テッド・リガティの記録的大差での圧勝に終わったGS開幕戦から2週間。今週末はいよいよワールドカップスラロームが開幕する。北極線(Arctic Circle:北緯66度33分)より北を北極圏と呼ぶが、レヴィは北緯67度に位置するフィンランド有数のスキーリゾート。現在のワールドカップの中ではは北限のレース会場である。

しかし、これだけ北に位置しながらレヴィの泣き所は雪不足。スタート地点が海抜428mと、比較的標高が低いせいもあるのだが、昨シーズンは11月になってもまったく冷え込まず、やむなく中止に追い込まれている。2007/08シーズンにも同様に中止となっており、たまりかねたレヴィは人工降雪の設備を増強して、今回のワールドカップに備えてきた。幸いにもこの冬は早い時期から順調に冷え込んだ。おそらくこれまでにない良いコンディションでレースが行なわれるだろう。11月10日(土)に女子スラロームが、11日(日)に男子スラロームが予定されている。2年ぶりに北限の地に戻ってきたワールドカップ・スラローム。はたしてどんな展開で今季の幕が切って降ろされるのだろうか。

昨シーズンのスラローム・チャンピオン、アンドレ・ミューラー(スウェーデン)は、セルデンのGS開幕戦終了後、いち早くスウェーデンに戻り、地元でトレーニングを積んできた。直前までいたのは、Kabdalisという小さなスキー場。写真で見る限りレヴィと地形的に似ており、おそらく雪質も近いのだろう。よい準備を整えて得意種目の開幕戦に臨む。

これに対して、総合チャンピオン、マルセル・ヒルシャーはライターアルム(世界選手権が行なわれるシュラドミングに隣接するスキー場)などでスラロームの集中トレーニングを積み、レース3日前の木曜日に現地入りするようだ。今季の彼は、彼自身がデザインし開発にも深く関わったというたというマルセル・ヒルシャー・アイコン・シリーズを発表。スラロームは「Marcel Hirscher Redster SL」で戦うという。おそらく今回のレースで公式の場に初お披露目することになるだろうが、自ら開発したこのスペシャルモデルにも注目が集まることだろう。

日本チームからは湯浅直樹(スポーツアルペンスキークラブ)と石井智也(サンミリオンスキークラブ)が出場予定。エース湯浅にとっては、この冬初めてのレースとなる。現在のWCSL(ワールドカップ・スタートリスト)では20位。第1シード入りも近いだけに上位入賞で大量得点を狙いたいところだ。ただ、これまでの彼はレヴィでは1度も2本目に進んだことがなく、得意なコースとは言いがたい。後半に長い急斜面があり地形的にはけっして苦手なタイプではないのだが、結果的には毎回1本目でレースを終えているのだ。シーズン初めになかなか調子が上がらないというのは、彼に限らずここ数年の日本チームに共通する弱点。今季からヘッドコーチに就任した岩谷高峰コーチもこの点には留意していただけに、はたしてどの程度仕上がっているか、注目したいポイントだ。

長い間、日本の両輪としてチームを牽引してきた佐々木明と皆川賢太郎は、今季はナショナルチームを外れ、プライベートで戦うことになる。ただし、これまでの実績を考慮してワールドカップ出場への道は残されており、現在1名分ある国枠を、石井や大越龍之介らナショナルチームの選手たちと争うことになる。チームとの取り決めで、主にヨーロッパカップのレースを選考レースとし、そこでもっとも良い成績だった選手が次のワールドカップスラロームで国枠を使えるということのようだ。今回は、ワールドカップ前にヨーロッパカップがなかったので、ナショナルチームメンバーの石井が出場するが、第2戦ヴァル・ディゼールからはこのシステムによって出場選手が決定する。11月20、21日に同じレヴィで行なわれるヨーロッパカップが第1回の選考レースとなるが、佐々木はこのレースを見越してすでにレヴィに入ってトレーニングを開始。今週末のワールドカップは、コースサイドからレースを見ることになるだろうが、はたして第2戦への出場権を手に入れるのは誰なのか。このもうひとつの戦いにも注目していきたい。

[写真左]北緯67度の北極圏に位置するレヴィ。よく晴れた日は、まだ朝焼けが残るうちに1本目が始まり、2本目は夕焼けのなかで行なわれる。
[写真右]前半はうねりの多い中・緩斜面。後半は長い急斜面。変化に富んだむずかしいコースが第1戦の舞台となる。

[写真左]昨シーズンのスラローム種目別チャンピオンのアンドレ・ミューラー(スウェーデン)。万全の準備を積んで開幕戦を迎える
[写真右]10月半ば、SLトレーニング中に右膝を負傷したイヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)だが幸いにも軽傷。現在ではほとんど痛みもないという。

[写真]レヴィでの過去4戦、すべて1本目でレースを終えている湯浅直樹(スポーツアルペンスキークラブ)。今季は開幕から全開で飛ばしてほしいところだが、腰の状態があまり良くないというのは気がかりだ

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田草川 嘉雄
白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
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お知らせ

◆男子アルペン スラローム全9戦を含む注目レース20戦以上を生中継(予定)
アルペンスキー FIS ワールドカップ 12/13 男子 スラローム レヴィ/フィンランド
11月11日(日)17:45 - 22:30 J SPORTS 1 生中継

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