1月のアジアカップ(カタール)優勝から始まったザックジャパンの2011年は実に慌しかった。今年は東日本大震災発生で3月の強化試合2試合とコパ・アメリカ出場がなくなり、貴重な強化期間がなくなってしまった。ザック監督は6月のキリンカップ2試合(新潟・横浜)と10月のベトナム戦(神戸)を3-4-3の習熟に当てたが、それも中途半端な形で終わってしまった印象だ。コパ・アメリカがあれば、3-4-3ももう少し理解度を深められただろうし、違った戦力をテストする機会も持てた。9月の北朝鮮戦(埼玉)からスタートした2014年ブラジルワールドカップアジア3次予選は頭から3勝1分けで、4戦目にして最終予選進出を早々と決めたが、今の代表が磐石の力を備えているとは言い切れない。

特に私が懸念しているのは、本田圭佑(CSKA)、遠藤保仁(G大阪)、今野泰幸(FC東京)の真ん中の軸を担う主力たちのバックアップが見つかっていないことだ。

本田に関しては、実際に長期離脱を強いられてみて、その絶大な存在感が改めて印象づけられた。9月の北朝鮮戦では柏木陽介(浦和)を起用し、ウズベキスタン戦(タシケント)では長谷部誠(ヴォルフスブルク)を前に上げるという策を講じたが、どちらも失敗。前線にタメが作れず、日本らしいダイナミックでスピーディーな攻めが影を潜めた。

そこで10月と11月のタジキスタン戦(長居・ドゥシャンベ)はベテラン・中村憲剛(川崎)を使ったところ、確実に起点を作り、本田とは違ったパッサータイプのトップ下として新たな可能性を示してくれた。が、本人が「タジキスタン相手ならこのくらいできて当たり前」と話したように、本当の勝負は最終予選から。憲剛は前回最終予選に出場していて計算はできるが、特に中東勢は2008〜09年段階より確実に飛躍しているうえ、彼も31歳と体力的不安が少なからず出てくる頃だ。ケガが長引いている本田が来年6月までにベストパフォーマンスを取り戻してくれれば問題ないが、先のことは分からない。非常時を想定して、本田・憲剛以外のトップ下候補、例えばU-22日本代表の東慶悟(大宮)、山田直輝(浦和)らも視野に入れる必要があるのかもしれない。

一方、遠藤の代役探しもザック監督がずっと取り組んでいる課題だ。今年は家長昭博(マジョルカ)、柏木、細貝萌(アウグスブルク)などをテストしたものの、どの選手も帯に短し襷に長しという印象だった。今クラブでコンスタントにプレーしている細貝が目下のところ最有力候補ではあるものの、長谷部と細貝のコンビだと守備は問題ないが、攻撃のリズムに変化をつけるところまではいきにくい。相手がベトナムのような格下ならいいが、最終予選では厳しい。遠藤も1月で32歳になり、負傷や蓄積疲労が多くなってくる頃。現に今年は右足内転筋を痛めて最大の武器であるFKをほとんど蹴れなかった。今季はG大阪が早い段階でオフに入ったため、十分な休養期間が取れる。ここでしっかり治せば大丈夫だろうが、万が一のことも考えておかないといけない。U-22代表で飛躍的に成長した扇原貴宏(C大阪)や山村和也(流通経済大)あたりをどこかでテストしておくことも大切ではないか。

そして今野のセンターバックも人材が不足している。ザック監督は4バックの場合、今野と吉田麻也(VVVフェンロ)をセンターバックのレギュラーに据えているが、吉田はアジアカップでも何度かあったように目立つミスが時々出てしまう。スピード、対応力、判断力、確実性を考えた場合、どうしても今野は外せないのだ。その今野も高さという大きな課題がある。最終予選になれば、大型FWに当ててくるようなサッカーを展開してくる相手もいるだろう。今野自身もガンバ大阪移籍が有力視されており、新天地でパフォーマンスがどう変化するかも気になる。そんな事態に備えるためにも、180cm台後半のDF発掘を推し進めるべきだろう。

U-22世代の鈴木大輔(新潟)、濱田水輝(浦和)が来年どこまで飛躍できるかは1つの見どころ。今野とともに2003年ワールドユース(UAE)に参加した柏レイソルの守備の要・近藤直也の抜擢もあっていいアイディアだ。場合によっては田中マルクス闘莉王(名古屋)らの代表復帰も考えられる。

センターバック不足は日本全体の問題。すでに育成年代では、180cm台の岩波拓也(神戸ユース)や植田直通(熊本大津高)、195cmの長身を誇るハーフナー・ニッキ(名古屋ユース)らが抜擢され、国際経験を着々と積んでいる。そういう選手を早めに上の代表に加えて、ブラジル大会、ロシア大会を視野に入れながら育てていくというアイディアもありえる。

本田、遠藤、今野というザックジャパンのキーパーソンの後を担う選手が出てくるかどうか。2012年はそこに注目しながら2月24日のアイスランド戦(長居)から始まる代表を見てみたい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。