれていましたが、コミュニケーション能力が高くありませんでした。

そんなアネルカが起こした最大の事件と言えば、やはり2010年ワールドカップでの追放劇でしょう。当時のレイモン・ドメニク監督とはずっと折り合いが悪い中でも我慢してプレーしていたアネルカですが、グループリーグ第2戦のメキシコ戦、ハーフタイムに監督から小言をもらった瞬間にブチ切れてしまいました。

上司に向かってあろうことか、「カマでも掘られやがれ!薄汚ねえ売春婦の息子が!」と罵詈雑言を浴びせてしまったのです。このスキャンダルはすぐに世界中に広まり大騒動になりましたが、アネルカは謝罪を拒否。大会中に追放されると、この事件がきっかけでフランス代表のチームメートが監督に反旗を翻して練習をボイコットする泥沼劇も巻き起こり、フランスはワールドカップという大舞台で世界中に恥を晒す事態になりました。

能力自体に疑いの余地はありません。アーセナルではゴールを量産してタイトル獲得の立役者になるほどの活躍を見せましたし、アーセナル移籍からわずか2年後にはレアル・マドリードが53億円もの大金を出して獲得したほどです。あの「フェノメノ」ロナウドを超える逸材と評価する声も少なくなかったのです。

でも人間関係の構築があまりうまくないアネルカは、自分を暖かく受け入れてくれるチームでは活躍できるのですが、レアルなどそうでないチームでは孤立しがちでした。親友のアンリが陽気でおしゃべりな性格でどこでもうまく溶け込めるのに対し、アネルカは内向的で無口なタイプ。また、フランス流のエスプリを利かせるつもりで話したジョークが歪曲して受け止められることもありました。その性格が災いして、人間関係のもつれから本来の力を発揮できないことが何度もありました。

現在、アネルカは上海でプレーしています。ここでは試合中の乱闘を仲裁したり、選手兼コーチを務めるなど、これまでとは違った一面も見せています。最近では上海退団も報じられており、このさすらいの天才ストライカーがどこに向かうのか注目です。

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ピーター上杉
東京都出身。おちゃらけた原稿もシリアスな原稿もなんでもござれのフリーライター。最近ではスポーツ以外にも手を広げ、幅広く活動中。

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