札幌でベネズエラ戦を見た後、バスとフェリーを乗り継いで仙台に入った。U-20女子ワールドカップの開幕戦(宮城スタジアム)を観戦するためだ。このカテゴリーの女子の試合を見るのは、これが初めての経験である。

いやあ、これが面白かった……。開幕戦で日本代表チーム(ヤングなでしこ)はメキシコに4-1と快勝した。かつて、オリンピックやワールドカップ予選で日本とメキシコの女子代表が戦った試合を何度か見たことがある。アウェーの「高地の洗礼」という経験も含めて、両者はつねに互角の強敵だった。

一方の男子では、つい先日のオリンピック準決勝で対戦して日本はメキシコに敗れている(メキシコは決勝でブラジルを破って優勝)。男子の場合も、メキシコは「日本が目指すべきスタイル」とも言われており、勝ったり負けたりの戦績だが、やはりワールドカップの常連メキシコに1日の長があるというのが現状だろう。

そのメキシコ相手に、日本の若い女子選手たちが先制攻撃をしかけた。メキシコのクエジャール監督が言う。「日本が先に仕掛けてきたので、すっかり後手に回る場面が多くなってしまった」。ちなみに、監督のレオナルド・クエジャールは1978年のアルゼンチン・ワールドカップに出場した時のメキシコ代表。アフロヘアーが印象的な、ダイナミックなMFだった。当時は、日本はワールドカップなど「夢のまた夢」の時代。その人物が、日本のサッカーを賞賛してくれている。

地元開催のワールドカップでの重要な開幕戦で、4-1の快勝という結果自体もそれは素晴らしいことではあるが、より衝撃的なのは、日本代表が見ていて面白い試合で、アグレッシブに、ほぼ90分間仕掛けに仕掛けて勝ちをもぎ取ったことだろう。とにかく、ボールを持ったら、何かを仕掛けてくれる。

サイドの選手(先発で言えば田中美南、仲田歩夢)はドリブルで仕掛け、その間にサイドバック(浜田遙、中村ゆしか)が追い越してオーバーラップ。中盤(藤田のぞみ、猶本光、柴田華絵)ではひとつフェイントを入れて、突っかけてくる相手をかわして速いテンポでパスをつないで突破していく。そして、CB(高木ひかり、土光真代)やMFからトップの道上彩花)にくさびのパスが入る。そのくさびのパスを、道上はしっかり足元で収めて反転して、ドリブルで切れ込んでいく。

結局、90分を通じて日本のボール支配率は65%。中盤でただパスをまわしているだけなら、これまでにもいくらでも前例はあるが、とにかく持っているボールを積極的に相手ゴール前に運ぼうという意思が見える。しかも、若いチームでありながら、一本調子になることなく、パスをつないだり、アバウトなボールを放り込んでみたり、ドリブルで突っかけたりと、バリエーションも豊富だった。

得点のパターン自体もそんな攻撃の多彩さを物語っている。32分の先制ゴールは、右サイドで田中美がゴール前の道上にグラウンダーのくさびを入れたことで生まれたもの。跳ね返ってきたボールが田中、柴田と渡って、柴田がドリブルを入れて打ったシュートがゴールに吸い込まれた。56分は猶本のミドルシュート。スローインを後半から入った田中陽子が猶本にパス。それを猶本が思い切ってシュートを決めたのだ。

77分の3点目は、左から道上がドリブルで切れ込んで(体の大きな道上だが、ドリブルもうまい)入れたクロスをDFが跳ね返し、そのボールを横山久美が右上隅に狙いすましたシュートを決めた)。そして88分、右サイドで途中からSBに回っていた高木と田中美がパス交換し、最後は田中美がドリブルをしかけてPKをゲットして、田中陽が決めて4点目。

すべて、日本がパスやドリブルで積極的に仕掛けたことによって、メキシコがそれをなんとか撥ね返し、日本がボールを拾って決めるというパターンだった。メキシコもしっかり守っていたのだ。日本が積極的に仕掛けていかなければ、何も生まれなかったことだろう。

ワントップの道上は、大きな体格を持ち、足元の技術も高く、理想的なポストプレーでボールを落として味方を使っていた。ザッケローニ監督が見たらほしがりそうなポストプレーヤーだった。ただ「高校総体で疲れている」(吉田弘監督)せいもあって、最終的に自らシュートを狙うようなプレーが少なかった。道上がさらにフィットしてくれば、日本の攻撃力はさらにアップするだろう。

どんなカテゴリーの大会にしても、日本チームが世界大会で勝ち上がること自体は、今ではそれほど珍しいことではなくなっている。先日のオリンピックで男子も女子もベスト4に進出したばかりである。だが、少なくとも男子の場合は、南アフリカでのベスト16にしても、ロンドン・オリンピックのベスト4にしても、「規律高く、しっかり守ってカウンター」というリアクションサッカーの成功だった。

だが、宮城スタジアムで見たU-20女子代表(ヤングなでしこ)の試合は、日本が90分間仕掛け続けての快勝だった。「90分間のエンターテインメント」と呼んでもいいくらいだ。もちろん、90分間攻め続けるだけではなく、ある時間はゲームをコントロールして勝点3を確保するといった戦い方もできた方がいい(少なくとも無失点には抑えたかった)。

だが、これから覚えていけばいいことだ。フル代表に入れば、経験豊富なお姉さんたちが、ゲームのコントロールの仕方を教えてくれることだろう。今後の5試合も、メキシコ戦と同じように、アグレッシブで優雅なエンターテインメントを見せ続けてほしい。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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