[写真]雨が降り続くなか、本拠地オールドトラフォードで
香川は自信と課題を得た

香川真司がホーム開幕戦で初ゴールを決めたというのに、日本人記者たちはひどく落胆していた。25日、マンチェスター・ユナイテッドがホームでフルアムに3−2で勝った試合後のことだ。クラブ側から、「香川のインタビュー取材はOK」の許可は出たが、控え室からピッチへつながる「トンネル」と呼ばれる場所にある、取材エリアに入るための許可が出なかったからだ。交渉したが、それとこれは別なのだという。

日本メディアからは10人以上のペン記者が来ていたが、誰もその取材エリアに入る許可を持っていなかったので、代表取材というわけにもいかない。万策尽きてプレスルームで落胆していたとき、テレビの記者が「香川くんが取材に応じたいと言ってる」と駆け込んで来てくれたのだ。聞けば、テレビ用の取材後、香川のほうから「他の記者の方は?」と切り出し、この窮状を察してくれたようだという。さすが視野が広い。急遽、取材エリア外まで出てきてくれ、トンネルの出入り口付近で、囲み取材、となったのだ。このグレーゾーンでの取材活動には、クラブ側も黙認。香川自身の協力により、何とか肉声がとれた。

−ありがとう。ナイスゴール。
「ありがとうございます。」
−ゴールは来たな、という感じだった?
「オフサイドかなと思いましたけど、うまくタイミングがあってよかった。どんな形でも早くゴールを決めたかったので。ホームの開幕戦で決められてホッとしました。」

雨が降り続くなか、1−1の同点で迎えた前半35分だった。ファンペルシーの右CK を相手DFがクリアし、それを拾ったMFクレヴァリーが地を這うような強烈なシュー トを放つ。フルアムのGKシュウォーツァーが倒れ込んでいったんは止めたが、ポロリとこぼしたのだ。その好機を2戦連続、トップ下のMFとして先発していた香川は、見逃さなかった。落ち着いて右足でゴールへ蹴り込み、プレミア初ゴールを決めた。

満面の笑みでガッツポーズを決める香川。7万5352人の大観衆のほとんどが大きな歓声と拍手を鳴らし、チームメートは次々と駆け寄って祝福した。結局、香川は後半23分までプレーしてFWルーニーと途中交代。ユナイテッドはこのホーム開幕戦でフルアムを3−2で下し、今季初勝利をあげた。

−第1戦よりも積極的にシュートを狙っていた?
「アンデルソンがあまり引いてくるな、と話していた。前にポジションをとってボールを引き出そうと思っていた。ただ、まだまだシュートとか精度が悪かった部分もあった。ミスを減らしていきいたい。やっぱりフィジカル的にはブンデスより、かなり高いのかなと感じた。フルアムにもいい選手が多かった。そういう意味でいい経験になったと思います。」
−1本目のミドルシュートはコントロールして打った?
「巻いて蹴ろうかと思ったけど、(力が)入りすぎちゃいました。」

香川が最も悔やんだのは、初ゴールを決めた2分後、ポストを叩いたシュートだった。
−ポストに当たったシュートもあった。
「ああいうのは決めないといけないです。最後までイメージ通りだったので…」
−初得点は大事なひとつの節目になる?
「いい結果を残せたのはよかったけど、喜んでいる暇はない。本当に次戦でも結果を残さないといけない。次は自分の形でゴール取りたい。今日ポストに当たったようなシュートを決められたら、さらにインパクトを残せると思う。」

さらに香川は課題に挙げたのは、縦パスだ。香川がゴール前に入ったとき、チームメートからなかなか縦パスが入って来ない。香川はもっと狭くて込み合った場所で勝負したいが、まだ味方がパスを差し込んでくれないのだ。

−ゴール前でパスが欲しいときに出て来ない?
「あそこでもっとパスを受けたい。(フルアムは)4人でディフェンスラインを作って結構がっちりだったので、なかなかスペースがなかった。そこでは縦パスがまだもらえない。横に展開してサイドから勝負というのが多い。早く中央で受けられるようにしていきたい。要求しながら辛抱強くやっていきたいです」

ロスタイムにルーニーが相手選手に踏まれ、右ひざ内側を負傷。ファーガソン監督は「ひどい裂傷だ。4週間はダメだと思う」と明かした。これを受けて香川について「ファンペルシーとの関係はもっとよくなるだろう」と期待を込めた。とくに9月はリーグ、代表、欧州チャンピオンズリーグ、リーグカップと連戦が続く。ルーニー不在で迎えるこの過密日程をファーガソン監督は、ファンペルシーと香川の2人を主軸に据え、乗り切ろうという腹なのだろう。

香川は、わずか開幕2戦でユナイテッドでのレギュラーポジションを確固たるものにした。存在感は増す一方だが、同時にプレッシャーと責任も負う。連戦の疲れも出てくるはずだ。香川がこの試練の9月をどう乗り切っていくか、注目したい。

photo

原田 公樹
1966(昭和41)年8月27日横須賀生まれ、呉育ち。国学院大学文学部中退。週刊誌記者を経てフリーのスポーツライターとして独立し、99年に英国へ移住。ウェンブリースタジアムを望む、北ロンドンの12階のアパートメントに住んでいる。東京中日スポーツやサッカーマガジンに寄稿し、ロンドン・ジャパニーズの不動の左サイドバックでもある。 »Twitterアカウント »メールを送る

スカパー!×J SPORTS J SPORTS オンラインショップ