第83回MLBオールスターはナショナル・リーグの圧勝で幕を閉じました。
これでナ・リーグは3連勝。それ以前はアメリカン・リーグが1引き分けを挟んで12連勝でしたが、流れが変わりつつあるようです。さらにその前に遡ると、1963年から82年までナ・リーグが19勝1敗と圧倒した時期もあります。よくよく球宴の神様は、極端な結果を好むようです。日本のファンとしては、ダルビッシュ有の登板が無かったのは残念でしたが、昨季のア・リーグMVPのジャスティン・バーランダーのめったに見られない1イニング5失点もあり、それなりに楽しめたのではないでしょうか。

さて今回は、試合ではなく前日に行われたホールラン・ダービーについてクローズアップしてみようと思います。結果はご存知の通り、タイガースのプリンス・フィルダーがブルワーズに在籍していた09年に続く2度目のキングに輝きました(プリンスがキングなんてちょっと面白いですね)。彼は翌10年には「オールスターゲーム」でもMVPを受賞しています。かつて、ワールドシリーズでめっぽう勝負強さを発揮したレジー・ジャクソンは「ミスター・オクトーバー(10月の男)」と呼ばれましたが、プリンスは「ミスター・ミッドサマー(真夏の男)」と呼ぶに相応しい選手かもしれません。

しかしあと何年かすると「2012年球宴のホームランダービー優勝者はフィルダーだった」という事実は、多くのファンは忘れてしまうかもしれませんが「2012年の球宴でヤンキースのロビンソン・カノーが受けたブーイング」は語り草になるのではないでしょうか。

今回のホームランダービーで、昨年のダービーの優勝者にしてア・リーグのダービーチームの主将のカノーは、その一挙手一投足に対しカウフマン・スタジアムを埋めた大観衆から激しいブーイングを受けました。
彼が結局1本もスタンドに放り込めず1回戦で敗退したのは、このブーイングの嵐と必ずしも無縁ではないでしょう。

では、なぜ観客はかくも激しいブーイング野次を飛ばしたのか。
それは主将として他のメンバーの選択権を持つカノーが、地元ロイヤルズからただ一人球宴に選出されたビリー・バトラーをダービーのメンバーに選ばなかったからです(余談ですが、前半戦の本塁打数はプリンスこそ15本ですが、ア・リーグチーム4名の平均は21本で、バトラーは16本。落選は致し方なしとも言えるでしょう)。実は、昨年の球宴でも同じ様なブーイングが起きました。球宴開催地のアリゾナのファンは、地元ダイヤモンドバックスのスラッガー、ジャスティン・アップトンがダービーのメンバーに選ばれなかったことに対し、ナ・リーグ主将の(あの)フィルダーにブーイングを浴びせましたが、今年のそれは一層激しいものでした。

この「ブーイングの嵐」に対し、現地メディアの報道の中には「まあいいじゃないか」的なものも目についたのは意外でした。曰く「ファンは本当に怒っているのではない。”地元応援ごっこ”を楽しんでいるに過ぎない」曰く「ダービーは所詮余興だから」曰く「いっそのこと“地元球団の選手を必ず加える”というルールをつくるべきだ」

これらの主張に対し、筆者も「そう言えなくもないか」と感じますが、ちょっと感心しなかったのが、翌日の「試合」でも多くの観客が、カノーに執拗なブーイングを続けたことです。「地元のヒーローを落選させたカノーにはブーイングを」これはある程度ファン心理として理解できます。しかし、それはホームランダービー限りにすべきでしょう。翌日の試合が始まれば恨みは水に流し、カノーを含む超一流のスター達のプレーに積極的な拍手と歓声を送る、これが正しい球宴の楽しみ方ではないでしょうか。

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豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:shotaro.toyora@facebook.com

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