各国で代表戦が開催された今週のミッドウィーク、日本ではオマーン戦の話題で持ち切りだったが、英国ではスウェーデンvs.イングランドの親善試合でズラタン・イブラヒモビッチが決めた鮮やかなオーバーヘッドがメディアを席巻した。ホームのスウェーデンが4-2でイングランドを下したこのゲーム、試合前のイングランドでは、キャプテンのジェラードが代表100キャプを達成する記念すべきゲームという感じの位置付けがされていたが、終わってみれば完全にズラタンが話題を総取りするゲームとなったのである。

いや、それにしても4点目のオーバーヘッドは見事としか言いようがない。ハートのミスにも見えるが、やはりあれを決めたズラタンがファンタスティックだったのであって、ハートを責めるのは無粋というものである。ズラタンにはアクロバティックなゴールがよく似合う。

こういうスーパーゴールが生まれると、歴代のスーパーゴールと比較されるのが世の常だが、ズラタンのゴールも御多分に洩れずそういった議論の呼び水となった。記事としては安直な気がしないでもないが、個人的にはそういう特集記事は嫌いではない。最近だと、記事に動画が埋め込まれているので、こういう特集を組んでもらえると手軽に過去のスーパーゴール集を楽しむことができる。夕食後、スコッチなんぞを片手にマウスを操っていると、夜はあっという間に更けていく。

実際、ズラタンのスーパーゴールに便乗する形で紹介された「過去の名場面集」的特集記事は、嗜好性とボリューム感のバランスが丁度良い塩梅で、酒の肴としては最高クラスといってもよいくらいだったので、しばしコンピューターの前から動けなくなってしまった。ベストゴールの選出にそれなりの基準が設けられていて、なおかつ見応えがあったのが、インディペンデント電子版の「イングランドが奪われた最も偉大なゴール集」というのと、テレグラフ電子版の「ズラタンのゴールは歴代最高のボレーシュートか?」という記事である。

どちらも、読んで字の如し、という感じのタイトルである。インディペンデントの記事では、当然マラドーナの「五人抜き」ゴールが真っ先に取り上げられているのだが、ゴールを奪われた方までもが、何やら誇らし気なのが微笑ましい。こちらでは、2002年の日韓W杯でロナウジーニョがシーマンを欺いてネットを揺らしたフリーキックを見ることもできる。いやあ、懐かしい。あの日のエコパは暑かったなあ、と、思わず遠くを見てしまう。

テレグラフの方は、完全にボレーシュートに限定されており、ユーロ88のソ連戦でファンバステンが決めたボレー、バルサ時代のリバウドがバレンシア戦で決めたオーバーヘッド、言わずと知れたジダンのボレー、一昨シーズンのダービーでルーニーが決めたオーバーヘッドなんかが見られるようになっていて、投票までできるようになっている。ぼくが見た時点では、意外なことに今回のズラタンのゴールが得票率五割以上で、2位に大差をつけていた。リアルタイムのインパクトが、思い出の中で美化されたゴールを上書きしたのであろうか。

いかにもタブロイドという感じで面白かったのが、ザ・サンの「ダニーよ、そのシャツは取っておきな 3万ポンドの価値があるぞ!」という記事。なんでも、試合後、ウェルベックがズラタンとのユニフォーム交換に成功したようで、専門家に言わせると、このスーパーゴールという付加価値の付いたズラタンのユニフォームをオークションに出せば3万ポンド(約390万円)くらいにはなるだろうとのことである。

今シーズンは、所属するマンチェスター・ユナイテッドで今ひとつ出場機会に恵まれていないウェルベックだが、ひとたび試合に出れば、このように抜け目ない嗅覚を発揮するようだ。一方、ズラタンのチームメイトで、ウェストブロムに所属するオルソンは、ズラタンからスパイクを譲り受けたそうで、これを早産児関連のチャリティーとしてオークションに出品するとの由。オルソン、見た目はおっかないけれど、なかなかにナイスな男である。それにしても、これだと主人公であるべきズラタンが身包み剥がれているようで、なんだか気の毒になってくる。ソックスなんかも、誰かがもらっていたりするのだろうか。

ちなみに、この記事では26年前にウェルベックなど足下にも及ばない嗅覚を発揮し、お宝シャツをゲットした男を紹介している。元イングランド代表のスティーブ・ホッジがその人である。なんと、この人、マラドーナが「五人抜き」ゴールを決めた試合で着用していたユニフォームである「五人抜きシャツ」を所有しているのだそうだ(記事では「神の手」の方をフォーカスしているので、別名「神の手シャツ」とも呼べる)。

これまで、あの伝説となった試合でマラドーナが着ていたユニフォームの行方など、想像したこともなかったが、考えてみれば、対戦相手だったイングランド代表の誰かがあの試合の後にユニフォーム交換をして、今でもそれを所有しているのが、話の流れとしては一番自然である。あの試合に出場したホッジさんが語るところによると、ごく自然にユニフォーム交換を要求したところ、マラドーナは普通に応じてくれたそうである。

このエピソードで興味深いのは、ホッジさんが「神の手」ゴールにつながるクリアミスをした張本人だったところだ。「神の手」ゴールを誘発した人間が、「神の手シャツ」(あるいは「五人抜きシャツ」)を持っているなんて、話としては出来過ぎな気がするけれど、要は、我々フットボールファンはそういう世界で、人によって程度の差はあれ、この偉大なるゲームに掛け値無しの情熱を割いて、暮らしているのである。なお、くだんのユニフォームは現在、マンチェスターにあるナショナル・フットボール・ミュージアムに展示されているようです。北部イングランドへ旅行される際は、お立ち寄りになってみては如何でしょうか。

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平床 大輔
1976年生まれ。東京都出身。雑文家。1990年代の多くを「サッカー不毛の地」アメリカで過ごすも、1994年のアメリカW杯でサッカーと邂逅。以降、徹頭徹尾、視聴者・観戦者の立場を貫いてきたが、2008年ペン(キーボード)をとる。現在はJ SPORTSにプレミアリーグ関連のコラムを寄稿。

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