2011/12シーズンのアルペンスキー・ワールドカップは、10月22日、ゾルデン女子ジャイアント・スラロームを皮切りにスタートした。現在ツアーはヨーロッパを離れ、北米を転戦中。12月第1週は、男子がアメリカ・コロラド州のビーバークリーク、そして女子はカナダ・アルバータ州のレイクルイーズで熱戦が展開される予定だ。

しかし、日本チームのようにスラロームを専門に戦う選手たちにとって、今季のワールドカップはまだ開幕していない。本来ならば、レヴィ(フィンランド)で11月13日に行なわれるはずだった第1戦が雪不足のために中止となってしまったからである。北緯67度8分、北極圏に入ってさらに130キロも北上したところに位置する極北のレヴィだが、天然雪はおろか気温が下がらないために人工降雪機さえ稼動させることができず、大会10日前にレースのキャンセルが決まった。さらに、12月第2週に予定されていたヴァル・ディゼール(フランス)大会も中止。このレースからワールドカップはふたたびヨーロッパに戻ってくるはずだったのだが、暖冬のために、ワールドカップはかつてない大幅なスケジュール変更を余儀なくされたわけである。ラニーニャ現象による厳寒の予想も出ていた今年の冬だが、現時点ではヨーロッパは記録的に暖かく、積雪も充分ではない。今後はたしてスケジュール通りにレースが開催できるのか、かなり危機的な状況と言えるだろう。

それでも時は進み、冬は確実にやってくる。選手たちは難しいコンディショニングを強いられながらも、戦いに備えておかなければならない。しかし、満足に雪があるのは、標高の高いスキー場のみ。各国チームは、条件の良いトレーニング地の確保に苦慮しているようだ。この時期にいかに充実した実戦練習を行なうか、それがシーズン前半の成績に直結するだけに、ことは深刻だ。まして男子のスラロームは、全11レース中8レースが1月までに行なわれるため、開幕時の出遅れは致命傷になりかねないのである。

その点で日本チームは、やや後手に回ってしまった感がある。11月半ばまでオーストリアの氷河でほぼ順調にトレーニングを重ねてきた日本チームは、ワールドカップ開幕に備え、実戦モードの練習とポイント獲得を狙って短期間のアメリカ遠征を行なった。わずか1週間の滞在中に、ノーアムカップのスラローム2連戦に出場するという強行スケジュール。ノーアムカップはワールドカップの1ランク下に位置する大会で、ヨーロッパカップやファーイーストカップ(いわゆるジャパンシリーズはここに含まれる)と並ぶコンチネンタルカップのカテゴリーである。日本選手は、初日のレースで湯浅直樹がトップと1秒49差の12位に入ったのが最高で、大越龍之介29位(+3秒96)、佐々木明30位(+3秒98)と低調な成績に終わった。翌日は、佐々木が3秒23差の21位に順位をあげたものの、大越は30位(+5秒85)、湯浅は1本目で途中棄権。マリオ・マット、マルセル・ヒルシャー(ともにオーストリア)、スティーヴ・ミジリエ(フランス)らワールドカップの第1シード選手が出場するノーアムカップとしてはレベルの高いレースだったとはいえ、開幕を目前に控えてのこの順位は、やはり物足りないと言わざるをえないだろう。

レース後、日本チームはすぐにヨーロッパへとんぼ返り。しかし、ベースとするインスブルック(オーストリア)に戻った彼らを待っていたのは、12月11日にヴァル・ディゼールで予定されていたスラローム第1戦がキャンセルとなり、代替レースをアメリカで12月8日に行なうという知らせだった。会場はビーバークリーク。ノーアムカップが行なわれたラブランドとは、直線距離では100キロも離れていない同じコロラド州のスキー場である。もし、あらかじめこの変更が分かっていれば、現地にとどまってじっくりとトレーニングが出来ただろうし、長時間の移動と時差によるコンディション低下を避けることもできたはず。失ったものはかなり大きいといえそうだ。たとえヴァル・ディゼールのレースが中止となっても、アメリカでの代替開催はないと読んでの移動だったのだが、結果的にはこれが完全に裏目に出てしまった。結局わずか10日ほどの間に、日本チームはインスブルックとコロラドを2往復もしなければならないことになったのである。

日本チームは、12月3日にふたたびアメリカに向かい、中4日で今季最初のワールドカップレースを戦う。この間の肉体的・精神的疲労が、はたして滑りにどのような影響を与えるのか。シーズン開幕からいきなりつまづいてしまった日本チームだが、この暗雲をはねのけることを期待したい。

【写真左】ノーアムカップで2連勝のウィル・ブランデンブルグ(アメリカ)。2レースともワールドカップの第1シード選手をおさえた見事な勝利だった
【写真右】昨シーズンの不振でワールドカップ第2シードから外れてしまった佐々木明(エムシ)。FISポイントのランキングでは81位にまで急降下。今季はスタート順も下がり苦戦が予想されるが、エースの意地を期待したい

【写真左】現在の日本のトップランカーは、湯浅直樹(スポーツアルペンスキークラブ)。開幕時点のWCSLでは26位にランクされている。表彰台を狙うためには、シーズンの早い時期に第1シード入りをはたしたいところだ。
【写真右】膝の故障の影響で足踏みが続いていた大越龍之介(東急リゾートサービス)。今季もヨーロッパカップ中心の戦いとなるだろうが、さらなるステップアップのためには、安定した成績が求められる

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田草川 嘉雄
白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
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